スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

メカニカルキーボードをオススメしたい!

どうせ打つなら快適に♪

 ここのところキーボード探索熱が再燃している筆者。本連載バックナンバー「自分史上最高のキーボードを手に入れた! かも!」や「再び「WASD Keyboards」でカスタムキーボード購入」あたりで書いていますが、ナイスなキーボードに出逢ったのをきっかけに拍車がかかり、さらに各種キーボードに手を出しています。

最近メインで使っているメカニカルキーボード。WASD Keyboards(公式サイト)からカスタマイズ購入したものですが、じつはこれら以外にもイロイロとメカニカルキーボードを購入&使用中の筆者です。

 最近はメカニカルキーボードの種類も豊富で、探求しがいがあります。ていうか沼ですネ。気になるキーボードをどんどん買っちゃうキーボード沼。軽くヤバいです。

 ともあれ、そんなコトをしつつ総じて思うのは、「やっぱりメカニカルキーボードはイイなぁ」ということ。結局、自分に合ったメカニカルキーボードを使うと、と~っても快適。鬱憤なしに、気持ち良く、効率的に打てる。入力効率が高まるのはもちろん、書くことにより集中していけます。メカニカルキーボードはまだ~と言うアナタも、ご自分に合ったメカニカルキーボードを初めて使うと、たぶん予想以上に感動すると思います。

 というコトで今回は、オススメのメカニカルキーボードについてアレコレと。結論から言っちゃうと、イチオシのキーボードってのはないんですが、そのかわりにイチオシのキースイッチを主にご紹介します。メカニカルキーボード用キースイッチとして普及しているキースイッチ「Cherry MX」ですが、ともあれ基本的なところから書いてみたいと思います。

いわゆる「メカニカルキーボード」とは?

 まずメカニカルキーボードって何なのか、について。キーボードにはボタンが多々ついているわけですが、そのボタン=キースイッチがメカニカル式のものが、メカニカルキーボードです。キーボードの主なキースイッチは3種類あり、「メンブレン」「メカニカル」「静電容量無接点」です。それぞれ軽くご説明。

 メンブレンは薄い膜が接触するタイプのスイッチで、キーボード以外にもリモコンなど幅広く使われています。安価にて量産でき、キーボード全体を薄くでき、防水・防汚性を高めやすいなど、多くのメリットがあります。ただし一連のスイッチがシート上にあるため、キーボードの場合なら一部接点が故障したら全部丸ごと買い替えになったりします。

メンブレン式スイッチの構造。スイッチとしては、図中(3)(4)(5)の3枚があれば動作します。キーボードに使う場合、この上部にスイッチを接触させるためのキーおよび駆動機構(アクチュエーター)が加わります。※画像は日本メンブレンのウェブサイトより抜粋。

 メカニカルが指す範疇は広く曖昧ですが、キーボード用キースイッチとしてはCherry MXシリーズなどの機械式スイッチのことと考えていいでしょう。バネの駆動機構(アクチュエーター)や金属接点を組み合わせた機械仕掛けのスイッチです。

キーボード用メカニカル式スイッチの一例。Cherry MXの赤軸です。プラスチック部品および金属のバネが駆動機構で、それに加えて導通して信号を伝える金属接点があります。これらがひとつのモジュール内に収まっています。※画像はCherryのウェブサイトより抜粋。

 静電容量無接点は、コニックリングと呼ばれる円錐スプリングの伸縮による電荷の容量変化から、スイッチのオンオフを電子的に捉える方式です。メンブレンやメカニカルと違い、電気的な接点がありませんので、非常に高い耐久性があります。

静電容量無接点は物理的な接点を持たないスイッチで、耐久性に優れています。東プレの高級キーボードでおなじみのキースイッチです。※画像は東プレのウェブサイトより抜粋。

 以上がキーボード用の主なキースイッチ種類ですが、打鍵感などにつながる要素としてキーの駆動機構(アクチュエーター)も重要です。キーを押し下げたとき反発力を生んだりクリック感を生じさせたり、キーを離したときに元に戻る機構ですね。

 主流のメカニカルキーの場合、キーの各モジュール内に駆動機構がありますので、スイッチにより打鍵感が異なります。メンブレン式キーボードの場合でも、駆動機構がパンタグラフ式なのかラバードーム式(だけ)なのかによって打鍵感が大きく異なります。

 ともあれ、Cherry MXシリーズなど機械式のキースイッチを採用しているのが、メカニカルキーボードです。機械式キースイッチはCherry MXシリーズ以外にも多数ありますが、イチオシはCherry MXシリーズです。このキースイッチを採用したキーボードがオススメ。

なぜCherry MXシリーズ?

