三井公一の「スマホカメラでブラブラ」
1型センサーならではのリッチな写り! 「AQUOS R7」の進化したカメラを試す
2022年8月19日 00:00
1型センサーの搭載で大いに話題になったシャープ「AQUOS R6」の後継機、「AQUOS R7」が登場した。ルックスも精悍になり、持っていてカッコいい端末に仕上がっている。
この「AQUOS R7」を手にブラブラと撮影した感想をお伝えしたい。本稿の作例はすべて、タップもしくはクリックで元ファイルへアクセスできる。
高級コンパクトデジタルカメラ並みの1型センサーを積む
「AQUOS R7」はカメラ性能に力を入れているAndroidスマートフォンだ。一部の高級コンパクトデジタルカメラが採用している1型という大きなセンサー(編集部注:シャープでは1インチセンサーと表現)を採用、ライカ・ズミクロンレンズを搭載して高画質を標榜しているのはご存じのとおり。
先代の「AQUOS R6」は動作スピードに難があったが、新しいセンサーと画像処理によって見違えるような描写と使い勝手を手に入れている。
「AQUOS R7」の1型センサーは有効画素数4720万画素。しかし記録画素数は1180万画素になる。これは4つの画素を1つにビニングしてピクセルピッチを3.2μmとしているためだ。
オートフォーカスも進化した。コントラストAFから像面位相差AF(Octa PD AF)となって、高速かつ正確で実用的な速度に。一般的な動作速度でスナップなど撮影が楽しめるようになったのがうれしい。
レンズは先代から変更はなくライカ監修「SUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.」である。シングルカメラとなり35mm版19mm相当の画角だ。
レンズ本来の画角で撮影するには超広角の「0.7x」で撮影しなければならない。カメラ起動時はデフォルトで「1.0x」だ(設定で「広角で起動する」に設定すると「0.7x」で立ち上がる)。
画角の変化はこんな感じだ。望遠側の描写が甘くなるのはシングルレンズの性(さが)か。ちょっと残念である。デフォルトの表示どおりに超広角(0.7x)、広角(1.0x)、望遠(2.0x)の3つで撮影するのが無難だろうか。
「AQUOS R7」でブラブラスナップを楽しむ
東京駅前に立つビル群を撮った。さすがは1型センサーという描写である。窓枠のひとつひとつをしっかりと解像してとらえている。
このような硬質な被写体は得意なようである。ミラーガラスに反射する建物や、うっすらと見えるビル内の様子も確認できた。
薄曇りの湖畔を歩いた。岸に上げられていたボートを撮ったが、実に鮮やかな発色に仕上がった。肉眼よりややクッキリとした写りだ。「AI」のオンとオフを試したが、あらゆるシーンでオンの方がいい結果が得られた。
センサーが大きいということはボケ量も期待できるということだ。湖畔にあった箱根駅伝の碑に迫って「AQUOS R7」のシャッターを切ったが、背景の自然なボケ味がいい感じ。やさしい光学的な「Bokeh」はいいものである。
横浜・野毛にある、とある店の美味しそうな料理をクローズアップで。シズル感がとても素晴らしい。テカリといいソースの厚み感がとてもリアル。蛍光灯下だったがホワイトバランスも的確で「AI」がいい働きをしてくれた。
「AQUOS R7」にはポートレートモードも搭載されている。「美肌」と「ぼかし」をスライダーで0〜10段階で調整できる。石像を撮ったが少しエッジ処理におかしいところが見られた。
低照度時でもF1.9の明るいズミクロンなので安心だ。このカットは夜の歓楽街を撮ったものだが、ISO 310、シャッタースピード 1/50となった。さすが1型センサー、写りがいい。解像感、ホワイトバランスも素晴らしい。もっと暗いシーンを撮ってみたくなるほどである。
0.7x、1.0xの超広角と広角の写りは素晴らしいが、望遠側はシングルレンズなので苦しい。暑さで空気が揺らいでいるせいもあるが、遠景は締まりが足りない印象だ。コンセプトと構造上致し方がないところか。
「AQUOS R7」は先代モデルと比較するとキビキビ動く。ほかのスマートフォンと同等になった、と言うべきか。何よりもオートフォーカススピードが向上したのがいい。シャッターのレスポンスはゆっくり目だが、一般的なスマホとあまり変わらないテンポでシャッターを切ることができた。
「AI」と「HDR」の効きも自然で優秀だ。太陽をフレーム内に入れて撮ってもハイライトを絶妙に残し、シャドウもギリギリまで粘るという、大型センサーとのマッチングも良好に感じられた。キッチリと作品撮りにも使えそうなナチュラルな仕上がりがいい。
渋谷にあった落書きされたメーターボックスを撮った。ピント面はシャープだが、画面周辺部に行くに従って像が甘いのが気になる。さほど近接撮影ではないのだが、流れ気味の写りになってしまうので、平面性の高い被写体の場合は注意が必要かもしれない。
このような逆光気味のシチュエーションはデジカメライクな写りをしてくれる。いわゆるスマホライクな、コンピュテーショナルフォトグラフィーバリバリの仕上がりではないので好感が持てる。空の飛行機、ビルのディテール、歩く人々の露出バランスも素晴らしい。
清掃工場の煙突をあおってシャッターを切った。ハイライト部ののびやかな感じと、空のトーンが美しい。1型センサーの余裕を感じさえする。
木の力強い枝振り、葉の細かい描写はさすが「AQUOS R7」といった感じである。極小センサーのローエンドスマートフォンと比較するのが酷になってしまうほどだ。先代モデルの緩慢さが消え、普段使いでもストレスをあまり感じることがなく撮影できる端末になっていると思う。
デジカメライクな写りを楽しみたい人に向く「AQUOS R7」
「AQUOS R7」は先代モデルの弱点を解消し、普通のスマートフォンと同程度の撮影動作速度を手に入れた。
撮影時もそれほど待たされることなく、1型センサーの素晴らしい写りを享受できる。IGZO OLEDディスプレイは晴天時も見やすく、マット加工の背面とエッジが立ったフレームは高級感もあり、価格の高さなりの質感を持っていると感じた。
ただ、気になる点もある。近ごろの暑さのせいか、熱の影響で撮影できないことが多かった。数カット撮るとカメラがダウンし、冷えるまで待たされたこともしばしばであった。ほかのスマートフォンでも、カメラを多く使っていると、真夏はよくこうした状況になる。使用シーンには十分気をつけたい。
しかし、何よりも1型センサーのリッチで懐の深い写りがいい。デジタル一眼カメラのサブとしても通用しそうな描写には驚かされた。「AI」の効きもよく、デジカメライクなテイストをキープしながら、スマホ画質に慣れた人にも気持ちのいい仕上がりを提供してくれるはずだ。