スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

技ありスマートウォッチ「wena wrist」を使ってみた

技ありスマートウォッチ「wena wrist」を使ってみた

 登場当初から「これは技ありだなぁ~」と感じていた「wena wrist」(公式ページ)。ソニーのSAP(Seed Acceleration Program;新規事業創出プログラム)から誕生したスマートウォッチです。最近ではラインナップ(公式ラインナップ一覧ページ)も増え、一部モデルでは品薄が続くほど人気があるようです。

ソニーのハイブリッドスマートウォッチ「wena wrist」の「Three Hands モデル」。カラーは3色あります。メーカー価格は税別4万2800円~4万9800円。
こちらは「Chronograph モデル」。カラーは3色で、メーカー価格は5万9800円~6万9800円。左のホワイト文字盤のものは最近発売された新製品です。
メーカー外ブランドとのコラボレーションモデルもあります。左は「wena×beams」コラボモデルの「Three Handsモデル」で税別4万6800円。中央は「wena×beams」コラボモデルの「Chronographモデル」で税別6万5800円。右が「WIREDモデル」のメカニカルウォッチで税別5万3000円です。

 って、なんか腕時計の記事みたいになってますが、これら全部スマートウォッチです。既にご存知の方も多いと思いますが、「wena wrist」は腕時計のバンド部分にスマートウォッチの機能が搭載されているという、一般的なスマートウォッチとはまるで異なったアプローチの製品。「これは技ありだなぁ~」と感じたのが、まさにこの点です。

 詳細は後述しますが、「wena wrist」の場合はバンド部分にスマートフォンからの通知機能や電子マネー機能、歩数計機能が内蔵されていて、ムーブメントを含む時計本体は純粋な時計。このスタイルが、様々なメリットに直結している……ように思えてならなかったので、今回は実機を借りて、1カ月程度試用してみました。てなわけで以降、「wena wrist」の機能や使用感について書いてみたいと思います。

バンド幅22mmの「ふつーの時計」を「スマートウォッチ化」できる!

 ハイブリッドスマートウォッチ「wena wrist」の最強の良さは、「wena wrist」の本体ともいえるバンド部を用いて、一般の腕時計をスマートウォッチ化できるコトだと思います。要は、好みの腕時計のバンドを「wena wrist」のバンドに交換すれば、ソレが即、スマートウォッチに! あら素晴らしい♪ って思いませんか?

 ちなみに、「wena wrist」のバンド部を装着可能なのは、バンド幅が22mmの腕時計です。ただ、バンド幅が22mmであっても、ケースの形状などによっては「wena wrist」のバンド部を装着できないこともあります。試しにやってみましょう♪

「wena wrist」はバンド部にスマートウォッチに必要な各機能を搭載していて、本体ケース部とは独立しています。「一般の腕時計としてのケース部」+「スマートウォッチとしてのバンド部」ということで「ハイブリッドスマートウォッチ」としているのだと思いますが、ともあれ、ケース部とバンド部は容易に分離できます。なお、現在バンド部単体では販売されていませんが、どのモデルのバンドも実質的には共通品で、シルバーかブラックの色違いで2タイプが存在しています。バンド部はもちろんコマ増減などで長さ調節ができます。
「wena wrist」のケース部はラグの幅(=バンド幅)が22mmで共通しており、つくりは一般的な腕時計にならっています。なので、一般的な腕時計でもバンド幅22mmのものになら、「wena wrist」のバンドをそのまま装着できる可能性があります。ちなみに、「wena wrist」のバンドに使用されているバネ棒は、爪の先などでバネ棒を簡単に縮められる仕組みなので、「wena wrist」のバンドの取り外しについては専門の工具は不要です。
まずはカシオのフルメタルGPSハイブリッド電波ソーラー腕時計こと「OCEANUS OCW-G1000B-1A2JF」(レビュー記事)から。ケースとバンドの間に少し隙間ができましたが、問題なく安定して装着できました。この腕時計はフルメタルGPSハイブリッド電波ソーラーハイブリッドスマートウォッチ、ということになるのでしょうか? しかしGPS電波ソーラーでありかつスマートウォッチって凄いですネ♪
続いてセイコーの古いダイバーズウォッチと。これも問題なく装着できました。ちなみに「wena wrist」のバンド部は「IPX5/IPX7相当の防水」で、いわば生活防水。水をかぶったりする程度なら問題ありませんが、ダイビングはできません。
さらにカシオの「データバンク(の逆輸入ゴールドモデル)」(レビュー記事)。これにもあっさりと「wena wrist」のバンド部が装着できました。外見も実質もハイテク感満載で非常にイイ感じです♪
ちなみにコチラは「wena wrist」開発者の對馬哲平さんの腕時計。「Epos Sophistiquee 3423」に「wena wrist」のバンド部(ブラック)を装着していました。ムーブメントがスケルトンのスマートウォッチ!

