スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

うるさい! 重い! だがそれがいい!! Unicomp「Mini M」で味わう快楽タイピング

 えええ~っ! そんなの、あるの!? いま? と驚いて速攻でポチッと注文したのは、Unicompの「Mini M」というキーボードである。直販価格179.00USドル。

Unicomp「Mini M」はバックリングスプリング(buckling spring)式のキー・メカニズムを採用したUSBキーボードだ。IBMブランドのこのタイプの“いにしえのキーボード”には一部根強いファンがいて、現在も各国で使われている。Mini Mはそうしたキーボードのなかのテンキーレスモデルで、新たにUSB接続タイプとして復刻されたカタチ。2021年2月にリリースされたようで、現在では日本からも注文できる。

 Mini Mは、俺が超絶好んで使っていた「Space Saver」(84-key Space Saver 1393278/IBM Model M Space Saver 1393278とも呼ばれる)というキーボードの復刻版。現代のキーボードとは逆行している? と思われる要素を多々持つ古いスタイルのキーボードだが、その独特の使用感にはある種の快感があったりする。ので「復刻版はどんなかな?」と思って注文したのであった。

なんで今さらこのキーボードを?

 本連載でレビュー記事を書くにあたって、事前にネタ物品を買って使って雑感をメモったりしている。そのメモは「ネタ帳」であるが、ネタ帳にある物品すべてが記事になるわけではない。読者にとってよりオモシロいとかより役立ちそうとか思われるネタを優先的に記事化する。

 なので、ボツになったネタもけっこうある。ネタ帳の下のほうに沈殿して埋もれていく死蔵ネタだが、これをたま~に整理っつーか削除する。

ネタ帳はこんな感じ。すべて購入したものだが、使っているもののレビューする機会を逸した物品がリスト上に残る。オモシロそうだったり役立ちそうだったりするネタをリストの上のほうに移動するので、下のほうにそうでないネタが沈殿・埋没していくカタチに。古いネタを削除する前の行数を先ほど数えたら1600行くらいあった。赤いネタ名の下に記事として書く内容もメモしているので、それも含めて1600行くらいだが、まあボツ物品が大量にあって困りング。

 さて、先日もそのボツネタ削除を行っていた。するとネタリストの最も下のほうから「IBM Model M Space Saver 1393278」が発掘された。前出の復刻版キーボードのオリジナルだ。

 20年以上前に使っていたキーボードだが、PS/2・USB変換アダプターを介すれば現在でもちゃんと使えるので、キートップをmacOS仕様にするなどして復活させるゼ!!! 的な記事を書こうかニャと思ってネタ帳入りしていたのだ。

手持ちの「IBM Model M Space Saver 1393278」は、現在でもわりとキレイな状態。本体も打鍵感もゴツくて重いキーボードだ。メカニカルキーを採用したものも含む現代的なキーボードを電気自動車だとすると、Space SaverはV型8気筒のクルマみたいな感じ?

 ……でも、Space Saverって古いとかレトロとかを通り越して、多くの人にとっては「前時代的なキーボード」だしなぁ。これを無理に復活させても……みたいな感じで、記事化を見送っていたのだ。

 てゅーか、このSpace Saver、いまどうなってるの? 売っていたり……は、しないか。と思って調べてみたら、なななナンと復刻版が販売されていたのでコーフンして即購入したという次第。

う! 売ってる! マジかホントか20年以上前に既に入手困難だったキーボードを、オリジナルをつくったメーカーが復刻させてたッ!!! まぁ、色とか違うが。

 そして使ってみたら、USB接続化・シャーシが色違いになったくらいで、キーボードとしての使用感はオリジナルとほとんど同じ。いまもきっと、こういうキーボードを「これを求めていたンだっ!」と愛する人もいるだろうし、往年のSpace Saverファンで「予備のSpace Saverを手に入れねば……」と考えている人がいるかもしれない。てなわけで今回は、このサイコーにアレでソレでナニな復刻版キーボードをレビューしてゆきたいッ!!!

なか3日で届いて、かかったお金は37,749円! その感触は……!?

 見つけた瞬間速攻でポチったUnicomp「Mini M」。

 結果から言えば、Mini M購入にかかった金額は約3万7749円だった。使用中の東プレ「REALFORCE」よりちょっと高いゼ!!!

