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速報レビュー
エリア限定でスタート、ウィルコム「XGP」の実力を試す

 ウィルコムが10月より正式サービスを予定する「WILLCOM CORE XGP」は、通信速度が最大で上下20Mbpsという高速無線通信サービスだ。

 4月27日からは、東京都内の一部エリアを対象としたエリア限定サービスがスタート。6月17日からは法人500ユーザーを対象に、エリア限定サービス対応のPCカード型データ通信端末であるNECインフロンティア製「GX000N」、ネットインデックス製「GX000IN」の2機種の貸与が始まった。

 今回は、スピードテストの結果などをお伝えする。


XGPとは

 WILLCOM CORE XGPとは、高速無線通信方式「XGP(eXtended Global Platform)」を使った高速無線通信サービス。もともと「XGP」とは、“neXt Generation PHS”(次世代PHS)の略称として用いられてきたが、4月に業界団体のXGPフォーラムが設立された際に変更された。

 PHSの特性であるマイクロセル(基地局がカバーするエリア1つ1つが小さいエリアのこと、携帯電話はより大きなエリアのため“マクロセル”と呼ばれる)を受け継ぎ、OFDMやMIMOなどWiMAX、LTEといったライバルとなる通信方式と同等の技術も取り入れている。また、従来の移動体通信では変調方式が最大64QAMとなってきたが、XGPでは最大256QAMを採用している。比較的シンプルなBPSKと呼ばれる変調方式では、1つの信号で2つの値を伝送できるが、64QAMでは64、256QAMでは256の値を伝送できる。


256QAMの採用も特徴の1つとされる 他の通信方式では64QAMが主流
256QAMの採用も特徴の1つとされる 他の通信方式では64QAMが主流

 しかし256QAMはエラー(マルチパス、フェージング)に弱いとされ、商用化は厳しいと考えられていたが、ウィルコムではXGPの実用化試験を行った際、256QAMでの通信に成功、今回商用サービスでの採用にこぎつけた。同社では「256QAMのデータ通信サービスは世界初」と胸を張り、今回のモニター貸し出しの直前まで調整を行っていたとのことで、今後も正式サービスに向けてチューニングが行われる。

 これにより、XGPでは上り下りともに最大20Mbpsという通信速度が利用できるとしている。マイクロセルで1基地局当たりのユーザー数を少なくし、256QAMによって伝送速度を高速化することにより、理論値にできるだけ近い通信速度を提供する、というのがウィルコムのアピールするところだ。


エリア限定サービス対応端末

左:GX000N
右:GX000IN
 今回貸し出された端末はNECインフロンティア製「GX000N」、ネットインデックス製「GX000IN」の2機種で、どちらもPCカード型端末だ。「GX000N」の大きさは56×10×111mm、重さが約50gで、消費電力は平均800mAとなる。もう一方のネットインデックス製「GX000IN」は、54×7.5×110mm、重さは約45g。消費電力は平均750mA。どちらもPCカードスロットからはみ出すようにアンテナを装備している。パソコンに装着すると、モデムではなく、無線LANやLANポートと同じく、ネットワークデバイスとして認識される。端末内にはSIMカードが内蔵されている。

 4月のエリア限定サービスでは、Windows XP/Vista対応となっていたが、今回のモニター貸出では、当初はXP搭載パソコンでの利用が推奨されている。これはVistaでの検証が終了していないためで、今後、正式にVista対応となる見込みだ。

 ユーティリティソフトはそれぞれ異なる。「GX000N」のユーティリティソフトは比較的シンプルなつくりで、メニューは「設定」「ヘルプ」となり、「接続」「取り外し」と表記されたボタンと、エリア内かどうか示すアンテナ表示のみ。利用する上では「接続」ボタンを押すだけとなっている。


GX000Nのユーティリティ GX000INのユーティリティ
GX000Nのユーティリティ GX000INのユーティリティ

 もう一方の「GX000IN」のユーティリティソフトは、接続先設定を行う機能やPINコードの変更機能などが用意されているものの、使い方としては「GX000N」と同じく「接続」「切断」「終了」といったボタンを押すだけとなる。

 ただ、最近のデータ通信端末はUSB接続型で、内蔵メモリにインストーラーを収録し、接続するだけでインストールが開始される、といった製品が多い。一足早く商用化するUQ WiMAXでも同じくUSB対応で、接続時にユーティリティソフトやドライバーソフトをインストールする形のものもある。

 「GX000N」「GX000IN」は、PCカード型とあって、装着=インストール開始ではない。また最近のノートパソコンではPCカードスロットそのものを省略する機種が多くなってきている。人気のネットブックではPCカードスロットがほとんど見られない状況だ。「XGP」の商用サービス開始時の端末がどのようなラインナップになるか未定だが、USB接続型も提供されると、ユーザーにとってはXGPを利用しやすくなるだろう。


SIMカードを内蔵する
SIMカードを内蔵する

通信速度

エリア限定サービスの提供地域

エリア限定サービスの提供地域
 WILLCOM CORE XGP エリア限定サービスの提供地域は、東京都内のうち、池袋周辺や新宿・代々木周辺、渋谷周辺、恵比寿~広尾周辺、皇居周縁部、JR山手線のうち秋葉原~東京~新橋~品川、霞が関、永田町といったあたりになる。地図で見ると、山手線の東南部一帯のほか、池袋、新宿、渋谷、恵比寿が飛び地のようにエリアになっている。

 256QAMという変調方式もまた特徴の1つとなっているXGPだが、通信環境によっては64QAMで通信することになる。今回は、良好な通信環境の1つというJR新宿駅新南口改札前で通信速度を測定した。なお、ウィルコムからは、良好な通信を行うためにMTUやRWINといった通信関連のパラメーターの設定が案内されており、その設定を反映させた上でテストを行った。


 テストに用いたパソコンは、約5年ほど前に購入したXP搭載マシン。rbbtoday.comのスピードテストサービスを使い、両機種で10回ずつ速度を測定したところ、以下のような結果となった。

●GX000N(最大64QAM)
下り:平均4.8Mbps(最高5.53Mbps / 最低3.73Mbps)
上り:平均1.2Mbps(最高1.38Mbps / 最低1.04Mbps)

●GX000IN(最大256QAM)
下り:平均8.9Mbps(最高9.56Mbps / 最低7.8Mbps)
上り:平均5.05Mbps(最高5.91Mbps / 最低1.57Mbps)


テストを行ったJR新宿駅新南口

テストを行ったJR新宿駅新南口
 NECインフロンティア製の「GX000N」と、ネットインデックス製「GX000IN」を比べると、下りの速度は倍、上り速度は4倍ほど違いがある。どちらもほぼ同じ場所でテストを行ったが、64QAMと256QAMの違いは大きいようだ。エラーに弱いとされる256QAMでの通信が、商用サービス開始後、どの程度利用できるのか興味深いところだが、基地局と端末の間に障害物がある場所などでは、256QAMによる通信は難しいと考えるべきだろう。

 とはいえ、下り5Mbps、上り1Mbpsもあれば、インターネット上のサービスを利用したり、メールなどを利用するには十分と言える。商用サービス開始での料金体系や契約方法はまだ未定となってはいるが、駅や空港、商業施設といった屋内を含めた十分なエリアと多彩な製品ラインナップ、扱いやすいユーティリティソフト/ドライバーソフトといった点でも期待したい。



URL
  サービス案内
  http://www.willcom-inc.com/core/core_xgp/index_01.html

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(関口 聖)
2009/06/17 19:34

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