 といった感じで、手持ちのバンド幅22mmの腕時計のケース部に、「wena wrist」のバンド部を装着することができました。

 手持ちの腕時計でバンド幅22mmのものは4本あったんですが、そのうち1本となるシチズン「PROXIMITY」(レビュー記事)はケースとバンドが干渉して装着できませんでした。でも4本中3本、75%の確率で「wena wrist」のバンド部を装着可能だったのは、かなり驚きでありかつ嬉しさとなりました。

 ぶっちゃけた話、スマートウォッチの利便はわかっていても、「腕時計があのカタチになるのはイヤ」「あの表示が腕に出ちゃうのがイヤ」と思って手を出せていない人って、けっこー多いと思うんですよ。腕時計の歴史はスマートウォッチよりも、さらにスマートフォンやコンピュータよりも、ずーっと長くて、人の生活のかなり深い部分でひとつの大きな価値観をつくっていると思います。それをイキナリ液晶パネルとか半導体デバイスに置き換えるって……頭では納得できても心から納得できるかどうかは、ちょっと、ね~、みたいな。

 でも「wena wrist」なら、好みの腕時計ケース部に後付け可能。いつもの好みの腕時計がスマートウォッチに! まあ、バンド幅22mmの腕時計のみという条件があり、取り付けられない場合もあるわけですが、スマートウォッチの導入における「え~でもなぁ、腕時計としてはなぁ……」みたいな抵抗感がズギャッと激低減され、「えっ後付けOKなのか~、じゃあ使ってみようかなあ♪」みたいな楽しさが生まれてきたりします。

 余談ですが、「wena wrist」のバンド部、よくよく調べてみると、けっこー凝った作りになっていました。たとえばケース部やバンド部の素材として「SUS316L」ステンレスが使われています。これは医療用メスにも使われている耐アレルギー性素材で、高級腕時計にも多々使われています。また、ブラックモデルは表面にIP(イオンプレーティング)処理がなされており、さらに高い耐アレルギー性や硬度があります。

 細かい部分だと、ピンやバックルの構造は腕時計業界のそれにならったもの。市販のバンド幅22mmの腕時計のケースにそのまま装着できるのはこのためです。小さなネジは敢えて(一般の腕時計でも使われているタイプの)マイナスネジを使っており、腕時計として見ても違和感のないものになっています。

 違和感がないと言えば、充電端子。一見すると「どこが充電端子なのかな?」という感じでわかりません。フツーは充電端子だけ金色だったりしますが、「wena wrist」にはそういう箇所が見つかりません。一般の電子機器の充電端子など接点は、通電効率を高めるために、ニッケルメッキの上に金メッキを施していて、そのため金色の端子になっているそうです。しかし「wena wrist」の場合、充電端子の色が違和感につながらないように、通常の端子の金メッキの上に、さらに銀色のロジウムメッキを施して自然な見栄えにしているんだそうです。

腕時計業界の商習慣にならい、ネジ類はマイナスのものを採用。充電端子も、端子色が目立たないようにするために、ロジウムメッキが施されています。凝ってますね~。
バンド部には技適などの刻印があります。楽天のマークが時計にあるのは微妙だな~とか思ったら、バックルを閉じると完全に見えなくなります。これも意図したところなのでしょうか?

 実際に「wena wrist」の実機を間近で見ると、フツーに「あらキレイな腕時計~」みたいな印象です。多くのスマートウォッチの場合、文字盤が液晶パネルだったりすることもあって、腕時計として観察するような対象にならないと思いますが、「wena wrist」は見応えがあります。ケース部はシチズン製だそうですが、腕時計として見てもカッコイイのでぜひ実機を見てみてください。

どんなスマートウォッチ?

 さて、「wena wrist」はバンド部分にスマートウォッチの機能が凝縮されていますが、どんなコトができるのでしょう?