 Mini Mを注文したのは、UTC(Universal Time Coordinated/協定世界時)「2025年7月22日 16:40:10」(注文確認メールのタイムスタンプ)だった。注文確認の自動返信メールが届いて、カード決済も通ったようで、ホッと一息……ついた途端にまたメール。

 今度は出荷確認メールで……え? 出荷完了? そしてそのタイムスタンプは「2025年7月22日 16:40:10」だった。

 え? え? 注文した途端に出荷完了って……ソレってなんかのエラーでしょ?
 ……あーまたなんかメンドクサい状況に入ったかもしれない! あー面倒なメールのやり取りが始まるのかもしれない!

 とか軽く鬱々としていたら、注文から4日後の昼ごろにMini Mが届いた。早っ! そういえば、前出のSpace Saverのとき(25年くらい前)も意外なほど早く届いた記憶が……。

 ちなみに、かかった料金の詳細は以下のとおり。各種インボイスを掲載してみる。

1USドル=147円換算で、Mini M代金+送料の合計が約35,349円。
FedExが立て替えた税金などの金額が2400円。

 思ったより小さめの箱に入って届いたMini M。さっそく開梱してみると、約25年前にSpace Saverを(やはりUnicompから直接)買ったときと違い、キーボードが分厚い発泡スチロール梱包材に包まれつつその梱包材が運送時の衝撃で半分崩れて粉々の発泡スチロール粉になっていたりはせず、ビッグサイズのプチプチ梱包材でスマートに包まれていた。現代的……かも!?

 ともあれ、さっそく使用。

Mini MはUS配列のテンキーレスキーボード。独自のバックリングスプリング(buckling spring)式のキー・メカニズムを採用しているため、どちらかと言えばタイプライターのようなハデな打鍵音がする。打鍵感もかなり重い。

 相変わらず、なかなか、凄い、打鍵音である。カチャン、カチャカチャ、カチャッと。そしてかなり重めのタイプフィール。指先でキーを軽く押下するとかじゃなくて、ある程度しっかり下へと押し込むような感じでタイプする。そのたびに響くたくましい打鍵音。

 うるさい! 重い! 2025年においては非常識な使用感だぞMini Mっ!!!
 だがそれがいい!! にや!
 あー俺的にはやっぱりコレ最高だわ~打ちやすいわ~! それ以前に気持ちいいわ~快楽タイピングだわ~!

 その証拠(!?)に、この原稿は最初からMini Mで書いているのだが、書き始めた瞬間から素晴らしく快適にタッチタイピングをおこなえている。というか、指先に吸い付くようなキートップに誘われて原稿が自動生成されているような気さえしてくるが、よもやよもやMini Mは原稿記述強制AI搭載型復刻版キーボードだった(以下略)。

 復刻版Space SaverことMini Mは、開梱直後から俺が超愛用してきたワイヤレスなREALFORCE(R3HH21)と同等かそれ以上のスムーズさで仕事に使えたのである。Mini M実機に触れる前は「まあSpace Saver使ってたころから20年とか経つし、あれから20年も経つとキーボードに対する印象も大きく変わって……的な話になるんだろうなあ」とか思っていた。

 だが、全然。全然。
 Mini Mはヒッジョーにイイのであった。心地イイのであり気持ちイイのだ。

Mini Mはどういうキーボードか?

 Mini MとPCは付属のUSB-Aケーブルでつないで使う。そのケーブルは、某警察が大騒ぎしそうな「USB-A・USB-A仕様」であった。まあキーボードの類にはこのタイプの専用ケーブルがよくあるが。

Mini Mは付属USBケーブルでPCなどホストとつなぐタイプのキーボードだ。アダプターなどを介せばiPhoneなんかでも使える。てゅ~か使えたョ!
使用するのは付属の「USB-A・USB-A仕様」のケーブル。長さは約180cm。
キーボード本体側のコネクターもUSB-Aタイプ。奥まで差し込むと抜け防止のロックがかかる。ロックはマイナスドライバーのようなもので押している間は解除されてケーブルを抜くことができる。

 本体色はブラックのシャーシとホワイト・グレーのキーの1種類だが、購入時にはキー配列を選べる。キー配列は、US、German、UK、Swedish、Japaneseとなっている。

