【MWC Barcelona 2026】
【MWC26】楽天が語るAIとOpen RANが切り拓くモバイルネットワーク顧客体験の未来
2026年3月4日 01:07
バルセロナで開催されているMWC26 Barcelonaの楽天モバイルブースにて、モバイルネットワークにおける「顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)」の向上と測定方法の変化をテーマにした対談が行われた。
本セッションには、英Opensignal(オープンシグナル)の産業分析バイスプレジデントであるSylwia Kechiche氏、楽天モバイルのモバイルネットワーク監督部門バイスディレクターであるMahmoud Elsakhawy氏が登壇。次世代のネットワークアーキテクチャやAIが果たす役割について語り合った。
講演後には、Opensignal社のChief Revenue OfficerであるSangita Patel氏から楽天の三木谷会長に、トロフィーを授与する場面もあった。
データレイクとAIによる迅速な課題解決
楽天モバイルはかねてより、「日本におけるナンバーワンのモバイルキャリアになる」という明確な目標を掲げている。
Mahmoud氏によると、同社は統計データ、Opensignalから得られるクラウドソースデータ、フィールドテスト、顧客のセンチメントなど、多岐にわたるデータを単一の「データレイク」に統合している。しかし、膨大なデータの相関関係を分析し、最適なアクションを導き出すには多大な時間と労力が必要となる。
そこで鍵となるのが、AIの活用だ。AIを導入することで、正確な分析と極めて短時間でのアクションの実行が可能とされる。
具体的な成果として、従来、専門家が現場でログを収集・分析し、レポートを作成するのに1〜2週間かかっていたベンチマークテストのプロセスが、AIの活用により50分未満で完了するようになっている。これにより、専門家はより高度なタスクに専念できるという。
また、ネットワークの容量分析や根本原因の特定にもAIを用いることで、顧客への悪影響が及ぶ時間を最小限に抑えている。
Cloud NativeとOpen RANがもたらす圧倒的な柔軟性
楽天モバイルがAIの恩恵を最大限に引き出すことができると自信をうかがわせる背景には、「Cloud Native(クラウドネイティブ)」および「Open RAN」という柔軟なアーキテクチャーが、稼働初日から構築されている点が挙げられている。
これにより、1つの基地局(サイト)がダウンした場合でも、即座に周囲の基地局がカバーし、接続を維持できる復旧能力や、大規模なイベントなどで一時的にトラフィックが急増する場合でも、顧客に影響を与えずに自動的かつシームレスにリソースを拡張・縮小することができるという。
Sylwia氏も、「AIとOpen RANは密接に結びついており、柔軟なインフラストラクチャーを持つことで、より迅速にユースケースを生み出し、問題を解決できる」と、このアーキテクチャーの優位性を高く評価しているようだ。
評価基準は「最高速度」から「一貫した品質」へ
Opensignalのシルビア氏は、業界全体でネットワークの評価基準が「ピークスピード」から「一貫した信頼性」へとシフトしていることを強調している。
現代のユーザーにとって重要なのは、「特定の瞬間にどれだけ速いか」ではなく、「通勤中に動画をスムーズにストリーミングできるか」「電話が途切れないか」といった実用的な体験とのこと。
Opensignalの「一貫した品質」指標は、ダウンロード/アップロードのスループット、ジッター、レイテンシ(遅延)など6つのKPIを組み合わせて測定されており、Netflixの視聴、あるいはビデオ通話が快適に行えるかを評価している。
また、特定の国において、「ダウンロード速度が遅いこと」よりも「圏外(シグナルがない)になること」の方が、顧客の解約に直結しやすいという相関関係が確認されているという。
楽天モバイルは広大なエリアでの4G/5G接続時間において高く評価され、この「一貫性」の向上への投資が1000万契約達成という結果に結びついていると分析されている。
顧客の期待の進化とデバイスの格差
かつては「電話が切れないこと」「シンプルなWebブラウジングができること」が顧客の期待値でだった。しかし現在はゲーム、オンライントレード、ライブ動画配信など、ネットワークへの要求が高度化・複雑化している。
Mahmoud氏は、単一のKPIではなく、金融や旅行などのサービスと通信が統合されたユーザーの全体的なジャーニーを評価するための「統合されたスコア(Unified KQI)」が必要になっていると指摘。
また、これからのAI時代においては「アップロード速度」への依存度が高まるため、同領域で優れた成績を残している楽天モバイルの強みが活きるとSylwia氏は語った。
さらに、ネットワークがどれほど高性能でも、ユーザーが所有する「デバイスの性能」によって体験に格差が生まれる問題も提起されている。Opensignalでは、ハイエンドデバイスに絞ったデータフィルタリングを導入し、インフラへの投資が実際のデバイス上でどう反映されているかを正確に評価する取り組みも進められている。