 Cherry MXシリーズ(公式ページ)を搭載したキーボード(でユーザーに合ったもの)をオススメする理由は、まずこのキースイッチがチョ~普及しているから。すんごく普及しているぶん、これを搭載したキーボードも多数あり、キーボードの選択肢が広いです。また、キー単体での入手性も高いので、修理やカスタマイズも比較的に容易です。

 普及している背景には、Cherry MXシリーズの品質の高さがあると思います。筆者はCherry MXシリーズ搭載キーボードをいくつか使ってきましたが、これまでキースイッチ部分が故障したことがありません。大した耐久性だと思います。まあ、だからこそ世界的に普及しているキースイッチになっているのだと思いますが。

 筆者的に「故障しないし打鍵感もイイ」と思えるキーボードとして、東プレ「REALFORCE」シリーズ(公式ページ)やPFU「Happy Hacking Keyboard Professional」シリーズ(公式ページ)など静電容量無接点式スイッチ搭載品もあります。これらもオススメではありますが、けっこう高価ということもあり、ここでは割愛します。

 それと、Cherry MXキースイッチはキーキャップ(キートップ)も多数流通しているのもイイ感じ。キースイッチ部分と、実際に指が触れるキーキャップ部分が容易に分離でき、キーボードの一部キーキャップを交換可能というわけです。特定のキーの色を変えるとか、修飾キーやメディアキーを別OSのものに換えるとか、幅広くカスタマイズできます。

左はCherry MXキースイッチのモジュール。通常は上にキーキャップをはめて使います。「Cherry MX用」などとして売られているキーキャップを装着可能。中央写真のキーキャップ裏側に「+」型の窪みが見えますが、ここがキースイッチモジュールにはまります。右はMac用のメディアキー。キーキャップを交換しつつキー配列変更アプリを使えば、Windows用キーボードをMac用に変えることもできます。

 Cherry MXキースイッチは、タイプがイロイロとあり、好みの打鍵感となるスイッチを選べるのが大きな魅力です。軽いタッチで打てるスイッチ、重めのスイッチ、音がするスイッチしないスイッチ、指先で入力の瞬間がわかるスイッチなど、多彩。詳細は後述しますが、キーボードの重要な使用感となる打鍵感を細かく選びやすいのも、Cherry MXキースイッチ搭載キーボードのいいところです。

Cherry MXキースイッチ搭載キーボードの選び方

 さて、Cherry MXキースイッチを搭載したキーボードをオススメしたいわけですが、率直なところ、いきなり選ぶのはやや難しいと思います。キー数やキー配列などまでなら必要に応じて簡単に選べると思いますが、「MXキースイッチはどれ(どの色)がいいのか?」が悩ましいところです。

 Cherry MXキースイッチが初めてという方は、まずショップなどで実際の打鍵感を試すのがいいと思います。MXキースイッチ搭載キーボードとしてよく知られている製品としては、ダイヤテックはFILCO「Majestouch」シリーズ(公式ページ)やアーキサイトはARCHISS「ProgresTouch」シリーズなどがあり、価格レンジはだいたい1万円前後。入手性も良好です。

 あるいは、各色のキースイッチを押下し比べられる「テスター」や「サンプラー」を買ってみるのもいいかもしれません。下に掲載した表やグラフを見ながら各軸色のスイッチを試すと、より実感がわくと思います。

各色のCherry MXキースイッチを試せるテスターの類。「key tester」などのキーワードで検索できます。左はAmazonで売られていたテスター(Amazon.co.jpへのリンク)で1999円。右はAliExpressにてUS39.90ドルで売られているテスター(AliExpressへのリンク)で、81種類もの異なるキースイッチを試せます(Cherry MX互換の別メーカー製キースイッチも多数含まれています)。