キー配列がUSのMini M。87キーのテンキーレスキーボードだ。キートップはPBT(ポリブチレンテレフタレート)で刻印は昇華印刷で、耐久性に優れる。主なキーのキーピッチは約19mm(実測値)。
ご参考までに、前出「IBM Model M Space Saver 1393278」のキー配列を。昔ながらのキー配列って感じ。
キースイッチ機構にはバックリングスプリング(buckling spring)式を採用している。内部のスプリングにより独特の打鍵感と音がある。※GIF画像は英語版ウィキペディアより抜粋。
ワイヤレスなREALFORCE(R3HH21)とMini Mの打鍵音を比較したもの。前半がREALFORCEで後半がMini M。再生環境によって音の聞こえ方が違うと思うが、REALFORCEは高音成分がほとんどない打鍵音で「スコスコ」「コクコク」というイメージの静音だ。Mini Mは高音成分もややある「カチャカチャ」という大きめの打鍵音。実物の打鍵音を聞くと明らかにREALFORCEが静かで、Mini Mはカチャカチャいって耳障りというイメージになる。

 Mini Mのサイズは、幅395.4×奥行き190×高さ59.4mmで、重さは約1375g(ケーブルなし/実測値)。前出のオリジナルのSpace Saverの重さは1785g(ケーブルなし/実測値)なので、それに比べると「持ち上げればすぐ気付く程度」軽い。

 なお、Mini Mは常用しているワイヤレスなREALFORCE(R3HH21)より一回り(というか0.5回り)程度大きいものの、重さはあまり変わらない(REALFORCEの重さは1330g/電池込みの実測値)。まあREALFORCEは「重い部類のキーボード」ではあるが、Mini Mが極端に重いという印象ではない。

 バックリングスプリング式のキースイッチは、好みが大きく分かれると思う。俺的には重い打鍵感、クリック感の強さ、それからある意味キレのいい打鍵音も好き。重めの打鍵感と強めのクリック感は、「いま入力できた」「間違わずにタイプできた」という、なんというかキーと指と脳の間のインタラクティビティが強く感じられる。それがMini MやSpace Saverを使っているときの快感であり気持ち良さであり、さらには没入感につながっていると思う。

 てか、なんで、Mini MやSpace Saverってこんな気分良く打てるの? っていつも考えるわけだが、もーしかすると、俺が中学・高校時代にタイプライターを多用していたからかもしれない。

中高生のころはタイプライターを多用していた。入り口は「カセットテープのラベルに曲名をキレイに書き込みたい」というところから。書き文字だと汚いし、インスタントレタリングだと高いし、タイプライターならキレイで自在で長スパンなら高コスパ! と考えたわけだ。

 タイプライターは「英語の勉強のため」として親にねだって手に入れたが、カセットテープのラベル作り以外にも役立った。タイプライターで英文を打つと、英単語などを非常によく覚えられるのだ。「キーを押し間違えると(後処理が)非常に面倒!」というのがアタマにあったので、一撃必殺的に英単語などをタイプしていた。スゲく集中して正しいスペルで英単語をタイプしていたのだ。

 タイプライターによる英文入力はすぐに上達した。間もなくタッチタイピングできるようになり、簡単な単語で構成された英文ならかなり速く用紙を英文で埋め尽くせた。そしてその体験はタイプすることの気持ち良さにつながっていったと思う。そしてタイプライター大好き♪ な若人になっていった。

 そんなタイプライターの経験を、Space SaverやMini Mが思い起こさせるのかもしれない。音も打鍵感もけっこー似ているのだ、タイプライターとSpace SaverやMini Mは。Space SaverやMini Mは、タイプライターほどではないが、かなり強めの打鍵を必要とし、音もデカいのであり、現在の一連のコンピュータ用キーボードとは使用感的にかなり異なるのだ。

Mini Mの総合的な使用感は……25年前のレビューを添削してゆきたいッ!!!

 Mini Mは、前出の「IBM Model M Space Saver 1393278」とだいたい同じ打鍵感だ。ただ、重さが違い、恐らくシャーシ内部の剛性に関わるパーツが異なるためか、若干の打鍵音の違いはある。

 けれどもまあ、2台を並べて打ち比べないとわからない程度の差であり、Space SaverもMini Mも、ほかのキーボードと比べたら圧倒的とも言える突出した個性がある。なので、「Space SaverもMini Mもその打鍵感はだいたい同じ」と書いてしまって問題なかろう、と。

 2台はほとんど同じキーボードなので、同じ筆者によるレビューも、まあだいたい同じ内容になる。俺の場合、Space Saverを25年前にレビューしている。状況・環境の違いこそあれ、Mini Mのレビューもこの25年前のSpace Saverのレビューとだいたい同じになるような気がする。

 てゅーか25年前のレビュー記事がフツーに読めちゃうインプレス、スゲいな、とか思ったりするがさておき、25年経過すると書き手のモノに対するスタンスも少し変わるかな? と。

 そこで、25年前のSpace Saverのレビューを添削するカタチで、2025年のMini Mレビューをおこなってゆきたいッ!!!