 バンド部分には、スマートフォンへの着信などを知らせる「通知機能」や、いわゆるおサイフケータイ機能として使える「電子マネー機能」、歩数などがわかる「ログ機能」が搭載されています。これら全部を使うこともできますし、一部のみ使うこともできます。設定は、基本的にはスマートフォンのアプリから行い、具体的な方法はメーカー公式ページで知ることができます。

 率直なところ、Apple Watchなどと比べると、スマートウォッチとしてできることは多くありません。ただ、シチズンの充電不要のスマートウォッチ「エコ・ドライブ Bluetooth」(レビュー記事)と比べると、電子マネーが使えますし、通知もよりわかりやすく、設定も細かく行えます。たとえば通知の設定を見てみると……。

スマートフォン用アプリから通知の設定を行っている様子。通知機能がある各種アプリを登録でき、そのアプリが通知を発したら「wena wrist」バンド部のLEDが光ったりバイブレーションが動作したりします。LED発光色は「White/Red/Green/Blue/Yellow/Purple/Cyan」の7色から選べます。バイブレーションは「1回/2回/3回/無し」から選べますが、電話の通知は着信中ずっとバイブレーションが動作し続けます。写真右は、Gmailの着信通知があったときのLEDの様子です。
通知の一括停止などもアプリから行えます。左は「all」をタップして登録した全てのアプリからの通知をオフにした様子です。再度「all」をタップすると、通知が再びオンになります。円の外周をタップすると、そのLED発光色に設定したアプリからの通知のみオフにできます。

 LEDはバックル部にあり、フルカラーLED×1個と白色LED×3個があるようです。バックル部には多機能ボタンが1つ搭載されており、これによりアプリを使わずともモード変更や状態表示も可能です。具体的な方法はメーカー公式サイトで説明されています。

 バイブレーションですが、「ほのかに」といった感じで響くバイブレーションです。深夜に静かな個室などならば「ジーッ」という小さな音が聞こえますが、そうでない状況ならほぼ聞こえません。それでも、手首への振動はわりと明確に知覚できます。また、机上に置いておくと「ブィーン!」という感じでけっこー大きな共振音が出たりします。

 おサイフケータイとしてですが、バンドのバックル部にFeliCaが内蔵されていて、そこにチャージして使います。現在利用できるのは、楽天Edy、iD、QUICPay、ANA Skip、ヨドバシカメラ・ゴールドポイント、ドコモ・dポイントといったところ。残念ながら交通系ICカードには非対応です。具体的な「使用開始手順」はメーカー公式サイトにありますが、Android端末で使う場合は一部制限などがありますので、ご注意を。

 電子マネー使用時は、店頭などのリーダーにバックル部分をかざすことで支払いなどを行えます。交通系ICカードの場合、例えば駅の改札はユーザーの右側にリーダーがあったりして、左手にしがちなスマートウォッチはかざしにくかったりしますが、「wena wrist」は交通系ICカードとは現在無縁なので、幸か不幸かこの問題とは関係ありません。また、コンビニなどはだいたいユーザーの左側にレジやリーダーがありますので、わりと自然に左腕のバックルをかざせて使いやすいです。自販機などでも、まずまずスムーズに使えました。

バンドのバックル部にFeliCaが内蔵されています。支払いなどをする場合は、バックル部分をセンサーにかざせばOK。

 ほか、アプリを通していろいろな情報を知ることができます。たとえば「ダッシュボード」を見れば、通知の有無/電子マネー使用/歩数などのサマリーを一望できます。「アクティビティ」を見れば、歩数や電子マネー使用をグラフ化して見ることができます。

アプリのダッシュボード表示例。通知発生や電子マネー使用、歩数やバッテリー残量などのサマリーを一覧できます。スクロールすれば時系列で詳しく見ていくことも可能です。
アプリのアクティビティ表示では、歩数や電子マネー使用などのログを表示できます。日/週/月/年単位でグラフ表示できるほか、グラフのタイプを円/棒から選ぶこともできます。

 電子マネー使用のグラフは案外おもしろいですネ。毎日どのタイミングでどの程度使っているのかがシッカリ可視化されるので、使いすぎやそのきっかけなどを知るのにも良いと思います。歩数計については言うまでもありませんが、運動不足かどうかや、運動していない時間帯などが一目瞭然です。

1カ月使ってみての雑感

 最後に、1カ月程度試用してみての雑感を少々。「wena wrist」は総じてイイ感じでした。

 通知については、ワタクシ的にはメールやSNS、メッセンジャーに新着があったかどうか分かればOKなので、「wena wrist」の通知機能は必要十分でした。むしろ、通知などがあったときに文字盤に何か表示されるというスマートウォッチにアリガチな動作を若干疑問視するほうなので、そういった動作がまったくない「wena wrist」は好印象。バックルの静かなバイブレーションやLED表示で十分だと感じました。

 LED表示やバイブレーションは、ほとんどの場合で「自分にだけわかる通知」であることも、イイです。要は「皮膚感覚や僅かな視線移動だけで通知を知ることができる」「人に気を遣わせなくて済む」といった使い方ができるからです。

 ただ、LED表示はもう少し持続して欲しい感じも。たとえばバイブレーションとLED点灯でメールの新着を知らせる設定の場合、バイブレーションで気付いてすぐにバックルを見れば、LEDの色で「メールが来たんだな」と分かります。ですが、少し間をあけて見るとLED表示は既に消えているので、何の新着か不明。LED表示がより長く持続されるなどすれば、より実用的になるような気がしました。

 ほか、LED表示やバイブレーションのさらなるカスタマイズなども行えたらいいな、と思います。たとえば特定のアプリへの新着なら、LED点灯が赤→白→赤で高速で変わるとか、短・長・単などのバイブレーション動作があるとか。

 でもまあ、そうやってどんどん複雑化すると、シンプルに割り切って使えなくなって、使うのが徐々に面倒になるような気もしています。それに結局、新着の通知後に、スマートフォンを見れば済むことではあるので、こういった少々の機能不足は大きな問題だとは感じていません。

 それから、電子マネー機能はとても便利です。違和感があるとすれば、コンビニなどで使用時に、店員さんが「?」みたいな顔をするとかくらいでしょうか? 手首に電子マネー機能が備わっているのは、手っ取り早いし、無くさないし、ナニカとホントに便利です。でもホントに残念なのが、まだ交通系ICカードに対応していないこと。まあこれはゆっくりと期待して待つことにします。

 それから電池の駆動時間。ワタクシの場合ですと、ラクに1週間以上もっています。メーカー公称では通常使用で1週間、おサイフ機能と通知機能のみを使用する場合は約2週間、おサイフ機能のみだと約1カ月もつそうです。時計のケース側(ムーブメント)は単独で3年の電池寿命がありますので、それを含めて、あまり「電池切れに気を遣わなくて済む」ので気が楽です。

 ちなみに、バンド部の充電は専用の充電クリップでUSB充電しますが、これがなかなか良い使い勝手です。クリップでバックルを挟むだけで充電されますし、クリップからUSBケーブルを抜くことができて、一般的なmicroUSBケーブルをつないでも充電できます。満充電まで最大1.5時間かかりますが、まあフツーにモバイルバッテリーがあればいつでも充電できる感じなので、これまた気がラクです。

左は付属の電用クリップとUSBケーブル(microUSB)。バックルの部分を充電クリップで挟めば充電できます。クリップからUSBケーブルを外せるので、一般的なmicroUSBタイプのケーブルと充電できます。ただし、公式サポートによれば「一部のモバイルバッテリーでは途中までしか充電できない」とのことですので、ご注意を。

 あと「wena wrist」のケース部(時計本体)が、ほか一連のスマートウォッチと比べると、腕時計としてかな~りカッコイイというのが良かったです。どういうシーンでも、何というか、正々堂々とつけていられる見栄え。腕時計としての外見を諦めずに使えるスマートウォッチ、というとアレコレと誤解を招くかもしれませんが、まあ、そういう感じがしました。

 そしてやはり、好みの腕時計(ケース部)を使えるのは、ヒッジョォ~に良いです。好んで買い求めた腕時計が、バンド部は変わるとしても、そのままスマートウォッチに! これスッゴク良くないですか?

 先日などは危うく「wena×beams」コラボモデルを衝動買いしそうになりました。「wena×beams」コラボモデルはカッコイイですし、そのまま使って、時には手持ちのバンド幅22mmの腕時計にチェンジすれば、これは楽しいじゃないかぁ~欲しいじゃないかぁ~欲しいじゃないかぁ~買うしか……というところまで行って停止。いや~なんかこの後もコラボモデル出るかもしれないんで、もう少し様子見してもいいかな、的な。でもスタンダートモデルのChronographのホワイトも、彫りが深くて端正で、冠婚葬祭にもフツーに使えそうで、これもナニゲにいいんだよな~、コレにしよっかなやっぱり……などと思ったのは、この原稿を途中まで書いて一休みしてヨドバシドットコムを見ていた、ついさっきでした。

 てな感じの「wena wrist」。時計部分は、まずはちゃんとしている正統派の腕時計であって欲しくて、さらに電子マネーが使えるスマートウォッチも使いたいというなら、ぜひともチェックすべき製品だと思います。「wena wrist」の実機はホントきれいな腕時計ですので、興味があればまず実機に触れてみて欲しいとも思います。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。