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「低空経済圏」東京から世界へ、通信各社と東京都が議論 第6回TOKYO Data Highway サミット
2025年11月21日 00:00
20日、東京都庁で都知事と通信事業者が意見交換をする「TOKYO Data Highway サミット」の第6回が開催された。
今回は「つながる東京」をテーマに、通信事業者各社が、それぞれ取り組んでいる衛星通信や6G、ドローンなど先進的なソリューションを都に説明した。「つながる東京」の方針は、2023年に策定された。多様な通信手段で通信環境を確保する考えで、東京都が3月に策定した「2050東京戦略」にも含まれる。
「低空経済圏」、東京から世界に輸出を
20日の会合には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯電話4社のほか、NTT東日本、JTOWER、NTTブロードバンドプラットフォーム、ワイヤ・アンド・ワイヤレスの合計8社が参加した。座長を務めるのは慶応義塾大学の村井純教授。東京都からは小池百合子都知事、宮坂学副知事、高野克己デジタルサービス局局長が出席した。
これまでのサミットでは、東京都が保有するアセットの解放や公衆電話へのWi-Fi設置、通信困難地域での衛星通信活用などが提言され、実際に運用が始まっている。村井座長は「東京都では大きなイベントが起こる(ことが多い)。災害と同じように力を合わせないと“つながる”は実現できない」と課題観を示す。また、デジタル技術には、通信事業者だけで整備の難しい電力が必要不可欠であり、力を合わせなくてはいけないとも話す。
あわせて、昨今普及が進むドローンについても言及。一般的に携帯電話サービスが利用される地上とドローンが飛ぶ高度では異なることから、異なる接続性が求められると話し「東京は高層ビルがある。ビルの中の人たちとドローンが飛ぶ空間を『低空経済圏』として、つながる空間にしていく考え方もある。これも東京都が見本になって世界に輸出していくようなことを考えてほしい」と語った。
小池都知事は、中東の産油国でデータセンターの建設計画が進んでいることを例に取り「エネルギーを活用して“データ王国”になろうとしている」と産業の転換を進めている姿勢に、エネルギー問題については日本も向き合わなくてはいけない問題と指摘。「データやAIの進化は日々、秒単位のもの。しっかりと活かしながら(テクノロジーを)都民の生活を安心できるものにしていきたいと思う」と話した。
災害対策にはより連携を
各社はそれぞれが手がける次世代通信や衛星通信、ドローンなどの取り組みについて説明した。
ドコモの前田義晃社長は、6GやIOWNによる次世代社会基盤の構築など、ネットワークの最適化によるスマートシティの実現などの構想を説明。さらに台風22・23号で、八丈島などでは光ファイバー切断など大きな被害を受けたことを例に取り、東京都には物資輸送で自衛隊とスムーズな連携が可能になるよう、対応強化を求めた。
楽天モバイルの鈴木和洋共同CEOも台風被害について言及。衛星通信は災害への対処に非常に有用だったと話し、ASTスペースモバイルとともに2026年にも衛星通信サービスを手がけるべく準備を進めていることを説明した。
KDDIの松田浩路社長は、インフラとスマートシティの両面で次世代の東京を形作ることを説明。同社は、衛星通信で先行しており「au Starlink Direct」が300万人ほどの利用を達成したと話す。7月に本社を移転した港区高輪で、JR東日本とともにスマートシティ化を目指して再開発を進める。
ソフトバンクの佃英幸専務執行役員兼CTOは、AI社会への到来に向けてデータセンターを構築していることを説明。ほかに2026年春ごろに向けて気球型HAPS(高高度プラットフォーム)のプレ商用サービスに向けて準備を進めていると話した。同社ではさらに「デジタルツイン」上で、未来予測をしながら実世界へのフィードバックを行い、ストレスフリーな社会を目指したいとした。
「都市型エッジデータセンター」の提案
JTOWERの田中敦史社長は「都市型エッジデータセンター」の構築を提案した。日々、増加し続ける通信トラフィックを踏まえた考えで、自動運転やXRなどでの需要が拡大する半面、場所の確保が難しいことや電気設備の確保にも時間がかかると指摘。「東京で大きなデータセンターを作るのは難しい。しかし、分散型エッジデータセンターを東京都、キャリアが協力して、AIの基盤として作っていくことはどうか」と話した。
ワイヤ・アンド・ワイヤレスの向吉智樹社長は「OpenRoaming」対応の公衆Wi-Fiの活用を提唱する。機器の設置自由度も高く、小型で設置しやすいなどの特徴を持っており、センサー的な活用も可能で「スマートシティで大きく生きてくる」と向吉社長は話した。
また、NTT東日本の澁谷直樹社長は、ウェアラブル端末やIoTセンサーなどを組み合わせた医療サービスによるウェルビーイングの向上やスマート農業・水産業による食の安全・安定供給の実現などの展望を示した。そうした社会の実現には、信頼性の高いネットワークが必要だと話し「これからのネットワークは、高容量のデータはコア側で処理し、速度が求められるものは、エッジで処理する」と予見を示した。それらをIOWNで結んだり、小型のトレーラー型データセンターを活用することになるのではないか、とした。
ほかに、NTTブロードバンドプラットフォームの加藤成晴社長は、同社が提供する各種ネットワークを組み合わせながら、東京都全体をデジタルツイン化する構想に触れる。高齢者や障害者など、自由に外出が難しい人も自由な繋がりを持てることから「誰1人取り残されない社会につながる」とした。





































