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携帯電話で読む電子書籍

 従来PDAなどで利用するコンテンツとして流通・配布されていた電子書籍だが、最近では携帯電話で電子書籍を閲覧できるサービスも多くなってきた。5月には電子書籍フォーマット「XMDF」形式のデータが閲覧できる機能を標準で搭載する携帯電話「J-SH53」がJ-フォンから発売されている。そこで今回は、携帯電話で読む電子ブックに焦点を絞りレポートする。


J-SH53で電子書籍を読むには……

J-SH53
 まず、シャープの提唱する電子書籍フォーマットXMDFに対応した電子ブックビューワーが搭載されている「J-SH53」から見てみよう。

 J-SH53で電子書籍を利用するには、対応する電子書籍コンテンツをパソコンなどを使ってSDメモリーカードにダウンロードする必要がある。コンテンツを入手するには、端末の発売元・シャープのWebサイト「シャープ スペースタウン」でSDカードに保存できるコンテンツのダウンロード販売や、対応コンテンツが保存されたSDカード自体の販売が行なわれているのでこちらを利用することになる。また、ファミリーマートなど一部のコンビニエンスストアではSDメモリーカード書き換えサービスを行なっており、そちらで電子書籍コンテンツを入手することも可能だ。

 コンテンツ入りのSDカードを手に入れたら、早速端末に挿入してコンテンツにアクセスしてみよう。メニューの「電子ブック」を選択し、表示されるコンテンツから自分の読みたい電子書籍を選択して、コンテンツが見られるようになっている。

 専用ビューワーでは、電子書籍を読むための基本的な機能が利用できる。「表示設定」では、文字サイズを「小」「中」の2段階で変更可能。一部のコンテンツでは、これに「大」を加えて3段階で調整もできる。「縦横設定」が搭載されており、コンテンツに合わせて縦書き・横書きの選択も行なえる。「ルビ表示」機能を利用して振り仮名をふることもできる。また、コンテンツごとに2つまで「しおり」を登録し、途中から読み直すことも可能だ。さらに携帯電話ならではの機能として、コンテンツを閲覧している際に着信したり、二つ折りの本体を閉じたりした場合でも続きから読むことができるレジューム機能も搭載されている。


SDカードを本体に挿入 SDカードのメニューから「電子ブック」を選択 「だからWinMXはやめられない」XMDF版(インプレス刊)の表紙を表示したところ

冒頭部分 メニュー一覧。しおりは2つ設定できる メニューから「表示設定」

液晶のスペックは十分、ソフトウェアの熟成が必要

 実際に電子書籍コンテンツをじっくり読んでみたところ、意外に読みやすい。J-SH53に搭載された液晶は、解像度がQVGA(320×240ドット)の高精細なCGシリコン液晶。発色やコントラストが鮮やかで、テキストの視認性は従来の端末に比べて抜群だ。電子書籍のように画面いっぱいに表示されるテキストを読み進めるのに適した端末といえるだろう。

 もちろん気になる点もある。まず、読書中に液晶のバックライトが消える点だ。スクロールを続けていれば消えることはないが、通常の設定では、同一ページ内で少し読み返そうかというタイミングで突然バックライトが消えてしまう。バックライトの存在は読みやすさに直接影響を与えるものなので、柔軟な設定を可能にして欲しいところだ。

 また、スクロールは1行単位かページ単位でしか行えず、これが面倒くさい。PDA版ビューワーなどではサポートされていた自動ページ送り機能が携帯電話版に実装されなかったのは残念だ。

 電子書籍やビューワーの機能とは別次元の話になるが、コンテンツの入手方法も今後の検討課題だろう。せっかくネット接続できる携帯電話なのだがら、やはりコンテンツはダウンロードしたい。ただ、内容にもよるが、数百KBから大きければ数MBにもおよぶコンテンツもあるので、ダウンロードできるようにするなら、料金体系の見直しも必要になるだろう。


横書きを選択すると、コンテンツによっては警告が表示される こちらが横書き表示 縦書きで文字サイズを「小」にしてみた


URL
  J-SH53向けコンテンツの紹介
  http://www.spacetown.ne.jp/prod/keitai-j/
  シャープ スペースタウン
  http://www.spacetown.ne.jp/
  kutikomi(シャープ製品販売サイト)
  http://www.kutikomi.ne.jp/
  製品情報
  http://www.j-phone.com/japanese/products/kisyu/j_sh53/

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アプリで提供されている電子書籍ビューワーを試す

 J-SH53は電子書籍のビューワー機能を最初から搭載しているが、独自に電子書籍コンテンツを配信している携帯電話向けサービスも少なくない。その多くはJavaアプリを利用した独自のビューワーを用意しているが、ここで代表的なサービスをいくつか紹介しよう。

 なお、配信されるコンテンツは、容量に制限のあるJavaアプリに格納される。容量制限があるため、どうしてもショート小説やTOEICの問題集など短編のコンテンツが多く、長編モノの小説などは分割して配信するなど工夫はされているが、現時点では主流ではないようだ。


EZweb向けサービス「快読!ケータイBookクラブ」

 ミュージック・シーオー・ジェーピーにより提供されている電子書籍配信サービス「快読!ケータイBookクラブ」では、ezplusで開発されたビューワー「よむ蔵」を提供している。利用料は月額315円(税込)。「遊ぶ・楽しむ」→「TV・ラジオ・マガジン」からアクセスできる。

 配信されるコンテンツは独自形式で、挿絵などの画像表示はサポートされていない。提供されるビューワー「よむ蔵」は、縦書き・横書き切替やしおり、フォント調節、行間変更といった機能を搭載。ページ送り時には、実際の本をめくるようなアニメーションが表示され、電子書籍特有の違和感を軽減させるような工夫がされている。このアニメーション機能は印象的だが、アニメーションの方向設定機能は搭載されていない。例えば、横書表示した場合は、日めくりカレンダーのように下から上にアニメーションするようになる。

 コンテンツのダウンロードは「よむ蔵」から直接サイトにアクセスして行なう形で、ダウンロード後にそのまま閲覧できるようになっている。ダウンロードしたコンテンツを一読して、続くストーリーを再度ダウンロードして上書き、閲覧する場合でも再起動は不要となっている。

 サービス自体はモール型で、複数の出版社からコンテンツが提供されている。このため、利用にはコイン制を採用。ユーザーには毎月30コインが与えられ、その範囲内で各コースを利用することになる。1コースあたりのコイン数は5~20コイン。なお、コインを消費せずに試し読みができるコンテンツも用意されている。


「よむ蔵」起動中のロゴ メニュー画面 表示設定画面。シンプルな構成になっている

縦書き表示 ページ送りのアニメーション。先に進むときは、左から右へとページがめくられるようなイメージ 横書き時のページ送りアニメーション。こちらは下から上にめくられる

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EZweb向け電子書籍配信サービス「快読!ケータイBookクラブ」


URL
  快読!ケータイBookクラブ
  http://pdabook.jp/pdabook/bookclub/




「新潮ケータイ文庫」のビューワー「たてがきくん」

 新潮社とNECインターチャネルの運営する「新潮ケータイ文庫」では、iモード・J-スカイ・EZwebそれぞれに対応したJavaアプリ「たてがきくん」を提供している。

 提供されるビューワー「たてがきくん」の機能は、縦書き・横書き切替やしおり、背景色(白・黒)の変更など、シンプルにまとめられている。ページ送りには特に機能は搭載されておらず、名前通り縦書きで読めることに機能を集約したビューワーとなっている。

 また、コンテンツを4つの保存用ブロックで管理。短編コンテンツでは1ブロック、長編コンテンツでは2~4ブロックを使用することになる。例えば短編を2つ保存している場合は、3ブロック以上使用する長編はダウンロードできないので注意が必要だ。

 アプリからコンテンツのダウンロードも可能だが、閲覧するには一度アプリを終了して再起動しなければならない。短編を続けて読む場合や連続するストーリーを読む場合は、ダウンロードするたびに再起動する必要がある。

 利用料は、iモード版が月額200円、J-スカイ・EZweb版が月額100円で、用意されているコンテンツ全てが利用できる。アクセスはiモード版が「TV/ラジオ/雑誌」→「雑誌」から、J-スカイ版が「TV・ラジオ・雑誌」→「出版・雑誌」から、EZweb版が「EZインターネット」→「TV・メディア」→「マガジン」から。


起動時のロゴ ダウンロードにはブロックの空きが必要 メニュー表示

通常表示 背景を「黒」に設定


URL
  新潮ケータイ文庫
  http://www.shinchosha.co.jp/keitaibunko/

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「新潮ケータイ文庫」のJ-スカイ版がオープン、縦書きJavaアプリも




