石野純也の「スマホとお金」

高額化する「iPhone」の修理代、万が一に備える補償サービスを徹底解説

 円安ドル高の相場を受け、昨年登場時に比べると値上がりしてしまったiPhone 14シリーズですが、実は修理代金も機種によっては高額化しています。特に気を付けたいのが、「iPhone 14 Pro」や「iPhone 14 Pro Max」のディスプレイ。 iPhone 13シリーズまでとデザインを一新していることもあり、修理代は5万円を超えています 。無印の「iPhone 14」は値上がりこそしていませんが、こちらも4万2800円と高額。ミッドレンジのスマホを1台買えてしまうほどの料金です。

 とは言え、バキバキになったままのiPhoneだと、操作性や視認性が落ちてしまうのはもちろんのこと、ガラスが指に刺さるおそれがあります。使い続けるのは、オススメしかねる状態と言えるでしょう。そんな故障時のリスクを軽減するのが、「Apple Care+」。一括または月額料金を払う補償サービスで、上記の画面修理は3700円まで軽減されます。

端末の高機能化に伴い、修理費用も高額化している。転ばぬ先の杖として、補償サービスへの加入は必須と言える状況になりつつある

 アップル製品にはおなじみのApple Care+ですが、 実はiPhoneの場合、キャリアの補償の方が手厚いことも 。月額料金もアップルとは異なるため、場合によってはキャリアの補償サービスに加入した方が、トータルで安く上げられる可能性もあります。ここでは、そんなiPhoneの補償サービスを比較、検討していきます。

お金で買える安心のApple Care+、最新モデルにはほぼ必須化

 Apple Care+は、アップルの提供する補償サービス。月額払いと2年間の一括払い(途中でのキャンセル可)が用意されており、端末の種類によって金額が異なります。また、通常のApple Care+に盗難や紛失の補償をつけた、「Apple Care+ 盗難・紛失プラン」も用意されています。

 料金は、最高額のiPhone 14 ProやiPhone 14 Pro Maxで「Apple Care+ 盗難・紛失プラン」に入った場合、月額料金は1600円です。2年のプランは3万1800円で、1カ月あたりの価格は少し下がりますが、それでも月1325円になります。

Apple Care+ 盗難・紛失プランの料金。2年ぶんをまとめて払った方が、月当たりの料金は安くなる

 仮に2年間、1回も修理に出さなかったとすると、3万1800円が無駄になってしまいます。月払いの場合だと3万8400円かかります。ただし、iPhone 14 Proの画面がひび割れてしまい、“無保険”で修理すると5万800円。これに対し、ちょうど2年目で修理に出したとすると、3万1800円か3万8400円に修理費用の3700円が加わり、差が縮まってきます。あまり損得を考える性質のサービスではありませんが、比較的スマホを壊してしまうことが少ないような人であれば、加入しないという選択肢もあります。

Apple Care+加入時未加入時
1カ月目5300円5万800円
2カ月目6900円5万800円
3カ月目8500円5万800円
4カ月目1万100円5万800円
5カ月目1万1700円5万800円
6カ月目1万3300円5万800円
7カ月目1万4900円5万800円
8カ月目1万500円5万800円
9カ月目1万8100円5万800円
10カ月目1万9700円5万800円
11カ月目2万1300円5万800円
12カ月目2万2900円5万800円
13カ月目2万4500円5万800円
14カ月目2万6100円5万800円
15カ月目2万7700円5万800円
16カ月目2万9300円5万800円
17カ月目3万900円5万800円
18カ月目3万2500円5万800円
19カ月目3万4100円5万800円
20カ月目3万5700円5万800円
21カ月目3万7300円5万800円
22カ月目3万8900円5万800円
23カ月目4万500円5万800円
24カ月目4万2100円5万800円
※Apple Care+ 紛失・盗難プランに加入し、修理に出した場合の金額と未加入のまま修理に出したときの金額の比較。iPhone 14 Proの場合で、加入時の金額は月払いに修理代の3700円を合算したもの。いずれの場合でも、修理に出すとすると、Apple Care+に加入していた方が安くなる。

 とは言え、1回も壊さずに使い切れるかは、はっきり言って運次第。かく言う筆者も、iPhoneではありませんが、スマホは頻繁に壊してしまっています。最近の端末は、高級感を出しつつ、剛性を高めたり、電波感度を高めたりする目的もあって、ガラスが利用されるのが一般的。iPhoneもそうです。強化ガラスを採用し、世代ごとに壊れにくくはなっていますが、さすがにコンクリートや鉄の床に対しては無力。一瞬の油断で、後悔することになりかねません。

 そんなときも、Apple Care+に入っていればショックが和らぎます。非加入時の修理代と比較して検討するというよりも、お金で安心感を買うのに近いのかもしれません。もともとが高額な端末のため、壊れたからといって、簡単に買いなおすわけにもいかないわけで、転ばぬ先の杖として加入しておくことをお勧めします。

 ただし、キャリアでiPhoneを購入している場合、必ずしもApple Care+に加入する必要はありません。キャリアのサービスの方が、何かとメリットが大きいことがあるからです。

キャリアサービスの方がお得なことも、ドコモは要注目

 たとえば、ドコモがiPhone 14シリーズの発売に合わせて提供を開始した 「smartあんしん補償」は、Apple Care+より料金が割安 。iPhone 14は月額825円、iPhone 14 Proや14 Pro Maxは月額990円と、Apple Care+ 盗難・紛失プランの1280円や1600円より安く抑えられます。2年間で比較しても、iPhone 14は1万8975円、Proモデル2機種は2万2770円(31日間の無料期間を加味した場合)と、Apple Care+ 盗難・紛失プランの2万5400円や3万1800円よりお得と言えるでしょう。