 ともあれ、そういったキーやキーボードに触れるとき、MXキースイッチの「軸の色」を意識してください。Cherry MXキースイッチは、軸の色により押下時の重さやクリック感・クリック音の有無が異なります。

 たとえばレッド(通称;赤軸)は「軽い押し心地で、引っ掛かりがなくスッと押下できる」という打鍵感的特徴があります。ブルー(通称;青軸)なら「レッドより少し重い押し心地で、押下途中でカチッという感触と音がある」という雰囲気。

 Cherry MXキースイッチは、日本国内で流通していたり入手可能なものとして、だいたい10種類くらいあると思います。基本的な違いは、押下時の重さと押下感触。重さは5種類、押下感触は大分して3タイプあります。

 それら基本的な違いをとりあえず以下にて表にまとめました。ただし、なかには国内流通のキーボードには採用されていない色の軸もあると思います。なお、以下に掲載している図版類はCherryのMXキースイッチ・データシートより画像などを抜粋して作成しています。

スイッチの押下時の重さはcN(ほぼgと同じ)で示されていて、この表では上のほうが重いキースイッチです。押下感触は、リニア(Linear)が「何の引っ掛かりもなく最後まで押せる感じ」です。クリック感(Tactile)としているのが「入力の直前(体感的には入力の瞬間)に小さな引っ掛かり感を指先に感じる」といったもの。クリック感+音(Clicky)としているものは、入力の直前に引っ掛かり感がありつつカチッという音が聞こえる」というものです。なお、グレーはリニアとクリック感の2種が存在するようです。45cNの重さのリニア軸はレッドとシルバーがありますが、シルバーは入力の位置が浅い高速入力対応のスイッチで「スピードシルバー軸」と呼ばれるものです。このほか、赤や黒には静音性を高めたサイレント軸が存在し、サイレント黒軸は薄い黒で、サイレント赤軸はピンクっぽい色です。ほか、ユニットの軸以外の部分が透明のフルカラーLED対応RGB軸各種もあるようです。

 比べる方の例としては、レッド、ブラウン、ブルーを試してみると、軽め→やや軽め→少し重めを試せると同時に、リニアとタクタイルとクリッキーの感触の違いがわかっていいかもしれません。ブラック、ホワイト、レッドあたりを試せば、自分にどの重さがマッチするのかわかりやすいですね。

 実際のキーボード製品としては、ひとつのキーボードシリーズ全体でこれらキースイッチのうち数種類が採用され、1機種のキーボードに同じ色の軸が使われていたりします。キーボードごとに「青軸搭載」や「赤軸搭載」として売られていることが多い感じ。黒軸、赤軸、茶軸、青軸あたりは広く採用されている定番MXスイッチなので、店頭などで試しやすいと思います。

 それぞれのMXキースイッチについて、より詳しく知りたい場合は、Cherryの本家サイトのデータや、米国サイトのスイッチ一覧からデータシートをダウンロードしてご参照ください。……でも、ダウンロードとか面倒な感じですネ。ということで、手っ取り早く主なMXキースイッチとその特性を示したグラフをまとめましたので、以下にてご覧ください。

 上のグラフは縦軸が押下に必要な力です。1cNは=約1gの力なので、グラムに読み替えてもまあまあ大丈夫です。横軸がキーが沈み込む距離で、上の線が押下していくときの特性で、下の線がキーが戻るときの特性です。

 また、「Tactile position」はカチッという感触が発生するタイミング。「Operating position」はスイッチが入って文字が入力されるタイミング。「Reset position」は押し戻されたキーにより入力前の状態に戻るタイミングです。

 カチッという感触の「Tactile position」と、文字が入力される「Operating position」の間に、0.5mmくらいのキー沈み込み距離があります。クリック感と入力が少しズレるような気がしますが、実際の速さと力でキーボードを使っていれば、この距離の沈み込みは一瞬で完了しますので、体感としてはクリック感発生と同時に入力が行われるという印象です。

 ともあれ、Cherry MXシリーズキースイッチ搭載のメカニカルキーボード、ぜひ一度使ってみてください。キーボードを使う時間が長い方ほど、そのメリットを感じられると思います。「もっと早くから使っておけば!」と思うかも? どうせ入力するなら、もっと快適に! ということで、ぜひ♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。