石川温の「スマホ業界 Watch」
「iPhone 16e」はモデムチップ「C1」を搭載、実機で試すドコモ回線での使い心地は?
2025年2月27日 11:00
2月28日に発売となるアップル・iPhone 16eを数日間、試用する機会を得た。
カメラを1つにし、MagSafeも廃止するなど、部材コストを抑えることで、価格を下げたiPhone 16シリーズのなかでのエントリーモデルとなる。
そんななか、アップルの新しい試みとして注目されたのが、同社が開発したモデム「C1」だ。
これまでアップルは長年、独自にセルラーモデムを開発してきたとされている。かつてはiPhoneにインテル製チップを搭載していたが、性能的にいまいちで5G対応にも時間がかっていたため、クアルコムに切り替えたという経緯がある。
そのインテルは、元々はドイツのインフィニオンが所有する事業であった。iPhoneでは初期からインフィニオンのモデムチップを採用。インテルに事業が移管した後も採用が続いてきた。クアルコムとの併用が続くなか、アップルとインテルは特許紛争に突入したこともあった。
アップルとしては「脱クアルコム」を目論んできたが、5Gを導入する上では、クアルコムの優位性を認めざるを得なく、結果、クアルコム製モデムに一本化された。
一方、大事な顧客であったアップルを失ったインテルはモデム事業を断念。結果、インテルのモデム事業はアップルの手に渡ったのであった。
それが2019年の話であり、5年を経過し、ようやくアップルは自前でモデムチップ「C1」を完成させたというわけだ。
アップルによればC1は世界55カ国以上で180以上のキャリアでネットワーク試験を行っているという。ただ、気になったのが、日本で導入される「A3409」においては、Band11やBand21に対応していないという点だ。
Band11やBand21は1.5GHz帯とされ、Band11はソフトバンクとKDDI、Band21はNTTドコモが所有している。
総務省の資料によれば、NTTドコモではBand21に対して、全体トラフィックの14%ほどが流れているようだ。
では、実際にiPhone 16eをNTTドコモの回線につなぐとどうなるのか。
iPhone 16eと個人所有のiPhone 16 ProにそれぞれahamoのSIMを指して、街中を歩いてみた。
自宅や最寄り駅前では、時々、iPhone 16 ProでBand21を受信する様子がうかがえた。しかし、iPhone 16eでは当然のことながら、Band 21の表示は出ず、Band1やBand3などをメインに受信する。
この際、「Band1やBand3だけでトラフィックが混雑していたら、ネットワークの体感は落ちるのでは」と不安に感じたが、実際は、5Gのn79もつかんでいた。
ネットワーク速度調査も何度もしてみたが、iPhone 16eの方が速いときもあれば、iPhone 16 Proの方が速いこともあった。つまり、どちらかが突出して速い、もしくは遅いということもなく、「互角」といえる結果であった。
Band 21に対応していないからといって、4Gにつなぎっぱなしであっても通信速度が極端に遅くなるということもなかった。結構な頻度で5Gにつなぎにいくので、iPhone 16eよりも体感が落ちるということは特に感じなかった。
もちろん、昨今、NTTドコモ自体のネットワーク品質が若干、悪いこともあり、データがうまく流れないときもあったが、それはiPhone 16 Proでも全く同じであった。
ただ、今回チェックできたのは、あくまで静止した場所での検証であり、必ずしも猛烈に混雑している場所でもなかった。今後、移動中の通信など、様々な場所での検証を続けていこうと考えている。
iPhone 16eは「エントリー版」
今回、アップルはiPhone SEの後継機種ではなく、iPhone 16eというように、前年9月に出したフラグシップモデルの「エントリー版」という位置づけを狙ってきた。おそらく、グーグル・Pixelシリーズの「a」に近い考えなのだろう。
実際、iPhone 16eはカメラが一つしか無く、実際に使ってみると「超広角があるといいんだけど」とか、いざ、就寝時に充電しようとすると「MagSafeがないから、ワイヤレス充電は失敗しそうだからUSB-Cにしておこう」とか、「UWBがないからAirTagが不便」とか、ちょっとした不満を感じるのは事実だ。
やはり、フラグシップモデルから乗り換えようとすると、どうしても無い物ねだりをしたくなってくる。