レビュー
ライカ初のスマートフォン「Leitz Phone 1 」を試す
2021年7月16日 08:00
ドイツのカメラメーカー、ライカが監修した初のスマートフォンが登場した。このAndroidを採用した端末は「Leitz Phone 1(ライツフォンワン)」というネーミングでソフトバンクから発売される。
製品発表の様子やスペックなどは別記事を参照していただくとして、ここでは1型という大きなセンサーとズミクロンレンズを採用し、ライカ独特の味付けがされているという写りを、ベースモデルのシャープ「AQUOS R6」と、そして1型センサー搭載のパイオニア機パナソニック「LUMIX CM1」との比較を交えて紹介したいと思う(作例の拡大画像はいずれも原寸)。
手にした感じ
「Leitz Phone 1」一番の特徴はそのルックスだ。落ち着いたボディカラーと、アルミフレーム部分に施されたローレット加工、そして「Leica」の赤バッジである。中身はほぼシャープの「AQUOS R6」なので、これに端末価格18万9720円を出せるかは実際に手にしてから判断するのが賢明だ。
なおマグネットで装着できるレンズキャップと、ラバー製のケース(残念ながらレザーではない)も付属する。
フォルムはスリムなので手にしっくりと馴染む。ローレット加工も手伝ってグリップ感は悪くない。
電源を入れるとライカらしいアニメーションのあと待ち受け画面になった。スクリーン上には「LFI.Widge」というウィジェットが。タップするとライカの運営するウェブサイト「LFI」にアクセスできるというものだ。
カメラアプリのユーザーインターフェイス
さて肝心のカメラを起動してみよう。
「AQUOS R6」とは異なったカメラアイコンをタップすると、1型有効約2020万画素CMOSセンサーを採用するカメラが立ち上がった。カメラ画面もほぼ「AQUOS R6」と同様だが、フラッシュのアイコンや英文字のフォントがライカフォントに変更されている。
面白いのはレンジファインダーの「M型ライカ」のように「ブライトフレーム」をスクリーンに表示できるところだ。
シングルレンズながら3段階の切り替えができるのだが、1倍と2倍時に「24mm」、「48mm」と35mm換算された枠が表示される。この内側が実際に撮影される範囲、ということだ。この機能をオフにすると一般的なスマートフォンと同じようにフル画面で撮影範囲を表示できる。
さてレンズ(35mm判換算19mm相当F1.9のズミクロンである)だが3段階の切り替えができると書いた。「AQUOS R6」と同じようにカメラを立ち上げると「1倍」に、倍率アイコンをタップして「2倍」に、さらにタップして「0.7倍」にと切り替える仕組みになっている。
つまり一番の広角(1型センサーを丸々と)で撮影したい場合に2回もアイコンをタップしないといけないのだ。いったんカメラを終了してしまうと「1倍」に戻ってしまうので実に使いづらい。「AQUOS R6」を触ったあとにこの「Leitz Phone 1」が届いたので、「ライカ監修ならこの部分が直っているのでは」と期待したのだが同じであった。
3つアイコンを並べるなど、ここはぜひファームウェアのアップデートで改善してもらいたいポイントである。
Leitz Looks
カメラ部のメニューには「Leitz Phone 1」オリジナル機能が追加されている。「Leitz Looks」というモノクローム撮影モードだ。「M型ライカ」のモノクローム機やパナソニックのミラーレス一眼カメラ「LUMIX」シリーズに搭載されている「L.モノクローム」系のように深い味わいの白黒写真が撮影できる。
なお「Leitz Looks」はJPEGオンリーとなる。他モードでRAWで撮影したい場合はメニューを「マニュアル写真」に設定すれば「JPEG + RAW」での記録も可能となる。
レンズ 3つの画角
「Leitz Phone 1」は35mm判換算19mm相当F1.9の単レンズという仕様だ。この7枚構成のズミクロンは、電子式手ブレ補正を持ち最大6倍のデジタルズームが可能となっている。
3段階の画角とそれぞれ画角間のデジタルズームでの撮影ができる。
ここではその1倍「24mm」、2倍「48mm」、0.7倍「19mm相当」(それぞれ35mm換算)での写りを見てみよう。比較に「AQUOS R6」、「LUMIX CM1」(28mm相当のみ)でも撮ってみた。
「Leitz Phone 1」は「AQUOS R6」と較べるとやや暖かみのある傾向に感じるが、「AQUOS R6」のNTTドコモ版は、7月12日にファームウェアが更新されているので変更があるかもしれない(今回の撮影時には間に合わなかった)。
大きな1型センサーということもあり、まずまずの写りだと思う。他のスマートフォンと異なり、「Computational Photography(コンピュテーショナル フォトグラフィー)」くささをあまり感じさせない仕上がりだ。しかし6年前に登場している「LUMIX CM1」の写りもなかなかではないだろうか。
背景ぼかし
「Leitz Phone 1」は大きな1型センサーを採用しているので、一般的なスマートフォンよりボケを活かした撮影が可能だが、撮影モードとして「背景ぼかし」を備えている。
やや画角が狭くなるが、効果を1~10まで変更してボケ量を表現することができる。奥行きのあまりない場面でも印象的に撮影できるのだ。「5」、「1」、「10」の3段階で試してみた。シーンによってうまく活用したい。
ナイトモード
「ナイト」という夜間撮影モードも備える。「AI」をオンにしておけば低照度時には自動的にこのモードに切り替わる。
1型という大きなセンサーなので、あえてオフにして「Computational Photography」らしくないカットを撮るのもいいだろう。3機種でも比較してみたが「LUMIX CM1」は健闘むなしく、やはり最新モデルにはかなわなかった。
連写
シャッターアイコンを押しっぱなしにするといわゆるバーストモード(連写)になる。「ポコポコポコ……」というシャッター音とともに内蔵メモリに記録された。
後述の「Leitz Looks」で撮影したが、いい雰囲気のカットになった。
作例
「Leitz Looks」はライカ・モノクロームの世界を手軽に味わえて楽しいが、個人的には「マニュアル写真」でのRAW撮影が気に入った。
特にホワイトバランスと色合い、明瞭度をコントロールしての撮影、現像しての仕上がりが面白かった。撮影時にパラメーターをコントロールしてもいいし、プリンストールされている「Adobe Photoshop Express」で現像処理をしてさまざまな調整や加工を施すのも一興だろう。
まとめ
「Leitz Phone 1」は1型という大きなセンサーなので懐が深くリッチな写りだ。遠景の精細感から、女性モデルの肌の様子、夜景の高感度まで極小センサーのスマートフォンとは一線を画した写りになっている。
注意したいのはスマートフォン的な「盛った」仕上がりでないことだ。どちらかというとデジタルカメラ寄りのストレートな写りをする性格なので、イージーに誰もが気に入る色鮮やかな写りでないことである。いわゆる「写真画質」なのだ。「Computational Photography(コンピュテーショナル フォトグラフィー)」パワーにあまり依存せず、デジカメライクな描写をしてくれる端末なのである。
また動作があまり機敏でない点にも慣れが必要だろう。画角を切り替えるのに時間を要するのでとっさの撮影には向かない。また今回試したソフトウェアでは、オートフォーカスものんびりしているので動体撮影には向かないだろう
さらに気になったのは約6.6 インチ「Pro IGZO OLED」エッジディスプレイだ。明るさや発色、表示スピードは問題ないのだが、湾曲しているエッジが曲者だ。ギリギリのフレーミング時に隅を確認しづらいのと、指がわずかに触れているだけで設定変更ができないなど問題が生じた。シャープとライカの協業「第1弾」(AQUOS R6発表ムービーより)とのことなので、第2弾以降はライカに積極的「監修」をしてもらって、より素晴らしい製品になることを希望したい。
「Leitz Phone 1」は、ライカブランドの持つ雰囲気を味わいたいのなら手に入れるべき端末だと思う。
付属品のレンズキャップは面白いし、手持ちのライカと併せて世界観を楽しむにピッタリだろう。写りもいいし、シャッターを切ってみて、自分のそれと聞き比べるのもオツなものではないだろうか。できればケースに入れず、美しいアルミフレームのローレットを輝かせて使いたいものだ。