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住信SBIネット銀が「ドコモSMTBネット銀行」へ、ドコモと住信が目指す金融エコシステムとは
2025年12月19日 20:30
NTTドコモと三井住友信託銀行、住信SBIネット銀行は19日、住信SBIネット銀行の社名変更や協業施策を発表した。より出資元(ドコモと三井住友信託銀行)がわかるよう“ドコモ”と“SMTB”を冠した銀行名を「ドコモSMTBネット銀行」に変更し、2社との連携が強化されるほか、AIを活用した新サービスを2026年以降に順次提供する。
「ドコモSMTBネット銀行」への社名変更と資本再編
住信SBIネット銀行は、2026年8月3日に「ドコモSMTBネット銀行」に社名を変更する。これは、2025年10月1日にドコモの連結子会社となったことで、ドコモと三井住友信託銀行による共同経営体制になったことを踏まえたもの。2社が相互に協力しネット銀行のさらなる成長に貢献する意思が盛り込まれたものだという。
ドコモ代表取締役社長の前田義晃氏は、「あえて奇をてらわない社名としたのは、ドコモと三井住友信託銀行が一丸となって経営にコミットし、新たな銀行のさらなる成長を目指す強い決意の証」と説明する。
社名変更に先立ち、12月25日には資本再編を進める。具体的には、ドコモが所有するネット銀行の普通株式の一部を三井住友信託銀行に譲渡するほか、ネット銀行は三井住友信託銀行を割当先とした第三者割当増資を実施し、三井住友信託銀行の出資比率を引き上げる。
これにより、ドコモと三井住友信託銀行の持株比率は55.37%:44.63%となる。なお、従前からの議決権比率は50%:50%のまま維持される。
不動産や資産の管理、継承で高い専門性を持つ三井住友信託銀行と、暮らしを支える幅広いサービスを提供し1億のユーザーと接点を持つドコモ、テクノロジーで利便性と安全性を両立したサービスを提供するネット銀行の3社それぞれの強みをかけ合わせることで「ユーザーが意識せず、日々の生活の中で金融サービスの恩恵を自然に受けられる」世界を目指すと前田氏は説明。ドコモの通信や暮らしのサービスと結びつくことで、さまざまな場面で自然にお得を実感でき、三井住友信託銀行が得意とする資産形成から将来設計まで人生の多彩な選択肢を提供することで、ユーザーの人生により長くより深く寄り添えるようになるとした。
ドコモから見たネット銀行を前田氏は「これからは、d NEOBANKがハブとなり、ドコモのあらゆるサービスにつながる。支払い口座の集約でさまざまな手続きが簡略化され、金融サービスにおけるシームレスな顧客体験が提供できるようになる」と語り、通信とともに金融事業に重きを置く姿勢を示した。
暮らしと金融の境目のない未来
住信SBIネット銀行代表取締役社長の円山法昭氏は、今後の取り組みについて「還元施策の強化」と「多様なニーズへの対応」、「インビジブルバンキングの実現」の3点を注力領域として挙げる。
還元施策の強化
還元施策の強化は、主にドコモグループとのサービス連携を強化することにある。すでに10月から給与受取や対象サービスの利用、ドコモ回線のセット利用でdポイントが貯まる施策を実施しているが、今後はdカードの引き落とし口座の設定やd払いとの連携、マネックス証券との連携などを実施する。
また、ドコモサービスの利用状況に応じて住宅ローンの金利を優遇する施策を2026年8月から実施すると発表した。
多様なニーズへの対応
円山社長は、ユーザーニーズの分析にドコモのデータを活用すると説明。ポイントや決済、通信など生活に関わるデータと銀行のデータを組み合わせると、ユーザーに最適な商品を提供できるようになると話す。
また、ドコモグループのマネックス証券との連携サービスをスタートさせる。証券取引がスムーズに行える自動スイープ機能や、同時にネット銀行とマネックス証券の口座が開設できるようなサービスを2026年8月に開始する。
