石野純也の「スマホとお金」

ドコモが発表した「smartあんしん補償」、スマホ以外も補償されるその内容とは

 新しいiPhoneの発表まで、あとわずか。大手キャリア各社はこのタイミングに合わせ、新料金プランや端末のアップグレードプログラム、補償サービスといった料金関連の発表をするケースが増えています。フライング気味に、正式な対象端末をボカした形でプレスリリースが出ることも。ドコモが5日に発表した「smartあんしん補償」も、そんなサービスの1つです。

 smartあんしん補償は、従来からドコモが提供していた「ケータイ補償サービス」を引き継ぐ形で提供されるサービス。ケータイ補償としての“核”はほぼそのままですが、付帯する補償に大きな特徴があります。この部分があることで、お得さが増している格好です。サービスは15日以降発売の端末が対象とのこと。未発表のため、外れている可能性もゼロではありませんが、 十中八九、第一弾はiPhoneシリーズになりそうです。

ドコモは、smartあんしん補償サービスを9月5日に発表。対象端末は15日以降発売のものからで、iPhoneの新モデルからスタートする可能性が高い。写真はイメージで、現行モデルのiPhone 13 Pro

一部モデルはケータイ補償サービスより安価に、ドコモユーザーはぜひ加入を

 まずはsmartあんしん補償の中身を見ていきましょう。 料金は購入する端末ごとに異なり、330円、550円、825円、990円の4種類です。 これは、現行のケータイ補償サービスと同じ。ケータイ補償サービスでは、スマホが550円、825円、1100円の3段階に分かれており、それとは別にドコモケータイ用(いわゆるフィーチャーフォン用)の料金として363円が設定されていました。

料金は330円から990円。補償をつける端末によって異なる
こちらは、現行のケータイ補償サービス。363円のドコモケータイや、フラッグシップモデルの多くに適用される1100円コースは、新サービスよりもやや高い

 見比べてみると分かるように、363円が330円、1100円が990円と、最低金額と最高料金が値下げされています。超高機能なフラッグシップモデルと、折りたたみ型のケータイを購入する人にとって、事実上の値下げにつながる可能性があります。対象端末が発表されていないため、どの端末がどのコースに該当するかは不明ですが、おそらく次期iPhoneに関しては825円プランか990円プランのどちらかになるはずです。

 現状のケータイ補償サービスでは、iPhone 13やiPhone 13 miniが825円コース、iPhone 13 ProやiPhone 13 Pro Maxが1100円コースに設定されています。第3世代のiPhone SEは550円。端末の価格が上がることで、区分が見直されてしまうこともありえますが、ケータイ補償サービスを引き継ぐとしたら、無印かProかで金額を分けてくるでしょう。

iPhone 13シリーズでは、無印かProかで金額が異なっていた

  名称は変わりましたが、スマホ自体の補償内容はまったく同じ。 水濡れや紛失、全損した場合、一定の負担額を支払うことで、リフレッシュ品が送られてきます。金額はコースごとにことなりますが、最高額の990円プランの場合で1万2100円。逆に330円プランの場合は5500円です。リフレッシュ品として、傷などが残っている「B品」を選択すると料金は4400円まで下がります。補償回数は年2回までです。

リフレッシュ品に交換する場合の負担額。iPhoneは、1万2100円になると見られる

 筆者も、端末をハードに使うことが多く、現行のケータイ補償サービスには何度かお世話になっていますが、補償が手厚いため、ドコモで端末を購入するなら入っておいて損はないと考えています。東京都23区や大阪府大阪市に届ける場合、「エクスプレス配送」(3300円)が利用でき、手続き完了からわずか4時間で交換機が到着するのも魅力。在庫があれば、店頭交換にも対応しています。

 また、 修理の場合も補償の対象になります。 現行サービスでは、iPhone購入から1年間は無料。保証対象外の故障や、2年目以降でも、修理代は5500円が上限になります。iPhoneに関しては、アップル自身も「Apple Care+」を用意していますが、手厚さではドコモに軍配が上がります。ドコモ端末として購入するのであれば、こちらを選んだ方がいいでしょう。

iPadまで補償されてしまう「イエナカ機器補償」

 とはいえ、これだけだと単に一部端末での料金が下がっただけになってしまいます。 smartあんしん補償の真の魅力は、“端末以外”に補償が拡大するところにあります。 具体的には、「イエナカ機器補償」や「スマホ不正決済補償」「携行品補償mini」の3つです。中でも重要なのが、1つ目のイエナカ機器補償になります。

 「イエナカ=家中」で、こちらは家庭内にあるデジタル機器を補償するサービス。smartあんしん補償の特典として自動付与されるもので、契約者はドコモ、引受幹事保険会社は東京海上日動火災になります。対象となるのは、パソコン、タブレット端末、テレビ、ゲーム機、プリンター、外付けHDD、ルーター、AIスピーカー、ドコモテレビターミナル、ドコモ光ルーター01です。