 まず、堅牢さあたりから。25年前のレビューにはこうある。
 「コレはプラスティック製なのだが、ヤワさというのがない。ゴツいわけでもないのだが、IBMのThinkPadの600番台みたいな“堅牢さ”がある。武器になりますな」

 Mini Mについてもヤワさはない。ガチガチ。踏んでも大丈夫そうな剛性感がある。現在では剛性の高いキーボードが少なくないが、それでもMini Mは頑丈なキーボードの筆頭格として挙げられそうだ。

 それから打鍵感。25年前のレビューでは、30行近く取って力説している。
「そしてキータッチも凄い。キーを押下するたびに、いちいち蛍光灯のスイッチを入切したときのようなクリック音がする。ガチョガチョと非常にやかましい。キータッチ自体もやや重めで硬い感じだ。

 重い!! やかましい!! 硬い!! 今時のキーボードからすれば、どこもかしこも逆行指向なキーボードなのである。例えばコレがフツーの家電店で売られていたら、多くの人は触った途端「何このガチャガチャ言うゴツいキーボードは!?」と思い、購入には至らないと思う。

 が!! 俺はこのキーボードが最高に気に入った!! 使えば使うほど、考えれば考えるほど、このキーボードは馴染むしナイスだ。例えば、前述の重さと堅牢さ。過剰とも思える重量とゴツさ(と言うよりもタフさ)があるのだが、そこがイイ。どんなにガッツンガッツンとキーを打ちまくっても、一度決めた位置から全然ズレないでどっしり構えていてくれる。テンション猛烈高まり原稿書きモードにおける激しく素早いキー連打も不安なくおこなえる。

 キーの硬さについては最近のキーボードには見られないもので、カチカチしたクリック感も異質だ。が、そうは思うのだが、使ってみるとこの硬さは問題ない。キーが硬いとはいっても、モノがキーボードだけに、そんなにガチガチってわけじゃない。例えばノートパソコンとか、一般的な日本語キーボードなんかに比べたら、キー自体が非常にメカニカルな感じでパチパチペキペキ言うような、感触的な硬さが目立つのだ。

 押下時に特別強い力がいるわけでもないし、指などが疲れるわけでもない。と言うよりもむしろ、この適度な硬さが実に使いやすく感じられる。この硬さがあるから、ある程度力強く打てるゆえ、非常に確実でスムーズな入力ができる」

 現在の俺もこのレビューにおおむね同意する。のだが、「蛍光灯のスイッチを入切したときのようなクリック音」としている点に若干の違和感がある。全体的にはそんなに「パチパチ」「カッチャンカッチャン」という高音ではないからだ。ただ、打鍵終了時の余韻は電気器具のスイッチを入り切りした直後に響く音に似ている。……でも、この打鍵音、なんの音に似ているのだろう? 言葉での表現がなかなか難しい音だ。

 現在の一般的なキーボードと比べるとMini Mのキーは重い。少し強い力を入れないと入力できない。だが、だからといって(俺の場合は)疲れない。打鍵力が足りないときの入力がすべてキャンセルされるっていうか、使用者のほんのりミスタッチを華麗にスルーしてくれるからか、Mini Mだとタイプミスが少ない。そして総じて効率良く快適に入力できていると感じる。

 それから、手に馴染むキーということについて。25年前のレビューにはこうある。
「ちょっと抽象的というか感覚的な話でわかりにくいかもしれないが、手に馴染むキーボードというのは、その全体的な感触として「キーが指に吸い付くような感じ」がするものだ。実際に意識して使ってみればわかるが、使いやすいキーボードってのは、キー押下時、キートップの四角くややへこんだ部分と指の腹がしっくりとタッチしている。逆に、使いにくいキーボードの場合は、キートップの四角部分のエッジなどにやたら指の腹が触れる感じになる。

 で、このSpace Saverと俺の指は、キートップの四角いへこみと指の腹がいつもスムーズにタッチする感じなのである。実にしっくりきている。ちなみに俺の場合は完全にタッチタイピングなのだが、キーと指の位置関係を全然意識せず、指先とキートップの接触についてだけ意識してこの「キーが指に吸い付く感じ」が得られるキーボードなんてなかなかない。そういう意味で、Space Saverは数年に一度出会えるか出会えないかの逸品だと感じ、超気に入って使っている」

