ケータイ用語の基礎知識

第987回:ケータイ回線で固定電話――工事無しで電話が引ける? メリット・デメリットとは

3事業者から出そろったモバイル回線を使う固定電話

 2022年3月下旬からNTTドコモが「homeでんわ」というサービスを開始することを発表しました。homeでんわは、ドコモの携帯電話回線を利用しながら、東京都であれば「03」など市外局番から始まる固定電話番号(0AB~J番号)の受発信ができるサービスです。

 ユーザーが使用している「固定電話機」と専用機種「homeでんわ HP01」の間のみ電話線でつなぐことで、屋外からの回線引き込み工事などをすることなく、簡単に固定電話の利用が開始できます。

ドコモの「homeでんわ HP01」

 これで、この種の、銅線や光ファイバーではなく、経路に携帯電話の回線を使って固定電話向けの回線を提供するサービスがドコモ、KDDI、ソフトバンクと3つの携帯電話事業者から提供されることになります。

 このようなモバイル回線を使用した固定電話では、使用する電話番号は、固定電話からの切り替えの場合、NTT西日本・NTT東日本で発行した加入権のある電話番号や、ひかり電話の電話番号がそのまま変わらずに利用可能です。新規で使用する場合は、新しい固定電話(0AB~J番号)の番号が発行されます。

ソフトバンクの「でんわユニット」

仕組みはどうなっているの? メリット・デメリットは

 モバイル回線を使用した固定電話の仕組みは、基本的にはスマートフォンでの通話のそれと同じです。

 スマートフォンが基地局と電波をやりとりして通話を実現しているのと同様の仕組みでユニット端末が電波をやりとり。それを接続した固定電話に音声として伝える/音声をユニット端末から電波に乗せることで通話を行うわけです。

 メリットとして、携帯電話の電波が届き、コンセントがあれば宅内のどこでも使用することができることが挙げられます。「固定」電話と言いながら電話機をジャックの近くに置く必然性はないので、どこにでも置くことができるわけです。

 また、配線工事が不要ということから、使用したい日から即日使える、というのもメリットに挙げられるでしょう。

ユーザーが使用している「固定電話機」と専用機種「homeでんわ HP01」の間のみ電話線でつなぐだけ、工事不要で、簡単に固定電話の利用が開始できる「homeでんわ」。なお、コンセントにつなぐのは単に電源を供給するためで、通信とは関係がない(ドコモ報道発表資料より)

 これまでの固定電話回線から切り替える場合、電話機は新しいものを買う必要はなく、これまで使用していたものをそのまま利用できるのも大きな利点と言えそうです。

 デメリットとしては、いくつかのサービスでは利用できない(ガス安心システム・あんしん電話・家庭用ホームエレベーター・ホームセキュリティードアホン)、通常の電話回線サービスから乗り換えると、ADSLなども利用できなくなってしまうという点が挙げられます。

 また、ファックスに関しては、送受信したデータを一度センターで預かる「蓄積型FAX」となっており、送信時に相手の電話番号の前に「0009」を押す必要があるなど、わずかですが、通常の有線固定電話とは異なる操作が必要な部分もないわけではありません。

 ちなみに通常の電話の場合、相手先には03-などから始まる固定電話の番号が伝えられますが、モバイル回線を使用した固定電話では、緊急通報の場合は専用の電話番号(070/080/090~)が通知されます。

 また、全国の警察機関(110番)・海上保安庁(118番)と多くの消防機関(119番)では、緊急通報位置通知 受信システムが導入されており、ここに電話した場合はおおよその発信場所が通知されるようになっています。この機能は、固定電話ではなく、携帯電話・スマートフォンとほぼ同等だと思っておけばいいでしょう。

 なお、各社とも現在のユニット端末の通信は4G LTEで通話にはVoLTEを使用しており、2022年現在5G対応のユニットは出ていません。

各社のホーム電話の概要

ドコモ homeでんわ
  • サービス開始は2022年3月下旬から。
  • 専用のLTE端末「homeでんわ HP01」をユニット端末として使います。
  • 月額基本料金は「homeでんわ ライト」月額1078円、「homeでんわ ベーシック」2178円
  • ドコモのスマートフォンなどを契約の場合「homeでんわ セット割」で「homeでんわ ライト」「homeでんわ ベーシック」いずれも月額550円に割引。家族内の携帯電話やhomeでんわまたはビジネスグループ内の通話は無料
KDDI ホームプラス電話
2014年にスタート。3事業者の中では最も早くサービスを開始
月額基本利用料は1463円
KDDI電話 auで着信確認無料
直前着信番号拒否機能は申し込み不要(無料)
ケーブルプラス電話、J:COM PHONE プラス向けの通話は無料
ソフトバンク おうちのでんわ
  • サービス開始は2017年
  • 月額基本料は980円、Softbank Air、もしくはソフトバンク・ワイモバイル・LINEMOユーザーは500円
  • 通話料金は全国一律3分8.789円
  • 携帯電話あての通話はソフトバンク携帯電話へは無料(無料のホワイトコール24への申し込みが必要)、それ以外は1分17.6円
  • 「おうちのでんわ」用端末「でんわユニット/1.1」はSoftBankAirのAirターミナル2/3では積み重ねて使用することも可能
大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)