石川温の「スマホ業界 Watch」
KDDIが通信品質で世界トップ評価――Opensignalに聞く、その理由
2026年3月27日 00:00
ネットワーク品質調査会社のOpensignalは今年2月、「グローバル・モバイル・ネットワーク・エクスペリエンス・アワード2026」を発表。KDDI(au)が8部門中4部門で世界1位を獲得した。
3月上旬にスペイン・バルセロナで開催された世界最大級の通信関連見本市「MWC26」会場において、トロフィーの授与式が行われた。
KDDI コア技術統括本部の古畑和弘ノード技術本部長は「我々が持つデータのなかで、ユーザー体験がどうならば改善されていくか、さまざまな角度で分析し、試行錯誤を繰り返してきた。その結果が、外部の評価につながったのではないか」と振り返る。
これまで日本は世界でもトップクラスの通信品質だと言われてきた。しかし、OpensignalのAPAC地域担当バイスプレジデントであるロブ・ラーナー氏は「必ずしも日本の5Gネットワークにおける通信速度は世界をリードしているわけではない」と語る。
その背景にあるのが「衛星通信との干渉」だ。
日本で5Gがスタートした際、5Gで使う周波数帯が、衛星で使われている周波数帯と干渉すると言われていた。そのため、5Gの基地局が思うように展開できず、基地局を設置しても、干渉しないよう、電波を遠くに飛ばさないようにするなど、かなり制限があった上での展開となってしまっていた。
最近になって、ようやく干渉問題も解決し、想定していた出力で5Gの電波を吹けるようになった。しかし、この調整に時間を要し、日本の5G品質は世界から若干遅れてしまうことになったのだ。
ただ、KDDIは衛星と干渉している間も地道に5Gの基地局の建設を進めてきた。干渉しなくなった場所ができたところで、一気に5Gの出力を上げることで、5Gの面展開を図り、通信品質を向上させてきたのだった。
今回、KDDIは世界のキャリアの中でも高い評価を得ているが、実際のところ、KDDIとソフトバンクがかなり僅差で戦っているというのが現状だ。
ロブ・ラーナー氏は「5Gで世界には出遅れたが、日本のネットワークは信頼性と一貫性に優れており、ゲームや音声通話、動画視聴において最高水準の体験を提供できている。特に多くのユーザーは『最高速度』を求めているのではなく『安定してつながること』を求めている。その点において、この2社は世界的に見ても高いレベルを提供している」と分析する。
KDDIとソフトバンクは5Gの面展開に成功している。全国で面的にカバーできたことで、次は5G SAの投資にシフトしつつある。KDDIでは5G SAの人口カバー率が96%を達成。ソフトバンクも5G SAのエリアを着実に広げている。
Opensignalでは昨年、日本国内での5G SA展開での評価も行った。
KDDIがすべての指標で高いパフォーマンスを発揮し、信頼性エクスペリエンスにおいてはソフトバンクも肩を並べた。
一方で、NTTドコモは5G SAの基地局が少なく、カバレッジが限定的ということで、比較対象から外された。楽天モバイルも5G SAを未展開ということで調査対象となっていない。
ロブ・ラーナー氏は「NTTドコモの場合、5G SAの提供エリアが狭く、測定できたデータ数がごくわずかであった。データが少ない状態で評価を行うと、誤差が大きくなってしまう。NTTドコモとも協議を行い、データを公表することは理にかなっていないと双方で合意して、掲載を見送った」としている。
KDDIとソフトバンクのネットワーク品質が優れているのは、自社でユーザー体感の調査を行い、地道に改善を続けてきたという効果が大きいのだろう。
また、かつてソフトバンクの担当者に聞いた時は「イー・モバイルやウィルコムなど、買収や救済した会社のネットワークを融合させてきた経験が生きている」と語っていたこともあった。
KDDIとソフトバンクの共通点として筆者が仮説として持っていたのが、無線機器ベンダーの存在だ。2社は、エリクソンやノキアといったグローバルなベンダーから無線機器を調達している。
ロブ・ラーナー氏も「グローバルなベンダーを積極的に採用することで、彼らが持つ規模や革新性、他の国で培われた知見を自社のネットワークに活かすことができるのは大きい」と語る。
これまで国内のベンダーを中心に採用してきたNTTドコモも、最近になって、積極的に海外ベンダーを起用するようになってきた。
KDDIとソフトバンクに差をつけられているNTTドコモではあるが、他社に追いつこうと、ネットワーク戦略の見直しが急ピッチで行われているようだ。


