石川温の「スマホ業界 Watch」
Google台湾拠点を取材、「Pixel 10」開発の裏側と“Android版AirDrop”への本気度
2026年2月12日 00:00
ここ最近、日本国内でシェアを伸ばしているスマートフォンといえば、グーグル・Pixelだろう。4キャリア展開しているだけでなく、大量のテレビCMや代理店への支援など、他のメーカーではなかなか真似できない力技が目立つ印象がある。
ただ一方で、グーグルはメーカーとして「ものづくり」に真摯に向き合っている企業でもある。
実はグーグルは台湾にハードウェア関連のオフィスを設けており、世界40以上の国と地域から数千人規模のスタッフが働いている。
台湾は半導体などを手がけるメーカーも拠点を置いており、そうした企業との連携がしやすい土地とされている。ハードウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントのエルマー・ペン氏は「台湾のエンジニアリングチームはハードウェア、ソフトウェア、AIをシームレスに統合することで、スマートフォンに変革をもたらすことを目指している」と語る。
実際、Pixelのaシリーズは台湾オフィスがメインで開発を行っている。施設内には50以上のエンジニアリングラボがある。
Pixelが環境ノイズのなかでも正しく音を伝えられるか、マイクはキチンと音を拾えるか、衝撃に耐えられるか、水や尻ポケットに入れて座っても壊れないかなど、さまざまなチェックを行い、品質を高めている。
台湾オフィスでは、Pixelで採用する素材の耐性などを試験するだけでなく、Pixel 10 Pro Foldのヒンジ部分の設計なども行っている。実際、ヒンジのギアをなくすことで、耐水だけでなく防塵性能も確保できるようになったとしている。
iPhoneのAirDropとやり取りできるAndroidは拡大
また、ソフトウェア面での開発も担っており、昨年登場したPixel 10シリーズからiPhoneにAirDropできる機能はこの台湾オフィスで開発されたという。
Androidプラットフォームのエンジニアリング担当バイスプレジデントのエリック・カイ氏は「iPhoneとAirDropできるQuick Shareは今年、多くのデバイスに拡大するだろう。そのためにパートナー企業と協力してエコシステムの拡大に努めている。近いうちにエキサイティングな発表ができるだろう」と胸を張った。
Pixelエコシステム・プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのヴェンカット・ラパカ氏は「Pixelは最高のグーグル体験をいち早くユーザーに届けることをミッションとしている」と語る。
グーグルとしては開発した機能やサービスをいち早くPixelに搭載しつつ、他のAndroidスマートフォンにも拡大することで、Android全体の魅力を高めていくスタンスだ。
まずはグーグルがハードウェア、ソフトウェア、そしてAIにおいて、フルスタックの投資、開発を行い、他のメーカーをリードしていくというわけだ。
スマホのAIは先回りしてくれる提案型へ
ここ数年、スマホはAI機能の競争に突入している。たとえば、中国ではZTEが「AIスマホ」として、ユーザーが「天気を調べて、親にメッセージを送っておいて」と話しかけるだけで、天気アプリを起動し、天気予報を調べ、その情報をメッセージアプリで貼り付け、親に送るところまでやる、といったAIがすでに試験的ではあるが搭載されている。
もはや、ユーザーがアプリをわざわざ起動し、情報を確認し、コピーして、他のアプリを起動してペーストするなんて面倒くさいことはしなくてよくなっているのだ。こうした、スマホの操作体験の進化は昨年のMWCで見られたが、いよいよ今年、本格的に搭載するメーカーが増えてきそうだ。
では、グーグル自体は今年、スマホのAIをどのような方向性に持っていくつもりなのだろうか。
エリック・カイ氏は「これまでは『かこって検索』のようにユーザーの体験を向上させるツールであった。しかし、2026年は、ユーザーがAIを操作するのではなく、デバイスがユーザーに提案するプロアクティブな要素が増えるだろう」と予見する。
プロアクティブとは、将来起こりそうな問題やニーズを先読みして、自ら進んで先手を打って行動することを指す。つまり、スマホがユーザーのことを先回りして、勝手に動いてくれるようになるというわけだ。
たとえば、AIがスマホの中にあるスケジュールデータと現在地を把握し、次の予定に遅刻しそうになったら「メンバーに遅れるというメッセージを送りましょうか」とユーザーに提案してくれるようになるという。
こうした処理を実現するのに欠かせないのが、オンデバイスAIとクラウドAIのハイブリッド運用だ。オンデバイスAIはプライバシーに関わるデータや即応性が求められる処理を行う。一方で、クラウドAIは最新の大規模モデルやスーパーコンピューター並みの計算を処理する。
エリック・カイ氏は「グーグルはオンデバイスAIとクラウドAIを動的に使い分ける高度なアルゴリズムを研究、開発している」と語る。
Tensorチップといったハードウェア、さらにAndroidというソフトウェア、Geminiというオンデバイスとクラウドで動くAIに積極的に投資しているグーグルだからこそ、実現できる世界観なのかもしれない。
先日、グーグルはAndroidにGeminiを搭載するだけでなく、アップルにもGeminiのモデルを提供すると発表した。アップルがグーグル・Geminiを頼らざるを得ないのは、クラウドのAIを自社で持っていないという点が大きい。
アップルが何年もクラウドAIを自社で開発できないとなると、今後、数年は「グーグル・Gemini無双」の時代が続くかもしれない。