ドコモのsmartあんしん補償の月額料金。iPhone 14とiPhone 14 Pro、14 Pro Maxは、いずれもApple Care+ 盗難・紛失プランより割安だ

 安いなりの補償しかないのでは……と思われるかもしれませんが、そうではありません。この金額で、盗難や紛失までカバーしていることに加え、iPhone 14シリーズの場合、激しく故障してしまったときでも1万2100円で代替機のリフレッシュ品に交換してもらえます。Apple Care+にも「iPhoneエクスプレス交換サービス」がありますが、こちらはiPhone 14シリーズの場合1万2900円。若干ですが、ドコモの方が割安です。

水濡れ、全損、紛失、盗難の場合は、リフレッシュ品に交換できる。料金は1万2100円で、アップルのiPhoneエクスプレス交換サービスより若干リーズナブル

 しかもドコモのsmartあんしん補償だと、翌日から2日以内と交換機が届くのもスピーディ。Webからの申し込みで10%の割引も適用されます。修理の場合は上限が5500円で、3700円のApple Care+よりやや割高になるのが弱点かもしれませんが、月額料金の差でひっくり返るような金額。さらに、本連載でも以前紹介したように、smartあんしん補償にはタブレットやPCの修理代金が補償される「イエナカ機器補償」などが特典としてついてきます。お得度で言えば、Apple Care+を大きく上回っていると言えるでしょう。

修理も可能だが、こちらの上限は5500円とApple Care+加入時の修理費より、やや割高だ
パソコンやタブレット、ゲーム機等を補償するイエナカ機器補償が自動で付帯する

 実は筆者も、アップルの実店舗でiPhone 14 Proを購入しましたが、ドコモの機種変更という扱いにしてもらい、このsmartあんしん補償に入りました。Apple Care+とどちらかを選択することができましたが、金額的にも、サービス内容的にも、smartあんしん補償の方が上だったからです。月額プランで600円以上差があるのも、こちらを選択した理由。ドコモユーザーであれば、入っておいて損はありません。

Apple Care+に独自サービスを付加したサービスや、後付け補償も

 独自の補償サービスを展開しているドコモに対し、 他社はアップルのApple Care+を自社サービスとして組み込み、ユーザーに提供しています 。auの「故障紛失サポート with AppleCare Services & iCloud+」や、ソフトバンクの「あんしん保証パック with AppleCare Services」、楽天モバイルの「故障紛失保証 with AppleCare Services」がそれです。Apple Care+と同じように見えがちですが、実はキャリアならではらの差分もあります。

auの補償サービス

 たとえば、au版はサービス名称のとおり、「iCloud+ 50GBストレージ」が付属します。そのぶん、アップル純正のApple Care+よりやや割高ですが、iPhone 14が月額1309円、iPhone 14 Proや14 Pro Maxが月額1663円と、個別にサービスを契約するより割安です。Apple Care+の月払いに29円や63円の追加することで、iCloud+がついてくるというわけです。

auは、iCloud+の50GBストレージが付属。料金は個別に契約するより、やや割安だ

ソフトバンクの補償サービス

 ソフトバンクのサービスはApple Care+と月額料金は同じですが、修理の場合、ユーザーが負担する金額をPayPayポイントで還元しています。PayPayポイントは現金ではありませんが、利用できる実店舗やオンラインストアがかなり多いことを踏まえると、実質無料になると言っても過言ではありません。こうした点で、アップルのApple Care+と差別化を図っているというわけです。

ソフトバンクは、修理費全額相当をPayPayポイントで還元。修理費が、実質無料になる

楽天モバイルの補償サービス

 楽天モバイルはシンプルに、月額料金が割安。iPhone 14 Proや14 Pro Maxが1460円、iPhone 14が1120円と、Apple Care+の月払いより金額が安く設定されています。ただし、年払いだとアップル純正のApple Care+の方が割安になるため、途中で機種変更した際の解約が面倒といった事情がなければ、あえて楽天モバイルの補償サービスに加入する必要はないかもしれません。

楽天モバイルのサービスは、アップルのApple Care+と比較すると月払いの料金が安価。ただし、アップルの年払いの方が、トータルでは料金が安くなる

povo2.0やワイモバイル、LINEMOにも

 4キャリア以外のユーザーにも、選択肢はあります。オンライン専用プランには、持ち込み補償を提供している会社もあるからです。ここまで紹介してきた補償サービスは、いずれも端末購入日に加入するのが原則ですが、持ち込み端末補償に関してはその限りではありません。一例を挙げると、povo2.0の「スマホ故障サポート」や、ワイモバイル(Y!mobile)、LINEMOの「持込端末保証 with AppleCare Services」がそれに当たります。

povoはトッピングとして補償サービスを提供。料金が安く、2回線目として契約しても利用できるのがうれしい。MVNOのユーザーが契約したり、メイン回線の補償サービスから乗り換えたりと、幅広い使い道がありそうだ

 中でもpovo2.0のスマホ故障サポートは、トッピングとして提供されており、料金も830円とApple Care+やキャリアの補償サービスと比べても割安です。しかもpovo2.0の場合、基本料が無料のため、補償サービスのためだけに2回線目として契約することが可能。手厚い補償サービスがないMVNOなどを利用しているときや、うっかり補償サービスに入り忘れてしまったときにもお勧めです。裏技的ではありますが、メイン回線の補償サービスを解約して、povo2.0で料金を節約することも可能。もしもの時に備え、覚えておいて損はないサービスと言えるでしょう。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya