スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

PCディスプレイを絵の具から守る! 「アクリルフレーム」で快適お絵描き環境を構築

 唐突だが、PC用ディスプレイの前で「絵の具」を使いたくなった。理由は↓コレだゼ!!! それはルアーのパッケージを見て落書きしていたときだ。

Heddon(ヘドン)というブランドのルアーの紙箱。イラストがジョリーグッドである。
遠くに釣り人が乗っているボート。目の前でルアーに食いつくブラックバス。ボートの後方にはテント。ドワジャック(ドウォージャック)川のほとりでキャンプしつつのバスフィッシングだ。構図がマーヴェラスである。
このルアーのパッケージのようなイラストを描きたいと思って落書きしていたのだ。紙にシャーペンで落書き。

 そこで思い出した。ずいぶん前(10年くらい前?)にも同じように上記パッケージを見て、落書きしていて、「こういうバスフィッシングの絵を描こう!」と思い立ったことを。そしてアクリル絵の具(リキテックス)とかも買っていた。

たぶん10年くらい前に買ったリキテックス(中高生向け入門用セット的な)。40年くらい前に初めてアクリル絵の具を使い、その使い勝手のよさと汎用性から、以降はずっとアクリル絵の具大好き派の俺なのであった。ちなみにこの「10年くらい前に買ったと思われる絵の具」だが、いまでもまだ全然フツーに使えた。

 上記のような絵は、パソコン&ペンタブレットとかで描いてもいいのだが、たまには筆でペタペタと書きたいニャと思った、のだと思う。また、うまく描けたら板を彫って半立体(レリーフ)にして着彩したいニャ~と思い、ソレ用の板まで買ってあった。

 なーんだ、やる気満々じゃん10年くらい前の俺! じゃあ描こう! モチーフも画材も出てきたし、これから描こう! と、思ったところで……。バスフィッシングの絵を描いてない理由を思い出した。

魚を「そらで描く」のは難しい、だからディスプレイで資料を見ながら……

 魚をある程度リアルに描くのは難しい。身近だしよく見るしいつも食べたりもしている魚だが「マグロ描いてみて」って言われてもスラスラ描けるモンではない。

 体形は? ヒレってどこに? 体色どんなん? って感じで、そーとー描き慣れていない限り、サッと描くのは難しいのだ。まあ絵なんて全部そうだが。

 なので、やはり、魚の資料を見ながら描きたい。資料となればインターネット上の画像! それを見るにはディスプレイが必要!

ディスプレイに表示した魚の写真を参考にすれば! どんな魚でもリアルに描ける! ような気がする!

 でまあ、10年くらい前の俺はそう考えて、ディスプレイを見ながら絵を描こうとした。そのときに10年くらい前の俺は思い出した。さらに10年くらい前のことを。つまり、いまから20年くらい前のこと。

 20年くらい前の俺もまた、ディスプレイ上の資料画像を参照してアクリル絵の具で絵を描こうとしていた、という記憶がある。たぶん猫かなんかの絵じゃないかニャ? そして実際に描き始めたらトラブルに遭遇。

 アクリル絵の具が知らない間にディスプレイ表面に付着していたのだ。描いている最中にピッて飛んだかなにかして、ディスプレイ表面に数点のアクリル絵の具が付着していた。

 アクリル絵の具のメリットは速乾性。使用時は水溶性で扱いやすいが、乾くと耐水性となって水には溶けなくなる。描いているときは扱いやすくて描き終えたら耐久性が高まるということで、これらが大きなメリットだ。

 しかし、意図しないトコロにアクリル絵の具が付着して乾いちゃうと厄介。しかも付着に気付かず乾いちゃうと超厄介。擦ったくらいじゃ落とせないのだ。上記、20年前にディスプレイに付着したアクリル絵の具も、簡単には落とせなかった。

