ケータイ用語の基礎知識

第988回:一体何をするところなの? ゲームとは違う? 最近よく聞く「メタバース」とは

現代を代表する三大バズワードのひとつ「メタバース」

 メタバースとは、コンピュータで作られた、バーチャルでのコミュニケーションや仕事をする、空間サービスのことです。

 メタバース(metaverse)という名前は、英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせ作られた造語から来ています。VR(仮想現実)で作り上げたひとつの世界・宇宙といえばいいでしょうか。

 語源は、ニール・スティーヴンスンが1992年に発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」で登場する、架空の仮想空間サービスの名前でした。それが転じて、現在では、さまざまな仮想空間サービスの総称として使われています。

 SNS事業を手がけていたフェイスブックが、メタバース事業を手がけることから社名を“Meta”に変更するなど、現在非常に流行している用語のひとつです。2022年現在、「Web3」「NFT」などと並んでバズワードの代表ともいえる存在となっています。

メタバースの定義は「アバターを介しXRをメインにした、次世代のコミュニケーションプラットフォーム」

 ある意味仮想空間サービスであれば「メタバース」であるのは正しいのですが、たとえば現代よりも古い、たとえば2000年代流行しそうになった仮想空間「Second Life」などもメタバースに含まれるのでしょうか?

 「メタバース」と呼ばれる仮想空間サービスでは、VR用ゴーグルを使用して仮想空間の中にいるような視覚体験を得ることが可能になり、ハンドコントローラーで身振りや手ぶりなど、より自由に操作することが可能になりました。また、パソコンやスマートフォンの能力向上によりVR・ARの再生も非常に快適なモノになってきています。

 その意味では「Second Life」などの古いモノはメタバースの範疇からは外れそうです。ただ、その一方で人によっては「Second Life」なども含める、としている人もいてメタバースの定義は今の所かなり曖昧といえるでしょう。

 なお、メタの「Horizon Worlds」のようにVRゴーグル必須のプラットフォームも存在しますが、多くのメタバースプラットフォームでは、スマートフォンやパソコンのような「VR専用でないデバイス」も使えます。その場合は、平面スクリーンで仮想空間が表現され、VRゴーグルほどではないとしてもそれなりの没入体験を得ることができるようになっています。

 また、メタバースでは、参加する人が自分の化身(アバター)を作成し、3Dの仮想空間に入り込んで、人と語ったり、遊んだり、また会議などを行います。つまり、メタバースは、定義としては、アバターを介しXRをメインにした、次世代のコミュニケーションプラットフォームを指すとでも言えば良いでしょうか。

携帯事業者・メーカー各社のメタバース注力度合いは

 現在、携帯電話事業者やメーカー各社などもさまざまなメタバース関連プロジェクトを進行または立ち上げようとしています。

 たとえば、よく知られているものとしては、KDDIなどが手掛ける「バーチャル渋谷」や「バーチャル大阪」といった都市連動型メタバースがあります。バーチャルSNSであるcluster(クラスター)がプラットフォームとなっていて、デジタルツイン再現(本当の空間にある情報をIoTなどで集め、仮想空間上でそれを再現すること)で作られた街になっています。

 ドコモなどは、2021年8月の「バーチャルマーケット6」の企業出展で、VRマンガや、アバター販売などを行いました。これは、バーチャル空間上にある会場で、アバターなどのさまざまな3Dアイテムや、リアル商品(洋服、パソコン、飲食物など)を売り買いできる、VRマーケットです。

 あるいは、グローバルだとMWC(Mobile World Congress)2022の場で、台湾のHTCがメタバースに注力したハイエンドAndroidスマートフォンを2022年4月にも発表する予定、という報道もありました。

メタバースの今後は……

 メタバースの応用例としては、たとえばこういった用途で普及が進む可能性もあるのではないでしょうか。

ゲーム

 最も最初にメタバースが活用されるのが、ゲームでしょう。

 もともとアバターを使ってフィールド(ゲーム世界)を歩き回っていたわけですから、心理的障壁も低いと考えられます。実際に「フォートナイト」というタイトルなどは既に「メタバース」に近い領域にいる、と主張する人達も多くいます。

オンラインミーティング・デスクワーク

 オンラインと言ってもカメラで自分が映し出されるのではなく、仮想空間にアバターなどの姿で表示され、そこで話し合いをするわけです。

 VRゴーグルなどがあれば、自分は自分の部屋にいるはずなのに、あたかも会議室にいたり、仕事場にいる感覚になれるでしょう。

バーチャルライブ

 これまで録画のライブ映像などでは、同じ時間空間を共にしている「共有感覚」を得られることはありませんでした。

 デジタルツインを応用することで例えば、会場の臨場感などを再現して、ライブとバーチャルと両方で盛り上がるライブ会場などもできるでしょう。

 こうしたことに加えて、同じくバズワード化している「NFT」を利用した経済活動の場としても利用されることが多いので、NFTバブルの間は、収益に群がる人々の場としても利用されるかもしれません。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)