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クティオとD01NXII
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ISPのIIJは、同社の「高速モバイル/EMサービス」と一緒に、モバイルWi-Fiルーター「クティオ」を販売している。今回は、このクティオ(ネットインデックス製、型番RS-LJ01)と、それに対応したCFカードタイプのデータ通信端末「D01NXII」(ネットインデックス製)をお借りできたので、そのレビューをお届けしたい。
■ モバイルWi-Fi-ルーター「クティオ」
クティオはいわゆるモバイルWi-Fiルーターに分類される製品だ。データ通信端末によるインターネット接続を無線LANで共有する。クティオ自身にはディスプレイも操作ボタンもない。ユーザーはパソコンやゲーム機を無線LANでつないで利用する。家庭用の無線LANルーターが持ち運び可能になったもの、と考えればわかりやすいだろうか。
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クティオの前面。エッジに通気口があいている
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クティオ背面。こちらも通気口が目立つ
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同様の製品としては、ウィルコムの「どこでもWi-Fi」やCradlepointの「PHS300」などがあるが、国内ではまだ製品数の少ない製品ジャンルだ。ちなみにクティオはIIJが先行独占販売することになっており、基本的にサービス契約者向けの販売という形式となる。
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CFカードスロットは本体上面にある。USBポートは逆の下面
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クティオ自体はインターネット接続回線を内蔵しておらず、データ通信端末が必要になる。クティオ本体にはCFカードスロットとUSBポートがあり、インターネットに接続するためのデータ通信端末として、CFカードタイプだけでなく、USBタイプのデータ通信端末「D02HW」も利用できる。
合体できる分、CFカードタイプの方がコンパクトに済ませられるが、クティオ抜きでCFカードスロットのないパソコン直結で利用することがあるならば、USBタイプの方が便利かもしれない。
クティオ本体には、1つのスライドスイッチと簡易設定用のWPSスイッチ、2つの通知LEDがある。インターフェイスとしては、充電用のミニUSB端子と、データ通信端末専用のCFカードスロット、USBポートがある。
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右側面。電源のスライドスイッチがある
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左側面。WPSスイッチと充電用のミニUSB端子
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ちょっと小さめのケータイとの比較。鞄に入れるには気にならない大きさ
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本体の大きさは100×65×21.8mmなので、ケータイよりも一回り大きい。重さは130gで、ちょっと重めのケータイ並み。ただしこれにデータ端末がつくので、実際にはもうちょっと大きく・重たくなる。
内蔵バッテリは6.7Whのリチウムイオン電池で、連続使用時間は、CFカード端末利用時は約120分、USB端末利用時は約100分。ちなみに充電時間は約3時間だ。
電池の容量的には、使うときだけ電源を投入する、という利用スタイルに適している。しかし電源が確保できる場所では、固定回線のルータのように、つけっぱなしでも利用できそうだ。クティオの筐体には冷却用のスリットが設けられていて、連続運用時も熱がこもりすぎないようになっている。
■ 使い方も設定方法も無線LANルーターと同じ
電源スイッチを入れてしばらく待つと、2個の通知LEDが点灯し、起動する。インターネットにつながったかどうかは、データ通信端末側のLEDなどで確認する。
初期設定の状態では、無線LANの暗号化は設定されていない。そのままパソコンの無線LANユーティリティなどから見える「RS-LJ01」というネットワークに接続すればよい。通信の暗号化を使うには、手動で設定する必要がある。
各種設定は、ブラウザから行う。この設定ページに入るとき、パスワードとしてクティオ自身のMACアドレスが使用されるので、無設定の状態でも簡単には乗っ取られないようになっている。しかしそれでも無制限につながれるのは危険なので、暗号化くらいは使いたいところだ。また、簡単設定手段として、WPSにも対応している。
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設定ページ。この画面を表示させるのにパスワードが必要になる
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ダイヤルアップ設定や無線LAN設定に加え、NATなどルーターとしての設定も行える
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■ 通信速度は上下するが、そこそこ速い
通信速度はほぼ普通のイー・モバイル端末と変わらず、クティオを介したことによる速度低下は見られない。つまり、最大7.2MbpsのHSDPAサービスなりの速度が出ている。
スピードテストサイトで調べてみたところ、下りはだいたい1Mbps前後の速度のことが多かった。ただし速度はテストをするたびに上下し、最低で約200kbps、最高で約3.0Mbpsと変化した(とくに午前中が速い)。筆者が試用した地域が渋谷だったので、とくに混雑の影響が大きかったかもしれない。通信速度は場所や時間帯によって大きく変わるので、ここでの数値はあくまで参考値と見てもらいたい。