 結局、専用の剥離剤(リムーバー)を使って、ディスプレイ表面に付着して乾いたアクリル絵の具を落とした。

乾いてしまったアクリル絵の具は、リムーバーと呼ばれる溶剤を使えば落とせる。筆やパレットに着いて乾いたアクリル絵の具もスッキリ落とせる。しかし、布地に浸透して乾いたアクリル絵の具を落とすのは難しいように思う。ちなみに、こういうリムーバーで使い捨てタイプの薄い樹脂製パレットを拭いたりすると、樹脂製パレットが溶けたりもする。

 アクリル絵の具は落ちたものの、ディスプレイ表面は若干白っぽく濁ってしまった。そのディスプレイはノングレア(非光沢)だったが、ディスプレイ表面が剥離剤で変化したのか、アクリル絵の具を完全に落としきれなかったのか? でもまあ、画面になにか表示すれば目立たない程度の「白い濁り」だったのでそのままにした。

 そんなことを体験したので、「ディスプレイの前でアクリル絵の具を使うのはヤバい!」という擦り込みが生まれてしまった。だから10年くらい前に「ディスプレイ見ながらバスフィッシングの絵を描こっと!」と思ったものの「……あ、やっちゃダメなヤツだったコレ」となり、描かなかったのだ。

 じゃあ、アクリル絵の具じゃなくて、どこかに着いちゃっても簡単に落とせる絵の具にしたら? 水溶性の絵の具を使えば、まあディスプレイ表面に着いちゃっても、やさしく水拭きを繰り返せば落とせると思う。

 だが、アクリル絵の具は総合的にヒッジョーに便利なのだ。非常に便利なので使いたい。

 前述のように、まず使用時は水溶性で乾くと耐水性になる。描いて乾いた後には、そうそう簡単に色が滲んだり落ちたりしないというのが、まずスゲく便利。

 加えて(透明度が高いアクリル絵の具の場合は)、透明度を利用した描画ができる。下の色をうっすら残しながら上に色を乗せるとか。一方で、不透明タイプのアクリル絵の具(アクリルガッシュとか呼ばれる)だと、重ね塗りすると下地の色が隠れる。色が濁らないスッキリした描画など、ポスターカラー的にも使える。

写真はフツーのリキテックス(レギュラータイプ)のチューブ。リキテックスは透明アクリル絵の具と思いがちだが、色によって「透明」、「半透明」、「不透明」などがある。それは絵の具チューブに表記されていることが多い。水彩絵の具なども透明と思われがちだが色によって「透明」、「半透明」、「半不透明」、「不透明」があったりする。

 さておき、アクリル絵の具をディスプレイの前で使うと上記のような問題が生じたりする。なので、10年前の俺は「タブレットを参照して描こう。タブレットならビニール袋に入れちゃえばいいし」と思った、という記憶がある。

 ツイデに、「タブレットはビニール袋に入れるとして……絵を描く場所が確保できないや~」、「また今度にしよっと」と思った記憶はない。のだが、たぶん俺のことなので、そういう感じでバスフィッシングの絵を描く件からフェードアウトして10年経って現在に至ったのだと思う。

農業用マルチでディスプレイもキーボードもマウスも覆う!

 でもこのままバスフィッシングの絵を描く件を再度フェードアウトしてさらに10年経ったときの俺生存確率を考え始めたら「やっぱり、いま描こう!」となった。そして、ディスプレイをアクリル絵の具から守る方法は?

 農業用マルチと呼ばれる(たぶん)ポリエチレンの薄いシートを使った。本来は畑の畝(うね/作物を植える盛り上がった土の部分)を覆うシートで、保水/雨天の土の(作物への)跳ね返り防止/害虫の抑制などに使われるもの。だが、透明度が高く薄く扱いやすそうなのでソレを使った。

農業用マルチは幅1mくらいからあり、長さは10m以上の単位で売られている。黒や銀や穴あきなど各種があるが、透明で穴ナシのものは農業用以外にもいろいろ使えそう。厚さ0.02mmで135cm×50mののものが1500円くらいだったと思う。ホームセンターの園芸コーナーなどで売られている。
薄くて透明度が高い。台所で使う保存向けのビニール袋をシートにしたような感じ。
ディスプレイに被せた様子。
シートは静電気によりディスプレイ画面に密着しやすい。密着させると表示があまり劣化せず見やすい。
シートの下部を使ってキーボードやマウスも覆ってしまう。アクリル絵の具が着いた手でこれらを使う場合はシート越しで。直接触れるとアクリル絵の具が付着して、やはり落としにくい/落ちない状態になるからだ。

 むむむ! なかなか良好! これならディスプレイ表示を見ながらアクリル絵の具で思いっ切り描いていけるゼっ!!!

