本日の一品

USB-C時代だからこそ見直したい自動消火キャンドルスナッファー

 近年は災害への備えとして、USB-C充電式ランタンやLEDライト、ポータブル電源などを用意する家庭も珍しくなくなった。筆者宅にもUSBを中心とした照明機器や蓄電システムが数多くあり、停電時でも数日は困らない程度の準備はしている。

USBを活用した停電対策用照明の一部

 しかし、どれほどUSB PDやGaN充電器が進化しても、最後の最後に頼れる明かりは昔と変わらず「ロウソク」ではないかと思うことがある。充電不要、通信不要、規格変更もない。火を点ける手段さえあれば、確実に周囲を照らしてくれるからだ。

 そこで今回紹介するのは、そんなレガシーな照明器具を少しだけ現代風に進化させる、小さな自動消火スナッファーである。

今回紹介する自動消火キャンドルスナッファー
約7時間燃え続ける大ロー15号と昔ながらのマッチ

 今回使用したのは直径19mm、長さ235mm、燃焼時間約6時間50分の「大ロー15号」と呼ばれる製品だ。停電時にも十分な明るさを確保できる昔ながらの少し太めで背が高く、なかなか100均等では入手できない大型のロウソクだ。筆者はヨドバシ・ドット・コムで買った。

 もちろん筆者もUSBランタンやLED照明を高く評価している。しかし、それらは電力というインフラがあって初めて成立する。最後の砦としてロウソクとマッチを防災用品へ入れておく安心感は、今も変わらない。

 人類は長い間、炎と共に暮らしてきた。オイルランプやロウソクは何百年にもわたって夜を照らし続け、その過程で火を安全に扱う様々な知恵も生まれた。その一つが「スナッファー」である。

 スナッファーとは、炎を吹き消さず、金属製のキャップをかぶせて酸素を遮断し消火するための道具だ。教会や修道院では高い位置のロウソクを消すため、長い柄の付いたスナッファーも使われていた。吹き消さない理由には、ロウが飛び散りにくいことや煙を抑えられること、さらには神聖な場所で息を吹き掛けないという考え方もあったと言われている。今回紹介する製品は、そのスナッファーへ「自動化」というアイデアを加えたものだ。

重量わずか4gの真鍮製スナッファー

 重量は実測約4g。エネルギー源は、わずかなねじりコイルばねだけである。電池ゼロ。センサーゼロ。ソフトウェアゼロ。アップデートも不要だ。
ヽ(^o^)丿

任意の高さへ取り付けるだけで準備完了

 蓋を約270度開いた状態でロウソクへ取り付けるだけ。ロウソクが燃えて短くなり、炎が一定位置へ到達すると、ばねの力だけで蓋が閉じ、炎を酸欠状態にして自動消火する。

 つまり、ロウソクにも100年以上前から「Auto Shut Down」が存在していたのである。現代ならスリープタイマー、あるいはオートパワーオフと呼ばれる機能である。

燃焼時間から逆算すると面白い使い方も可能

 さらに面白いのは、このロウソク自体がアナログタイマーになることだ。235mmのロウソクが約410分燃えるなら、単純計算では約1分に0.57mm燃焼する。するとスナッファーを途中へ取り付けるだけで、

 約30分後。約1時間後。約2時間後。約3時間後。と、おおよその消火タイミングを自由に設定できる。これは水時計、砂時計、香時計、そしてロウソク時計と同じ発想であり、「235mmのアナログ・プログラマブルタイマー」と呼びたくなる仕組みだ。

安定した燭台や皿へしっかり固定して使う

 もちろん、ロウソクは安定した燭台や十分な大きさの皿へロウを垂らして確実に固定したい。火を扱う以上、安全性は何よりも最優先である。

最後はスナッファーが自ら蓋を閉めて静かに仕事を終える

 動画①では、ロウソクが少しずつ短くなり、最後に蓋がゆっくり近付き、一瞬だけ素早く閉じる様子が確認できる。動画②では、その瞬間、炎がほんの一瞬で消える様子が分かる。派手な演出はない。しかし、この小さな機械仕掛けが静かに役目を終える姿には、不思議な美しさがある。

【動画①】
【動画②】
蓋で押さえられた芯が自動消火を物語る

 蓋が閉じた後の芯を見ると、真上から押さえられた跡が残っている。まさに「帽子をかぶせて火を消す」という昔ながらのスナッファーの動作そのものだ。

 AI対応、IoT対応、Matter対応……最近のガジェットは何でも「つながる」方向へ進化している。一方、この小さなスナッファーは、燃えるロウソク一本だけを相手に、何百年も前から完全自動運転を実現していたのである。

 USB PD 240Wも、GaN充電器も、モバイルバッテリーも大好きな筆者だが、それでも防災用品の箱には今もマッチとロウソクを欠かさない。そして、その隣にはこの小さな真鍮製スナッファーが静かに出番を待っている。最新技術を楽しむからこそ、最後に頼れる昔の知恵もまた、手元へ置いておきたいのである。

 もちろん、このスナッファーを取り付けたからといって火を点けたまま外出したり就寝したりすることは絶対に避けたい。火を扱う以上、使用中は目を離さないという原則は変わらない。本製品は万一に備えた補助的な安全器具であり、その前提を忘れてはならない。100年以上受け継がれてきた知恵は、USB-C全盛の令和でも、まだまだ現役なのである。

照明の歴史を感じさせる道具たち。電卓風ケースだけは新しい。背面に擦り薬(すりぐすり)がある
製品名発売元実売価格
大ローソク 15号カメヤマ439円