 Mini Mについても同様だ。25年前のレビューでは「キーが指に吸い付くような感じ」としているが、コレはたぶん「指がキーの押下すべき位置を探し当てにいっている」のであって「短時間で指がその位置を見つけて覚える」のだと思う。そしてSpace SaverやMini Mは、ソコを探しやすいのだろう。ソコを押すと、タイプミスが減っていくと同時に、タイプ時の快感が増している……ように思うのだ。

 25年前のレビューの最後のほうに「このくらいの使用感のキーボードなら、俺の使い方で1台が1年くらいもつと思われるので、5年分として5台……と思ったのだが、2台の追加としておいた」と、予備を購入した話がある。だが、1年くらいどころか、その後何年もずーっと健在のSpace Saverだった。全然壊れないのである。

 2005年の年末でもまだSpace Saverを使っていた。だが、インターフェースや後継機の問題から、より適切なキーボードを探し始めているようだ。

 ただ、それからSpace Saverを使ったり、しまったり、また使い始めたりして、結局2025年の現在もSpace Saverは健在。だから、きっと、Mini Mにもそういう耐久性が期待できると思う。

 耐久性といえば、キースイッチ。Space SaverもMini Mも、キースイッチ機構にはバックリングスプリング(buckling spring)式を採用している。で、Space Saverからの経験でいえば、チャタリングを起こしたことがナイのだ。バックリングスプリング式は構造上チャタリングを起こさないという話を読んだことがあるが、ホントにそうかもしれない。

 チャタリングとは、キーボードの場合は押下してもその瞬間に入力されなかったり、一度の入力なのに重複して入力されたりと、意図しない入力などが起きる現象。接触不良みたいなモンだが、文字入力中やゲーム中にチャタリングが起きると仕事も遊びも台無しになる。

 前出のREALFORCEシリーズのキースイッチは静電容量無接点方式で、これもチャタリングを起こさない構造だそうだ。確かにそうで、キーボード自体がチャタリングを起こしたということがない(OS側がチャタリングに似たエラーを起こしたことは何度かあるが)。

 Space Saverから別のキーボードに乗り換えようとしていたとき、Cherryなどのメカニカルキースイッチを搭載したキーボードにハマった時期があった。とくに「WASD Keyboards」あたり。

 現在から7年くらい前だが、それらメカニカルキースイッチにおいてトラブルも経験している。メーカーやキー位置や運(!?)によるが、たま~に「キースイッチがチャタリングを起こす」ことがある。現在はキースイッチごと挿抜できて容易にスイッチ交換ができる場合が多いので大きな問題ではないと思うが、俺がハマったころはキースイッチ交換はハンダ付け作業という場合が多かった。

 なので、キーボードがチャタリングを起こすと「スイッチをはんだ作業で交換するか……キーボードごと買い換えるか」となった。難しい作業ではなく、前向きな姿勢なら楽しめる作業でもあるが、忙しい仕事の途中にそうなると「ああああああああぁぁ~もぉぉぉ~っ!」みたいな。

 また、メカニカルキーボードがチャタリングを起こしたときに、内心「Space Saverに戻すって手もあるニャ」などと考えたりもした。「アレってチャタったことナイしなぁ」と。

 というあたりで、たぶんMini Mは幅広い意味での耐久性も高いハズ。そして現在、メーカーであるUnicompから最新版を直接買えるということで、入手性においても安心できるようになった。

 ん~イイじゃん、Mini M。かな~りイイよ、Mini M。と、ここまでの原稿を全部Mini Mで書いてきて改めて思うのであった。試しにMini Mに乗り換えてみるか~、とまで。

 一時期はUnicompのキーボード(もちろんバックリングスプリング(buckling spring)式キースイッチ採用)が日本国内でも売られていた。ので、多くの人がキーに触れられる機会があったかもしれない。だが現在はUnicompキーボードに触れる機会は……ほとんど得られないような気がする。

 知り合いにUnicompキーボードユーザーがいたら、試しに打たせてもらってお礼をして……その良さを実感したら打たせてくれたユーザーにさらに多大なお礼をしつつUnicompキーボードをズガッと購入して使い始めてみてほしい、とか思う俺だ。

 Unicompキーボード、ハマればサイコー。20年以上前にUnicompキーボードにハマって、20年近いブランクがあって、現在また使ってみたら即手に馴染んだ俺において、Mini MとかSpace Saverはマジで一生モンのキーボードなのだと思う。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。