 ということで、続けて画材などを用意してゆきたいッ!!! 以下、ご参考までに、ディスプレイ前でアクリル絵の具で描くためのアレコレをご紹介してみたい。

アクリル絵の具や筆。アクリル絵の具は、使用時は水溶性なので水入れも使う。描く面の下地づくりにジェッソを使うことが多い。
アクリル絵の具は10~30分程度で乾いてしまったりするので、パレットに固着しやすい。パレットは「描いた後に洗うなどメンテナンスの必要がない」という点で使い捨てが便利。出し過ぎた/混色などした絵の具を使える状態で残しておきたい場合、皿形状がある使い捨てパレットに絵の具を残してビニール袋に入れたりラップをかけたりして(必要に応じて霧吹きで加湿して)保湿すれば保存できる。チャチャッとべた塗りのために絵の具(やジェッソ)を出す場合、ペーパーパレットも便利。ペーパーパレットは、乗せた絵の具をテュッシュで拭うと(絵の具が半乾き程度なら)けっこうキレイに拭き取れるあたりも実用的。
俺の場合は絵の具を使うときは手袋必須派。アクリル絵の具は皮膚に着いても落ちにくく、爪の間に入るとさらに落ちにくい。指で撫でてグラデーションつくる系の画材も使わないし、手袋を常用している。手袋は密着性の高い使い捨てが実用的だと感じる。
絵の具を使うときはエプロンも必須だと思う。アクリル絵の具が服に着いた場合、「付着直後ならリムーバーを使って落とせる」説もあるが、リムーバー使用にそーとー慣れていない場合は「アクリル絵の具が服に着いたら詰みであり終了」だと思う。写真はAmazonの999円エプロン。これで服もアクリル絵の具から守ってゆこうッ!!!
Amazonで買い物をすると緩衝材として入っている紙。2種類くらいあると思うが、どちらも絵の具で絵を描くときの汚れ防止として机上に敷くと便利。机の汚れ防止になるのはもちろん、筆に取り過ぎた絵の具を拭ったり、手袋などについた絵の具をなすり付けたりするのに好適だったりする。
上記のシートや道具をセットした様子。紙はブロックタイプの水彩紙かケントボードを使うことが多い。

 さて、このようにセットアップすれば、画面を保護しつつアクリル絵の具で描ける状態になる。だが、ここまでのセットアップで若干の面倒くささはある。

 最大の面倒はビニールシートをディスプレイに被せること。ただ被せるだけなら、シートを画面上部あたりにマスキングテープでペッペッと2箇所くらい固定すればいい。

 だが、シートと画面を密着させて、画面の視認性を高めようとすると、シートと画面の間に入った空気を抜く作業が生じ、それがけっこう面倒なのだ。また、空気が完璧には抜けてくれないことが多い。

 なので「あーもー空気抜くの面倒だからいいや」と、空気抜きをしないで使ったりしがち。そうすると、描画時に参照したい画像細部に限って空気が入っていて見づらかったりする。

 そうなると軽く「イラッ」とするわけだが、そのイラッとする感じと空気抜きの面倒さを合わせて「このシート被せ作戦は単純明快だけどスッキリ感がイマイチ」という感じになる。まあでも手軽に画面を絵の具から守れる方法ではある。

両面ディスプレイアクリルフレームで絵の具・ディスプレイ問題がスッキリ解消

 前述の透明シートによるディスプレイ保護は、まあ実用的ではあるが、セットアップがやや面倒である。また、画面表示の見栄えが微妙に「もう一歩」といった感じ。

 他方で、ディスプレイ前で(ディスプレイをとくに見ることなく)ホコリや水が飛散しがちな作業をするときには大役立ちである。ディスプレイの前で、植物の鉢の植え替えとか、何かを切ったり削ったりするとか、そういうときに「超手軽&安価に使えるディスプレイ保護シート」として役立っている。