シャープとサイバードのJ-スカイ向けアプリ「ブンコビューア」

 シャープとサイバードは、J-スカイ向け電子書籍配信サービス「ケータイ電子書店 SpaceTownブックス」で、Javaアプリ対応ビューワー「ブンコビューア」を提供している。利用料は月額210円~315円(税込)。公式メニューの「TV・ラジオ・雑誌」→「出版・雑誌」→「電子書籍」からアクセスできる。

 今回の記事冒頭でも述べたように、シャープでは電子書籍用フォーマットとしてXMDF形式を提唱している。「ブンコビューア」は、そのXMDF形式の簡易版「コンパクトXMDF」をサポート。J-フォンのパケット対応端末で利用可能で同形式に対応するコンテンツを読むことができる。簡易版XMDFといっても画像や外字も表示可能で、ハイパーリンクなどの機能も搭載している。

 ビューワーとしての機能は、J-SH53に搭載されたビューワーに似ている。縦書き・横書き切替やしおりといった基本的な機能はもちろん、読んでいる行にアンダーラインを表示させられる読書ラインやルビ、画面スクロール設定などの機能も搭載されている。背景や文字の色を細かく設定できるほか、写真コンテンツなどを待受画面に設定することもできる。

 ただし、ブンコビューアではXMDFフォーマットの電子書籍を読むことはできず、J-SH53用のコンテンツを閲覧することができない。また、ブンコビューアから直接コンテンツをダウンロードできないのも不便な点かもしれない。ダウンロードの方法は、いったん「ケータイ電子書店 SpaceTownブックス」にアクセスし、ダウンロードしたいコンテンツに予約を入れ、その後ブンコビューアからダウンロードのリクエストを行なうというもの。連続して本を読みたい場合は、前もってWebサイトで予約を入れる必要がある。


メインメニュー。グラフィカルな表示が特徴 表示設定画面 操作方法もカスタマイズ可能

画像も表示できる 縦書き表示。縦の青い線が「読書ライン」 横書き表示


URL
  ケータイ電子書店 SpaceTownブックス
  http://www.spacetown.ne.jp/prod/jsky/

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シャープとサイバード、J-スカイ向けに電子書籍配信サービス




自動スクロール機能付きiアプリ「@ぶんこ堂」は8月以降に配信

 このほかに、ジョルダンのiアプリ対応ブックビューワー「@ぶんこ堂」が2003年夏に配信予定だ。自動スクロール機能を搭載し、ページ送りの手間を軽減している。ジョルダンによれば「8月には配信したい」とのことなので、自動スクロール機能を利用したいユーザーはこちらのアプリを待つのもいいだろう。


以前の展示会でのスクリーンショット。開発中だが、自動スクロールのデモンストレーションが行なわれていた


URL
  @ぶんこ堂
  http://www.asayomu.com/pc/atbunkodo/

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電子出版の展示会、iアプリ対応ブックビューワーなどが登場




「M-stage book」の動向は?

NTTドコモ電子書籍担当課長・平山博史氏
 電子書籍といえばNTTドコモの配信サービス「M-stage book」もある。同サービスは、PDA向け電子書籍サービスで、XMDF形式に対応した電子書籍コンテンツなどが提供されている。

 ただし、「M-stage book」では、PDA・パソコン向けの配信にとどまっている。国内最大シェアを誇る移動通信事業者のドコモだが、満を持して発表した505iシリーズにも、電子書籍ビューワーは搭載されなかった。果たしてドコモは、今後「M-stage book」をどのように運営していくのだろうか。NTTドコモ電子書籍担当課長・平山博史氏に話をうかがった。

――まずはM-stage bookの現状について教えていただけますか。

平山博史氏
 2002年10月から提供を開始したM-stage bookですが、現在コンテンツを配信する出版社などのプロバイダーは約50社、約1,800の電子書籍を扱っています。

――利用者数はどの程度でしょうか。

平山氏
 M-stage bookのみで利用者数を把握できていないので、詳細な数字を述べることはできませんが、M-stageサービスを利用するためのinfogate契約者のアクティブユーザー数ならお答えできます。現在毎月1回以上コンテンツを利用しているユーザーをアクティブユーザーとすると、約5,000名ですね。

――5,000名という数字は事前の想定に比べてどうなんでしょう?

