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新型1インチカメラ「AQUOS R7」進化のヒミツや疑問あれこれ、シャープに聞く一問一答

AQUOS R7

 9日、シャープが新型フラッグシップスマートフォン「AQUOS R7」とベーシックモデルの「AQUOS wish2」を発表した。本誌では、その詳細を別記事でお伝えしている。本稿では9日午前中の報道関係者向け質疑応答の内容をご紹介する。

 回答したのは、シャープ執行役員 通信事業本部長の中野 吉朗氏、通信事業本部 パーソナル通信事業部長の小林 繁氏、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 課長の楠田 晃嗣氏。

「AQUOS R7」の価格、狙いなど

――「AQUOS R7」の価格帯と販売目標について教えてほしい。

小林氏
 価格は、販売元(ここでは携帯電話会社のこと)が決める話ですので、シャープからの回答は控えます。

小林氏

 ただ、バリュー(価値)に見合った価格に設定していただけるのではないかと考えています。販売目標についても、具体的な数値は控えたいのですが、非常にイノベーティブな商品ですので、ぜひとも本格的なカメラ撮影を楽しみたいお客さまに、手にとっていただきたいです。

――シャープにとっての位置づけやターゲット層は?

小林氏
 スマートフォン市場はコモディティ化が進んでいると言われていますが、スマートフォンって、1日のなかで、人類がもっとも頻度高く接するデバイスです。イノベーションがもっともお客様の体験を変えやすい、そういう商品ジャンルだと思っています。

AQUOS R7のサマリー

 そのなかで、私どもとしても技術で世の中を変えていきたいと思っており、そういう意味でも重要な存在です。「AQUOS R7」は、PRO IGZO OLEDやカメラなど、シャープが持つ全ての技術をつぎ込んでいる位置づけです。

 ターゲットについては、スマートフォンということで、非常に幅広い方にお使いいただけると思う一方で、AQUOSシリーズを支持していただいているお客さまはもちろん、非常に本格的なカメラで撮影できる商品に仕上がっており、高級デジカメのような撮影をスマートフォンで、という方に適したモデルです。

――競合との違い、iPhoneとの違いというところで、より具体的なアドバンテージを教えてほしい。どういうスマホを目指してきたのか。

小林氏
 具体的な競合先、業界のブランドとの直接的な比較は避けますが、商品特性として「AQUOS R7」の1インチセンサーは、スマートフォンで利用されることが極めて稀なものです。現在のスマートフォンのトレンドは、複数のカメラを搭載しています。

 高性能なセンサーで広角とズームを撮るという「AQUOS R7」は、一番良い性能、一番大きなセンサーで写真を撮る、という考え方は使い勝手の面でも、シンプルで、なおかつ良い写真を記録できます。ここは、他社さんと大きくコンセプトが違う部分じゃないかな? と。

 もうひとつが5Gです。日本の5Gは、開始当初、海外よりも出足が遅れたとされていましたが、今や(Sub-6に加えてミリ波も国内全キャリアで展開されたのは世界初であり、5G SAも本格化しつつあるなど)、日本は5Gでも本当に世界最先端になってきています。

 本当に、日本のお客さまにもっとも使いやすく、快適に使えるスマートフォンを提供したいと考えており、業界を牽引したいですね。

 「AQUOS R7」を持ってると、毎日ちょっと楽しくなることを目指しました。普段ご覧になられているコンテンツが劇的に変わるというわけではないのですが、こっちで見たほうがちょっといい、ちょっとわくわくできる、という商品を作っていきたいですね。

――価格は販売元から、とのことだが、「AQUOS R7」の開発において価格を左右する要因について、どういったものがあるか。一般的に、円安、半導体不足、インフレ傾向などが指摘されている。

小林氏
 円安や、部材価格の高騰、半導体不足など、さまざまな影響があり、価格は上昇トレンドというのは、その通りかと思います。

 「AQUOS R7」については、5Gのミリ波への対応や、ストレージの倍増(128GB→256GB)、カメラの高性能化といったあたりが(価格を左右する要因として)ポイントになると思います。とはいえ、私どもは販売元ではなく、最終的な価格は、販売元が決められるものと考えています。

――先代モデルはSIMフリー版というか、オープンマーケット版があった。「AQUOS R7」ではどう考えているのか。

小林氏
 SIMフリー版は、ニーズや市場動向を踏まえて検討しているところです。

――「AQUOS R7」の海外展開の予定は?

中野氏
 「AQUOS R6」発表時に海外でも大きな反響がありました。「AQUOS R7」も同じように評価していただけると思っていますが、現段階で海外展開の具体的な話はないのですが、検討していきたいです。

中野氏

――Leitz Phone 1の後継モデルについて、何らかコメントは?