 では、ディスプレイを見つつ絵の具で絵を描く場合はどうしているか? いくつかの方法を試した結果、現在「これがいちばんラクで実用的」と感じているのが、「両面ディスプレイアクリルフレーム」を使う方法だ。

Amazonで売られている「両面ディスプレイアクリルフレーム」。2枚セットで3399円だった。※画像はAmazon商品ページより抜粋。
タイプは複数あるが、購入した「A3、横型T型、2本セット」の大きさは横420×縦297mm。A3くらいまでの用紙に絵を描く場合、用紙とディスプレイの間に立てれば絵の具がディスプレイに跳ねるのを防げるだろう。※画像はAmazon商品ページより抜粋。
中央のアクリル板は二重になっており、台座から抜ける。台座から抜き、2枚のアクリル板の間に紙などを挟み、台座に差し込んでセットする。写真やメニューなどを立てて表示できるという什器だ。※画像はAmazon商品ページより抜粋。
さまざまなサイズが用意されている。「こんな感じで使えるョ!」という使用例写真だが、見せられるほどに使い方がわからなくなる感じかもしれない。※画像はAmazon商品ページより抜粋。

 このアクリルフレームを、ディスプレイと絵を描くスペースの間に立てる。あとは前出の画材を始めとする道具を用意する程度。前出のシートのセットアップとは若干様相が変わってくるので、写真とともにアクリルフレーム使用例をご説明。

ディスプレイの前にアクリルフレームを立て、その手前に必要な道具などを並べたという感じ。
アクリルフレームは二重のアクリル板だが、透明度が高いので後方のディスプレイ表示もクリアに見られる。
Amazon紙とか画材とかは手前に。なおアクリルフレームは描く紙の近くに置いたほど「絵の具バリア効果」が高まる。
キーボードは左側に置いた。ただしビニール袋で包んである。アクリル絵の具による汚れ防止のためだ。
右側にはアクリル絵の具による汚れ防止のためビニール袋に入れた状態のマウスを置く。この状態だとホイールがほぼ使用不能になるので、ウィンドウのスクロールバーなどを使うことになる。

 という感じで、ディスプレイにビニールシートを被せるよりも簡単に、アクリル絵の具がディスプレイに飛散・付着するのを防げるようになった。自立するアクリルフレームが汚れ防止のバリアになるわけで、アクリルフレームを単に置くだけなのでセットアップが非常に容易だ。

 アクリルフレームは画面全体を覆うバリアにはなっていないが、それでもアクリル絵の具の飛散・付着を防ぐ防御壁としてはしっかり機能してくれる。要は絵筆とディスプレイ面の間の壁となってくれればいいだけなので、その壁はそーんなに大きい必要はないのであった。

 実際に、写真の40インチ曲面ディスプレイは、A3サイズのアクリルフレームで防御されているだけだが、それでも画面にアクリル絵の具が付着するということは一切起きていない。快適。実用的。

信楽焼の黒い猫の置物(タヌキっぽい)にジェッソを塗り、アメリカンショートヘアっぽい体毛を描いている。ジェッソをベッタベタ塗ったり、筆を速め強めに動かして体毛を描いたりしているが、ディスプレイ面への絵の具類の飛び散りは一切生じていない。
木彫をするときにもアクリルフレームで画面を保護。細かな木片が画面に当たっても傷はつかないと思うが、木彫時に出る微細な削りかすが静電気で画面に着く? のを少し防止、みたいな?

 十分な効果があるアクリルフレーム。設置も容易だし、透明性も十分で画面表示がよく見える。ただ、これを使う場合はアクリルフレーム手前が作業スペースになるため、キーボードやマウスが左右に追いやられがち。

 その左右のエリアには、ホントはパレットや筆など小物を置きたいのだが……という微妙な不満足点は残るものの、でもディスプレイを使いつつ、その前でアクリル絵の具を自由に使えるようになった! ので、ヨシとしてゆきたいッ!!!

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。