石川温の「スマホ業界 Watch」
AIが拓くスマホ新時代:Google I/O 2025「Project Astra」「Android XR」の衝撃と「話す」インターフェースの未来
2025年5月23日 00:00
2025年5月20日(現地時間)に行われたグーグルの開発者向けイベント「Google I/O 2025」。同社の生成AI「Gemini」の進化など、グーグルがAIに本気になっている様子がうかがえた。もちろん、すでに数年前からグーグルはAIに注力している。昨年のGoogle I/Oにおける基調講演もGemini一色であった。
昨年のGoogle I/Oで、Androidエコシステム担当プレジデントのSameer Samat氏に話を聞く機会があったが「AndroidはGoogle I/Oとは別に発表する機会を設けないといけないね」と語っていた。
今年になって、Google I/O直前の5月14日に「The Android Show: I/O Edition」が配信された。グーグルとしてはAndroidのアップデートも発表したいが、もはやGoogle I/Oの基調講演では時間を割けそうにないということで、別枠が設けられたようだ。
Google I/O 2025では「Gemini Live Camera」がすべてのAndroidとiOSに提供されると発表。
また、数週間以内にGoogleのアプリと連携するという。例えば、GmailとのやりとりからGoogleカレンダーに日程を反映してくれる。Google マップ、Google カレンダー、Google ToDo リスト、Google Keepと連携し、今後、さらに連携する機能が増えるという。
「Project Astra」の新たなデモ映像も公開された。
自転車を修理しようとするユーザーがスマートフォンをテーブルの上におき、スマートフォンに向かって、オンラインで自転車の取扱説明書を探させたり、直すべき場所のページまでスクロールさせたり、修理に必要なパーツは何かを探させたりしていた。
マイクで音声を理解し、カメラで写っているものを理解して返答する、というのはGemini Live Cameraでも提供済みだ。今回のProject Astraでは、スマホの画面を自ら操作し、ページをスクロールする。また、自転車を直すためにネジが必要だとわかると、近所の自転車店に電話して、在庫の確認もしてくれるのだ。
かつての「オッケー、グーグル」と話しかけても、まともに相手をしてくれず、惨めな思いをしたのは何だったのだろうか。
Project Astraによって、スマートフォンは相談相手となり、勝手に自分でアプリを操作して、代わりに電話をかけて、注文までしてくれる相棒にまで進化する可能性が示されたのだ。
このデモを見て、Nothing Technologyの創業者であるカール・ペイ氏の発言を思い出した。今年4月にインタビューした際、「いずれアプリストアは役割を終える。アプリはユーザーとの接点ではなくなる。OSこそがユーザー接点であり、だからこそNothingは独自OSに取り組み続けているのだ」と語っていた。
確かにProject Astraを見ていると、もはやユーザーがスマホの画面を触り、いちいちアプリを起動するなんてことはしない。やりたいこと、調べたいことはすべてスマホに音声でお願いする時代がもうすぐやってくるのだ。
そんなことを思っていたら、OpenAIが元アップルのデザイナーであるジョニー・アイブ氏とタッグを組んで、スマートフォンに変わるデバイスを作るというニュースが飛び込んできた。
彼らが具体的にどんなデバイスを作るのかは明らかにされていないが、一部のメディアに対して、アルトマン氏は「音声がカギになる」と語っていたという。
アルトマン氏とアイブ氏は、生成AIによって、デバイスに対して話しかけ、操作をしていくデバイスを模索しているようだ。
今回、Google I/Oでは、Android XRとして眼鏡型のデバイスを開発していることが発表された。眼鏡のレンズ部分に文字情報が表示されるというものだが、処理をこなすのは無線でつながったスマートフォンだ。
スマートグラスやApple Vision Proのようなデバイスが登場しているものの、携帯性や画面の認識性においては、スマートフォンに置き換わる存在になり得ていない。
やはり、「片手に収まる携帯性」「明るく見やすい視認性」というスマートフォンの使い勝手を超えるデバイスというのはなかなか出てきそうにない。
今後しばらくは、デバイスのカタチはスマホのような「画面」のままなのではないか。
一方、操作性においては数年後、「スマホに話しかける」のが当たり前になるような気もするが、一方で「人前で声を出して操作するなんて無理」という拒否反応も理解できる。
スマホ業界のプラットフォーマーやビジョナリストたちが「将来的にアプリはなくなる」「音声操作がメインになる」と語る中、これから数年は、生成AIによってスマートフォンのOSやカタチなどが大きく変わるターニングポイントにさしかかっているのかもしれない。