イエナカ機器補償では、パソコンやタブレットも補償の対象に

 iPhone購入時、特に注目したいのがパソコンやタブレット。アップル製品は、製品間の連携が容易に取れるのが特徴のため、パソコンならMac、タブレットならiPadを併用している人が多いはずです。パソコンは補償限度額が7万円、タブレットは4万円に設定されており、修理や代替品の提供が行われます。iPhoneにサービスをつけるだけで、MacやiPadなどもまとめて補償されるのは、安心感と同時にお得感があります。

 ただし、タブレットに関しては、注釈で「ドコモを含む携帯電話通信会社などにより販売された商品は補償対象外」と記載されている点には注意が必要です。ドコモから購入したiPadには、現行モデルであればケータイ補償サービスなどをつける必要があるということです。一方で、ドコモによると「ドコモを含む携帯電話通信会社以外で販売されたiPadについては、対象となります」とのこと。アップルから直接購入したものであれば、4万円までの補償を受けられるようです。

ドコモでもiPadシリーズを販売しているが、こちらは対象外になる点には注意が必要だ

 あえてドコモからiPadを買わない方がお得なようにも思えてしまう、不思議な補償内容ですが、4万円まで補償されるのであれば、思い切ってApple Care+を外してしまうという選択肢もありそうです。修理内容にもよりますが、無印のiPad(第9世代)であれば、画面の修理などの「その他の損傷」は見積もりで3万8200円と表示されます(Apple Care+未加入の場合)。それ以外のモデルでは足が出てしまいますが、それでもかなりの範囲をカバーできる格好。iPhoneの補償に付帯するサービスとしては、十分と言えるでしょう。

無印のiPad(第9世代)であれば、AppleCare+未加入の場合でも修理費用をまかなえてしまう可能性が高い

携行品補償も1万円まで補償、対象は個別判断

 もう1つ重要なのが、携行品補償miniという付帯サービスです。こちらは、「日本国内において外出先で所有物に損害が生じた場合」の携行品が対象になる補償サービス。“mini”という名前のとおり、保証上限額は1万円で、利用時にはユーザー側も3000円は負担する必要があります。とは言え、1万円が上限であれば、アップル製品のアクセサリーなどは補償を受けられそうです。

携行品補償miniはキャンペーンという位置づけで、期間は1年間。上限は1万円だ

 考えられるのは、Apple PencilやAirPodsのように、比較的低額の製品。カバンの中に入れたApple Pencilに何らかの衝撃が加わり壊れてしまった場合や、AirPodsを落下させて破損させてしまった場合などの利用が考えられそうです。一例を挙げると、Apple Pencil(第2世代)を「その他の損傷」で修理する場合の見積額は1万6800円。AirPods(第3世代)は、1万800円に設定されています(いずれもApple Care+に未加入の場合)。

Apple Pencil(第2世代)の修理代は、Apple Care+未加入だと1万6800円程度。全額は無理だが、一部はカバーされる計算になる
AirPods(第3世代)なら、ほぼほぼ携行品補償miniでまかなえそうだ。3000円の自己負担額を加味しても、Apple Care+加入時と大差がなくなる

 全額をカバーすることはできず、3000円はかかってしまいますが、修理費のかなりの部分をカバーできるのは魅力的です。ただし、携行品補償miniはどこまでが対象となるのかを、個別の状況によって判断するとのこと。ドコモは「携帯式通信機器については原則対象外ですが、個別の補償可否は、対象物だけでなく、損害の発生原因なども踏まえて引受保険会社にて判断いたします」としています。

 eSIMを内蔵したセルラー版のApple Watchは「携帯式通信機器」に該当してしまうおそれはありますが、Apple PencilやAirPodsはあくまでBluetoothでiPhoneやiPadと通信しているだけなので、対象と見なされる可能性はありそうです。

 smartあんしん補償には、もう1つ、「スマホ不正決済補償」が付帯しており、最大で100万円までが補償対象になります。こちらはQRコード決済やiD、QUICPayなどの後払い式の電子マネーが対象。とは言え、今やほとんどのQRコード決済事業者が、不正利用時の補償を行っていることもあり、利用の機会はほぼほぼないかもしれません。

QRコード決済や後払い式電子マネーも補償される。ただし、決済事業者が独自に補償するケースも多く、利用の機会はあまりなさそうだ

 とは言え、イエナカ機器補償や携行品補償miniがついてくるだけでも、スマホやケータイの補償サービスとしてはかなり魅力的。iPhoneのみならず、MacやiPadなどまでカバーされるため、複数の機器を連携して使うことが多いアップルユーザーには打ってつけ。あえてこのタイミングに、ドコモがサービスを発表したのも納得のサービスと言えるでしょう。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya