レビュー
新型コロナ対策の接触確認アプリ「COCOA」レビュー
2020年6月19日 19:09
厚生労働省が19日リリースした接触確認アプリは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的に、PCR検査陽性者と接触した場合に通知される。今回は、リリースしたてのiOS版をレビューする。
同アプリの動作環境は、iPhone端末ではiOS 13.5以上、Android端末ではAndroid 6.0以上の端末に対応している。
インストールはApp Storeから
同アプリのインストールは、iOS版はApp Storeからインストールを行う。筆者環境では、厚生省が案内している「接触確認アプリ」の検索ではヒットしなかった。Appタブにある「おすすめの新着App」に登場していたため、こちらからインストールした。
初回起動は利用規約の合意などが必要
アプリの初回起動時は、アプリの概要や利用規約、個人情報の取り扱いに関しての案内がされる。画面下部にはボタンがあり、これで読み進めていくかたちになる。
プライバシーに関しては、個人情報を取得することはない。実際にアプリ内で入力画面が出てくるのは、自身がPCR検査で陽性になったと申告する場面のみ。個人情報は取得しないようになっている。
利用規約の画面。文字は小さいがピンチアウト(2本の指で押し広げていくようにする)すると文字を拡大して表示できる。
Bluetoothと通知の有効設定
同アプリは、アップルとグーグルの濃厚接触通知APIを有効化する必要がある。これは、端末ごとにランダムに発行された識別子を、Bluetooth Low Energy(BLE)を使った近距離通信により、半径1m以内に15分以上近づいていたと認識した場合に記録されるもの。
また、端末に記録された接触者の中で、PCR検査で陽性になったと申告したユーザーがいた場合、アプリからプッシュ通知で通知される。この機能を有効化するには、同アプリのプッシュ通知の有効化が必要。
初期設定を完了すると、ホーム画面に行く前に使い方を案内する画面に飛ぶことができる。使い方の案内では、同アプリのしくみやPCR検査陽性者との接触の有無の確認方法、自身がPCR検査で陽性になった時の手順、接触記録を停止または削除する方法を案内する。
ホーム画面
アプリのホーム画面では、「記録しはじめた日付」と「陽性者との接触の確認」、「陽性情報の登録」、「アプリの共有」ができる。
過去14日間で陽性者との接触を確認した場合、プッシュ通知のほか、このホーム画面でも確認することができる。
万一、PCR検査で陽性になったら
PCR検査で陽性になった場合、保健所などで「新型コロナウイルス感染症等情報把握・管理システム(HER-SYS)」に登録され、携帯電話番号やメールで処理番号が通知される。
アプリで、この処理番号を入力すると、通知サーバーで処理番号が正しいものかを検証したのち、他の利用者に陽性者の端末の識別子が送信される。処理番号がチェックされるため、虚偽の報告はできない。
位置情報の使用有無
iOSの設定画面から、同アプリが端末のどの機能を使用しているか確認できる。通知やアプリの更新、接触通知APIの項目があるが、位置情報の項目は表示されていない。この画面から、このアプリは端末の位置情報を使用していないことがわかる。
アプリのアップデート時の注意点
同アプリはアプリ本体の削除時に接触データをすべて消去するようになっている。
アップデートが提供された際、これまでの接触データを残しておくために、アプリを削除せずにアップデートすることを推奨している。
感染拡大防止に向けた「はじめの一歩」
「COCOA」を使うことで、ユーザーにとっては、新型コロナウイルス感染症の早期発見や早期治療を期待できる。それによってクラスター感染の防止も望める。利用にあたっては、アプリのインストール自体も簡単で、多くのユーザーにとってメリットがあるアプリだろう。短期間で開発にこぎつけた関係者には敬意と感謝を捧げたい。
現時点で挙げられる課題のひとつは、アプリの性質上、多くのユーザーにインストールしてもらうための取り組みだ。人口の6割、という表現が政府要人から出されているが、仕組み上、多くの人に利用されてこそ、十分な成果に繋がるはず。どのように周知と理解を促進するか、アプリをリリースした後の取り組みが気になるところだ。
また動作確認端末の数も気になるところ。COCOAは、リリース後、1カ月はプレビュー版(試行版)として提供される。このため、デザインや機能の改善のためにアップデートする可能性がある。より多くの人が使えるようになるため、動作確認端末をいかに増やすか、という点が、どこまでプレビュー版で解消されるかどうかにも注目したい。Android版の提供後も、機種によってはインストールができるかどうか、きちんと動作するかどうか、といったトラブルが(ないにこしたことはないが)起きる可能性はある。
課題の3つ目は、ちょっと将来的な話かもしれないが、海外渡航を踏まえた環境整備だ。グーグルとアップルの開発したAPIは、複数の国で利用されるものだが、「何をもって濃厚接触とするか」という定義は、国ごとに定められるようになっている。つまり「濃厚接触のしきい値」が異なる可能性がある。また提供主体が各国の公衆衛生機関(日本では厚生労働省)となっているように、国ごとの異なるアプリとして運用されるため、国境を越えたデータのやり取りが可能かどうか、これまで情報は出ていない。海外との往来が復活する時期を考えると、「COCOA」のような各国のアプリがどう連携するか、気になるところだ。
とはいえ、ウィズコロナ時代において、接触確認アプリは「はじめの一歩」となる。より多くのユーザーが利用する状況になり、アプリの本領が発揮される日が来ることを期待したい。