三井住友信託銀行との連携も強化し、ネット銀行とより一体的にサービスを提供すべく進化していくと説明。資産運用や不動産、遺言、相続などネット銀行では対応が難しい専門的なサービスを、三井住友信託銀行から提供していくと話し、一方でネット銀行の住宅ローンを三井住友信託銀行のユーザーにも提供するなど、両行の強みを互いに提供しあうことも考えていると円山社長は語る。
インビジブルバンキング
インビジブルバンキング(Invisible Banking)は、ユーザーが意識せずに日常の体験の1つに金融サービスが溶け込んでいる状態を差し、ネット銀行では、これをさまざまな企業との連携やAIにより推進していくという。
ネット銀行では、大きな顧客基盤を持った大企業向けに「フルバンキングBaaS」をおよそ30社の企業に提供し、サービスの拡大を進めている。先述の連携強化とともに進めることで、これを「スマートライフプラットフォーム」として進化させることができると円山氏は説明。つまり、強力なエコシステムとして、ユーザーを循環させ、さらなる規模の拡大を図るものになる。
NEOBANK Ai
それに向けての大きな取り組みの1つとして、円山社長はAIを活用した新サービス「NEOBANK Ai」を発表。エージェント型AIをスマートフォンアプリに導入することで、チャットや音声でお金の相談事や手続きが簡単にできるようになる。たとえば、デビットカードの利用状況の質問をしたり、レシート画像を送信して「この割り勘集金できてる?」と質問したりできる。デモ映像では、このほか「○○君に3000円送って」と音声で伝えるだけで銀行取引ができることが紹介された。
「NEOBANK Ai」について円山氏は「すでに完成している」「開発環境では完成している」とコメント。2026年2月からのベータテストを経て、2026年中の一般提供を目指す。円山氏は、「最終的には、OSやデバイス、アプリに依存しないAIサービスを実現できる」とコメント。“暮らしと金融の境目のない未来”を目指し、これらの取り組みを進めると語った。
三井住友信託銀行でもドコモとの連携を進める
三井住友信託銀行でも、ドコモとの連携を進める。具体的には、資産管理アプリ「スマートライフデザイナー」でポイントプログラムを2026年1月13日にスタート。貯まったポイントをdポイントに交換できる機能を2026年3月31日に提供する。
三井住友信託銀行代表取締役社長の大山一也氏は、dポイントの連携の狙いを「ユーザーの資産形成をより楽しく、より身近なものにすること」と説明。正しく資産運用を行うためには「今を知り、未来とのギャップを埋めていくこと」が必要だとし、家計簿やライフプランシミュレーション、将来的には金融教育などもできるアプリにするとし、これらアプリの利用状況に応じてdポイントを貯める仕組みにしていくとした。
また、検討中の取り組みとして資産管理承継領域を挙げる。たとえば、家族が亡くなった際に発生する“ドコモの通信契約”の手続きなどをネット上で簡単に相談でき、手続きを代行するサービスなどを考えているという。
このほか、NTTグループが保有するインフラ設備などの資産を活用した小口投資商品や、ドコモのエンタメアセットを金融商品とすることも考えられている。ユーザーが長期間安心して投資できる商品や、イベント招待などドコモならではの特典をつけることで、投資を楽しむ新しい体験を提供すると大山氏は語った。
ドコモの顧客確保「確実に効果がある」
ドコモ前田社長は、今回の提携について「顧客流出の防止に確実に効果がある」との考えを示す。dポイントやdカード、d払いなど金融サービスの規模が大きくなっており、今回の提携と親和性が高いと指摘。
通信サービスの解約率について、金融サービスを利用しているユーザーの方が解約率が低い点に注目し、金融系をまとめて連携させることで、大きな効果を期待したいと話した。また、これらの提携などで、2030年には金融サービスの売上を現在の2倍程度の規模に拡大したいとした。
また、通信プランとの連携(マネ活、ポイ活プランなど)について前田社長は「現時点では、まだ言えない部分がある」としたものの、「ポイ活という形でほかの金融サービスとの連携を強めている。その枠組みの中に銀行サービスをうまく組み込んでいくという検討はしたいと思う」と前向きな考えを示した。
