平山氏
 事前の想定では15,000名ほどを見込んでおりましたから、非常に少ないと言わざる得ません。当初我々は、ノートパソコンとPDAの2つの柱で電子書籍を販売していくことを考えておりました。ところが、ノートパソコンユーザーの伸びが想定していたよりもずっと低かったのです。

――パソコンユーザーは思っていたより電子書籍を読まなかった、というわけですね。携帯電話業界ですと、J-フォンの「J-SH53」のように電子書籍が読める携帯端末も販売され始めていますが?

平山氏
 携帯電話というのは市場規模も大きいですし、非常に魅力的です。従来は、大画面=PDAという感じで、携帯電話で読書する雰囲気はなかったのですが、携帯電話も最近のモデルではQVGA表示も可能になりましたし、表示についての障壁というものはなくなってきましたね。実際505iシリーズを見たときは、「これなら」という気持ちにもなりました。


平山氏愛用のモバイル端末

M-stage bookのiモードサイト。更新情報や作品の簡単なあらすじが読めるという
――しかし、505iシリーズには電子書籍を読める機能が搭載されませんでした。それには何か理由があるのでしょうか? 一部では、シャープのスペースタウンと電子書籍販売でバッティングするからとの憶測もありますが……。

平山氏
 シャープとのバッティングというのありません(笑)。そういった閲覧機能を搭載していただいた方が、むしろ市場は活性化しますから。SH505iに電子書籍閲覧機能が搭載されなかったのは、機能を搭載する優先度の問題でしょう。アレもコレもというわけには行きませんから。

 電子書籍閲覧機能が、505iシリーズだけでなくPDC端末に搭載されない理由としては、2つあると思います。1つは、現状の携帯電話の通信帯域ではコンテンツをダウンロードした際にユーザーが「パケ死」してしまうこと。もう1つは、505iシリーズには外部メモリが標準装備されたのですが、iモードの仕様としてダウンロードしたコンテンツを外部メモリに保存できないという問題があります。

――なるほど。そうなるとPDC端末には電子書籍コンテンツは難しいですね。

平山氏
 そうです。ダウンロードしたコンテンツを外部メモリに保存できるようにするためにはiモードの仕様変更が伴いますが、これはある意味内部的な問題ですので、われわれが何とか頑張れば希望もあると思います。しかし、通信帯域の問題はPDCである以上どうしようもない。ですので我々としては、帯域が広く、パケット料金もPDCに比べて低廉なFOMA端末ならば搭載できるのではと考えています。

――FOMAであれば可能、ということですね。

平山氏
 次に発売されるFOMAにその機能が搭載されるかというと、お約束はできないのですが(笑)。可能性があるという意味ではFOMAに搭載することが、一番現実的ではないのでしょうか。

――ありがとうございました。

 インタビューを通じて、PDC端末の通信能力や料金面における限界と、FOMAへの期待が感じられた。確かにFOMAであれば、ダウンロード販売ということも可能になるだろう。それでも最近では、iモードでコンテンツのあらすじが無料で読めるサイトをオープンするなどしており、今後も同社の動きからは目が離せない。



URL
  M-stage book
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/mstage/book/
  M-stage book(iモード向け)
  http://www.docobon.cp04.docomo.ne.jp/

関連記事
ドコモ、Vライブなど3つのM-stageサービスを10月から正式運用




携帯電話と電子書籍の今後は

「電子書籍ビジネス調査報告書2003」(インプレス刊)では携帯電話も含めた電子書籍について細かい分析がされており、興味のある方はぜひご一読されたい。
 シャープによれば「サラリーマンを中心に電子書籍を携帯電話で利用するユーザーが増加傾向にある」という。徐々にではあるが着実に電子書籍が携帯電話でも利用できるようになっており、しかもJ-SH53のようなハイエンド端末なら、PDAやパソコン向けのコンテンツなども利用可能だ。

 通信環境やJavaなどのアプリケーションの充実を考えると、いつでも持ち歩けて、どこでもネットにアクセスできる携帯電話は、文庫本に取って代わるに電子書籍向けにふさわしい機器といえるのかもしれない。

 とはいえ一般のユーザーに対してはまだまだ認知度が低く、通信料などの問題で長編小説などのダウンロード販売ができない、そもそも面白いコンテンツがないといった声があるのも事実だ。

 料金については各通信事業者に期待したいところ。また、さらなる普及や認知度の向上には、電子書籍ならでは、携帯電話ならではのコンテンツが制作されていかねばならないだろう。


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(鷹木 創)
2003/07/31 13:54

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