楠田氏
 シャープのAQUOSブランドではなく、ライカさんの商品になりますので、コメントは控えます。

楠田氏

――半導体不足の影響はどうか。

中野氏
 「AQUOS R7」の開発にあたっては影響はありません。

 ただ、半導体不足は、さまざまなところで取り上げられており、かなり長期間に渡ってデバイスの不安定な供給が続いていると認識しています。

 ごく一部で商品が供給できなくなることもありましたが、足元では回復してきました。自動車業界などでいろんな問題があるとのことですが、回復傾向にあると。ただ、中国でのロックダウンの影響なども含め、物流・供給、いろんな影響が出てくると考えており、それらを含めて対処していきます。

――生産量はどの程度か。

中野氏
 販売数量にあわせて生産量を調整するものでして、そのあたりの回答はご容赦ください。

処理能力について

――Snapdragon 8 Gen 1というチップセットを搭載している。なにか、動作に上限を設けるような仕組みを入れているのか。それ以外で性能がアップした部分は?

楠田氏
 スペックとしては、「Snapdragon 8 Gen 1」を提供されるクアルコムからの数値や、アプリからの数値などさまざまありますが、今回、シャープとして示しているものは、実利用に近い環境での数字です。

 特に上限をかけているわけではありません。従来機種同様に、利用シーンに応じて、発熱などのバランスを取りながら駆動させています。

 「AQUOS wish2」については、CPUのアップデートが先代モデルとの主な違いです。ソーシャルグッドというコンセプトにもとづいて、個装箱などスマホ本体以外については、使用する材料の削減など細かい改善を図っています。

――オーディオでは、Snapdragon Soundに対応しているのか?

楠田氏
 はい、対応しています。

AQUOS R7のカメラについて

――「AQUOS R7」のカメラについて、ライカとの協業状況は、「AQUOS R6」とどう変化したのか。もし同等であれば、ソフトウェア面での取り組みは「AQUOS R6」に反映されるのか。

楠田氏
 基本的にはカメラ画質の監修ということで、ライカとの協業内容に変わりはありません。

 ソフトウェア面での進化については、今回、特にポートレート撮影など、人物撮影にフォーカスしています。RAWデータを複数枚合成して、ダイナミックレンジの広い撮影ができるとか、人物のトラッキングで、顔、瞳を検知してオートフォーカスを合わせ続けるといった点の進化があります。

小林氏
 それらのソフトウェアの進化は、ハードウェアに依存するところも多いのですが、実は「AQUOS R6」でも、ソフトウェアのバージョンアップで、ユーザーインターフェイス(UI)の最適化による高速な連続撮影といったものは、すでに追加を進めています。進化ポイントの一部は、「R7」と「R6」で共有されていることになります。

 ただ、ポートレート撮影については、チップセットのスペックが変わっており、そのまま「R6」に追加することは難しいと考えています。

――1インチの全面位相差AFということだが、発熱や筐体設計の工夫などを教えてほしい。

楠田氏
 発熱も大きな課題のひとつでした。これまでも、パフォーマンスを持続するというコンセプトで、放熱設計をしていましたが、それらのノウハウを取り込んでいます。

 たとえば、手にする部分には熱が伝わらないようにするですとか、カメラの下の部分に熱を拡散し逃しやすいよう形状を工夫したグラファイトシートを入れたりしています。

――ライカとの協業は、「AQUOS R6」の際と同等の形式とのことだが、内容としてはどのような変化があったのか。

楠田氏
 2年目ならではの変化ですね。「AQUOS R6」開発時は、彼らの話を理解するところがなかなか難しいところがありました。今回2年目ということで、彼らの思想を汲み取った画質調整ができたかなと思います。

 またもうひとつの変化として、今回、本体に刻印されているブランド名が「ライカ(Leica)」から「ライツ(Leitz)」に変わりました。これは、ライカさん側のブランド戦略の見直しによるものです。創業者の名前から、ブランドビジョンを強調し、統一化を図っていくという考え方が反映されています。

――「AQUOS R7」のイメージセンサーは新型とのことだが、どういったものか。

小林氏
 「AQUOS R6」では、デジカメ用のセンサーと表現していましたが、今回は、デジカメ用、スマホ用という概念はあまり持っていません。

 たとえば、クアッドベイヤーコーディング(Quad Bayer Coding、QBC)やOcta PD AFが搭載されています。いわば、スマートフォン寄りの技術を、デジタルカメラ用センサーに取り入れたような感じです。スマホ用、デジカメ用という区分けをしづらい、新しいセンサーです。

 今回、これは新規デザインで、独自のセンサーで、サプライヤーさんがどこに販売されるか、憶測でコメントするのは避けます。

 カメラモジュール全体としては、ズミクロンのレンズを含め、ライカさんの協力のもと、シャープが作っています。

動画撮影

――8Kでの動画撮影のファイルサイズは?

