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楽天グループの第1四半期決算は1Qとして過去最高売上、モバイルは増収で収益改善
2025年5月14日 21:48
楽天グループは14日、2025年12月期第1四半期(1月~3月)の連結決算を発表した。売上収益は5627億400万円(前年同期比+9.6%)、IFRS営業損失は、154億4400万円(前年同期332億7200万円)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は-734億7100万円だった。一方、固定資産税を除いたEBITDAは1億200万円の黒字となった。
売上収益は、第1四半期の数字としては過去最高売上となり、楽天カードや楽天銀行のほか、国内ECなどが好調で、楽天モバイルも契約回線数の増加で増収に大きく貢献した。セグメント別に見たNon-GAAP営業利益も、モバイル以外は増益、モバイルも損失が改善した。楽天モバイルのEBITDA通期黒字化など2025年度の収益目標は変更しないとした。
セグメント別
国内ECの売上収益は前年同期比+6.9%の3055億円、Non-GAAP営業利益は同+25.8%の132億円だった。流通総額の増加や楽天トラベルの国内宿泊取扱高の継続的な上昇などが貢献。今後も楽天モバイルとの連携強化やAIの活用など、新体制の元で国内EC流通総額10兆円を目指す。
フィンテックセグメントの売上収益は前年同期比+15.6%の2236億円、Non-GAAP営業利益は+21.7%の439億円となった。楽天カードのショッピング取扱高や楽天銀行の預金残高、楽天証券の口座数や預かり資産など主要なKPIの多くは前年から2桁%成長した。カード決済を足がかりにした送客から、フィンテック各社の顧客基盤を活用した相互送客を推進し経済圏拡大を目指す。
モバイルは大幅に損失改善
モバイルセグメント(楽天モバイルと楽天シンフォニー)の売上収益は前年同期比+10.9%の1107億円、Non-GAAP営業損失は143億円改善し513億円、固定資産税を除くEBITDAは164億円改善し+1億円となった。
楽天モバイル
楽天モバイルでは、固定資産税を除いたEBITDAが四半期で黒字化を達成、引き続き通期での黒字化を目指す。売上収益は前年同期比+40.7%の870億円、Non-GAAP営業損失は175億円収益が改善され50億円だった。
主要なKPIを見ると、全契約回線数が863万回線、調整後のMNO解約率が1.56%、1ユーザーあたりの単価を示すARPUは2827円だった。MNOの売上は前年同期比で+31.9%となった。MNOの純増数は約30万回線、代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏は「春の販売競争による一時的な解約増加が見られたが、全体としては安定した成長を続けている」とコメントし、今後純増ペースの加速を目指すという。
なお、通信品質改善に向けて2025年末までに1万以上の基地局を追加で設置し、カバレッジホールの拡大を目指すという。このほか、国際線の航空機内で通信できる機内ローミングや衛星による通信サービス「AST Space Mobile」(2026年第4四半期でのサービス開始を目指す)によるスマホとの直接通信など、積極的な通信サービスを提供。これらを組み合わせて、ブロードバンドによる面積カバー率100%の通信サービス提供を目指す。
顧客獲得に向けては、先述のネットワーク品質向上と並行し、認知度の拡大を進める。オンラインとオフライン双方でのチャネル強化を進め、ローカライズマーケティングの強化など幅広い層へのリーチを拡大していく。三木谷氏は、都道府県別の契約回線浸透率を取り上げ「東京ではすでに8%の契約がある一方、4%に達していない件もある」と指摘。今後は、実店舗を活用した地域戦略を推進し、全国的に魅力と認知度を向上させていく。
なお、料金プランの改定について三木谷氏は「現段階で大きな値上げをする考えはない」と説明。他社と比較してコストや環境などが違うとし、現行の水準を維持するとした。一方で、ASTなど付加価値サービスについての取り組みは進めていく考えを示している。
AIへの取り組み
楽天グループでは、第1四半期で15以上のAI製品とサービスをリリースしてきた。セマンティックレコメンデーションはフランスと台湾でサービスを開始、広告プラットフォームではキーワード/CPC機能の改善や検索キーワードロジックを導入。
また、Rakuten AI 2.0 LLM/2.0 miniをオープンモデルとして一般に提供を開始した。非常に効率的かつ費用対効果が高く、日本独特の言語的、文化的ニュアンスを捉え、日本の法律や規制に準拠したトレーニングが積まれている。さらに、AIを活用したビジュアル検索「Snap&Ask」機能のオープンベータ版が公開された。写真を撮るだけでショッピングや食事、文化イベントなど新しい情報を発見できるもので、今後正式リリースに向けて取り組みが続けられる。
同社のAIアシスタントについて、チーフAI&データオフィサーのティン・ツァイ氏は「エージェントAIの新たな世界への重要な第1歩」と説明。プライベートとビジネスを含めたユーザーの生活全体を積極的にサポートする大きな可能性を秘めているとしており、スピードと規模をもって革新を続けていくとしている。