また、大手検索サイトのサーバーにPingを試したところ、遅延は120~150ms程度だった。普通のインターネットコンテンツを楽しむ分には気にならないレベルだが、FPSなどアクション性の強いネットゲームにはちょっとつらいかもしれない。ちなみにグローバルアドレスはIIJのものが割り振られる。インターネット接続の部分はIIJが提供しているというわけだ。
■ 環境によっては動画ストリーミングサービスもそこそこ利用可能
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iPhoneでYoutubeを使うときも、無線LAN経由なら高画質版になるが、その分容量が増えるので、クティオではダウンロードが間に合わないことも
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筆者が試用した環境の通信速度でいうと、画像の多いウェブサイトを読み込むとき、わずかにもたつきを感じた。しかし、実用上大きなストレスを感じるレベルでもない。画像が多いWatch各媒体のトップページも、HTML自体はすぐに読み終わるので、3秒くらいでページ自体は表示され、あとからサムネイルや広告バナーが読み込まれる、という感じだ。
YouTubeやニコニコ動画も、回線が速い場所・時間帯なら、ムービー再生よりもダウンロードの方が速い。しかし、一部の高ビットレートコンテンツでは、ダウンロードが追いつかないことがあった。また、回線速度が遅くなる場所・時間帯では、ニコニコ動画のエコノミーモードですらダウンロードが追いつかなかった。
Skypeの音声通話は問題なく使えた。音質面で問題は感じないレベルだ。最近公開されたiPhone/iPod touch向けのSkypeも、下手をすればケータイよりもよほどよい音質で通話できる。ただしビデオチャットとなると、画質もかなり落ちてコマ落ちするようになる。これも環境によるところだが、ビデオチャットはあまり実用的ではなさそうだ。
余談だが、iPhoneでは3G回線経由ではできない一部機能が、無線LAN経由ならば使えるようになったりする。iPhoneもHSDPAを内蔵しているので、通信速度的にはイー・モバイルと大差はないのだが、機能面が拡張されるのがちょっとおもしろい。たとえばSkypeの場合、3G回線ではテキストチャットまでだが、クティオの無線LANが使えれば音声通話もできる。YouTubeも無線LAN経由では高画質な高ビットレートモードが利用できるのだが、クティオで試したところ、時間帯によってはこの高ビットレートモードではダウンロードが間に合わないこともあった。
■ 価格が魅力的。モバイルにも固定回線の代替にも、用途はいろいろ
クティオが対応する「高速モバイル/EMサービス」は、5月31日までのキャンペーン期間中に契約する場合、データ通信端末のレンタル料金を含め(CFカード、USBタイプともに同料金)、1年契約で月額4980円(590円引き)、2年契約で月額3980円(745円引き)となる。キャンペーン期間中に契約すれば、解約するまでこの価格のままだ。イー・モバイルのデータプランが、2年契約でも上限4980円であることを考えると、キャンペーン価格はかなり安い。
さらにキャンペーン期間中に高速モバイル/EMサービスの契約との同時購入もしくは既存の契約者であれば、通常の半額である9870円でクティオを購入できる(既存の契約者もこの価格で購入できる)。こちらもかなりお得なキャンペーンだ。
クティオを使えば、無線LANを搭載するさまざまな機器でインターネット接続を共有できる。当然、パソコンからも利用できるが、パソコンが1台の場合は、データ通信端末をクティオから外してパソコンに直結してしまった方が手っ取り早い。
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iPod touchと組み合わせれば、花見をしながら出席していない人にSkypeで実況中継、といったこともできてしまう(写真はiPhone)
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クティオで最大の恩恵を受けられるのは、やはり無線LANしかネット接続手段を持たないゲーム機やポータブル機器、具体的にはニンテンドーDSiやiPod touchなどだろう。無線LAN内蔵SDカードの「Eye-Fi」との組み合わせも、外出先ですぐに画像アップロードができるのが便利だ。こうした、もともとは家か公衆無線LAN環境でしかネット接続ができなかった機器が、どこでも使えるようになるのは、大きなメリットだ。
価格も安く、速度もそこそこあるので、固定回線のブロードバンド代わりに使うこともできる。本格的に大容量動画やネットゲームを楽しむには力不足だが、ウェブを見るくらいならば十分な性能だ。固定回線の引きにくい環境、たとえば学校の部室だとかオフィスのゲスト用回線などにも利用できる。
クティオのライバルはまだ数が少ない。Cradlepointの「PHS300」がクティオと似た製品となるが、契約と一緒に購入するならばクティオの方が安い。
ウィルコムの「どこでもWi-Fi」は割賦金込みで使用料が月額1980円と、価格面が魅力的だが、PHS回線の実効100kbpsはパソコンで使うにはちょっと心許ない。クティオのHSDPAも、混雑時はかなり速度が落ちてしまうが、最大で3Mbps出るというのは魅力的だ。
将来のライバルとしてはWiMAXもある。WiMAXはまだ利用可能なエリアが狭いが、1年後2年後となると実用十分なレベルに達するかもしれないので、いま高速モバイル/EMサービスに2年契約するのはちょっと迷いどころでもある。しかし、エリア展開は基本的に先行有利なので、2年後もHSDPAの方がエリア面では有利なままには違いないだろう。
クティオはこれまでにない製品なので、これまでできなかった使い方が可能だ。これまでと同じように、データ通信端末だけ外して普通のモバイルインターネットもできるが、それを超えた使い方もしてみたいならば、いま高速モバイル/EMサービスを契約し、キャンペーン価格でクティオを手に入れるのは悪くない選択肢だ。
■ URL
クティオ
https://www.iijmio.jp/ad/mbap.jsp
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・ IIJとhi-ho、バッテリ駆動可能なモバイルルータ「クティオ」
(白根 雅彦)
2009/04/08 11:51
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