楠田氏
 ビットレートは76Mbps程度で、1分の映像で500~600MBほどになります。動画を撮る方は、1分が平均的な長さで、問題ないレベルかと考えています。

小林氏
 発熱や容量の関係などもあって、8Kは1分で録画が停止する仕様になっています。

――この場面だけ、高画質で記録したいという使い方を想定しているのか。

楠田氏
 はいそうです。カメラのモードとしても、「8Kモード」という特別なモードを設けており、そこから撮影できるようになっています。景色など明るいシーンが、よりきれいに記録できると思います。

――「AQUOS R7」の動画撮影で、4K、あるいは8KサイズでもHDRで撮影できるのか。ディスプレイはドルビービジョン(Dolby Vision)対応だが、自分で撮って、そのディスプレイで楽しめるのか。

楠田氏
 ディスプレイは対応しているのですが、4K、8KでのHDRは撮影しておらず、SDRになります。

AQUOS R7のディスプレイ

――OLEDはどこで製造されたものか。他のデバイスはどうか。

中野氏
 当社の日本国内で生産しています。我々の持つ技術をフルに活用しているデバイスです。

――「AQUOS R6」では、端に曲面を用いたエッジディスプレイだが、「AQUOS R7」ではフラットなディスプレイになっている。

楠田氏
 デザインの考え方の違いです。「AQUOS R6」では、曲面でより狭額縁に見せるというコンセプトのデザインでした。

 今回は、フロントパネルだけではなく側面もフラットにして、全体的にシンプルなデザインというコンセプトです。

 「AQUOS R6」 に対して、少なからず、「側面の操作がしづらい」という声もありました。今回は、歪んで見えない、ということがなく、ちゃんとタッチできるというメリットは出てくるかなと考えています。

――「AQUOS R7」のPRO IGZO OLEDディスプレイで、アイドリングストップがさらに進化したとのことだが、もう少し具体的に教えてほしい。

楠田氏
 周波数については、従来から1Hz駆動に対応しており、大きな違いはありません。ただ、頻度を上げており、休むタイミングをさらに増やしたということになります。

 画面スクロールが止まった瞬間にすぐ休み、スクロールが始まればすぐ高速で動く。そのあたりのアルゴリズムをブラッシュアップさせています。

 とはいえ、利用シーン、使い方としてバッテリーの持ちが変わってくるところがあり、数字での目安はありません。

AQUOS R7の通信について

――Sub6とミリ波を束ねて高速通信できるという「デュアルコネクティビティ」が利用できる時期は、キャリア側の対応次第であり、シャープ側からは公開できないということか。

小林氏
 デュアルコネクティビティについては、実ネットワークでいつ使えるようになるかというのは、販売元(の携帯電話会社)とともに展開していくという形になります。本日時点では、申し上げることができないという状況になります。

――「AQUOS R7」の対応周波数は?

小林氏
 基本的には(NTTドコモ版とソフトバンク版で)周波数の対応に差異はございません。ですので、プラチナバンドのみならず、基本的には全バンドに対応している商品になっています。

 メーカーとしては、やみくもに全て対応するという考え方ではなく、経済合理性の範囲内で考えています。たとえば、認証開発や、 ひとつひとつの部材などです。これはバンドごとに、部品が追加されるためです。それらを踏まえ、経済合理性で、最適に判断している状況です。

 総務省さんの中で、いろいろとヒアリングが実施されています。シャープもヒアリング対象であり、私どもの見解は、そこで取りまとめられて、別途、開示されていくものと思います。この場での説明は割愛させてください。

――ドコモ版もeSIMに対応している。デュアルSIMについてシャープとしての考えは?

楠田氏
 キャリアさんと会話しながら、その意向を踏まえて対応しています。

――5G SA(スタンドアロン)対応について教えてほしい。なぜこのタイミングでの対応なのか。またシャープが5G SAに期待するポイントは? ネットワークスライシングで安定的なライブ配信ができるといった実験もあるが、どうか。

小林氏
 サービス面とチップセットなど、多くの要素が(5G SAの導入時期である)2022年の夏にあわせてきたところがあります。

 究極的には、SAのほうが、5Gの無線資源を効率よく使えるのは事実ですので、シャープとしてはできるだけ早く対応するという方針です。

 ネットワークスライシングについても、シャープでも試作や研究開発を進めています。

 たとえば法人用途として、シャッター通りでの監視カメラのような使い方では、ネットワークスライシングが有効になり得ると思っています。

 5Gでの動画視聴も増えており、そこに帯域を分けるという使い方は極めて自然に生み出されていくと期待しています。ネットワークスライシングはかなり将来性のある技術だと思い、積極的に取り組みたいです。

AQUOS wish2について

――AQUOS wish2は、先代モデルが2021年暮れに登場していた。短期間での登場となるが、その理由は? また低価格モデルはwishシリーズで展開されることになるのか。

小林氏
 確かに約半年での新モデルになりますが、投入タイミングについては、大きな理由はなく、適切なタイミングでということになる。

 ただ、強いて言えば、若干、半導体不足の影響などもあり、商品戦略上、より多くのお客様へ届けていく選択をしているということになります。

 また低価格モデルについては、従来提供していた「AQUOS sense」シリーズが非常にスタンダードなモデルとして大きな支持をいただいています。そこを大きく変える想定はしていません。

 最安モデルとしては「wish」ということになるかもしれませんが、「sense」がスタンダードゾーンの商品、王道の商品になるかと思います。

――senseシリーズをもう少し価格を上げて、性能を強化する考えは?

小林氏
 将来については、ここでは、すいません、回答を控えたいです。

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