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「都主導で災害対策訓練を」、携帯各社や都が災害対策で議論 第5回Tokyo Data Highwayサミット
2024年12月16日 19:08
大規模災害に備え、東京都や携帯電話各社などの通信事業者が第5回「Tokyo Data Highwayサミット」で意見交換を行った。
会合には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのほか、JTOWER、NTT ブロードバンドプラットフォーム、ワイヤ・アンド・ワイヤレス、NTT東日本の8社と小池百合子東京都知事らが出席。「首都防衛」として、大規模災害をテーマに各社がそれぞれに行っている対策を説明した。
ソフトバンクが2つの提案
各社とも、これまでに経験した災害を踏まえて徐々に対策をアップデートしてきた経歴を説明。1月に発生した令和6年能登半島地震で得た教訓をもとに新たな対策に乗りだしたことが語られた。
ソフトバンクの宮川潤一社長は、多数の基地局が長期間にわたり停波したことや道路支障による復旧の長期化など能登半島での経験を話す。本稿執筆時点(12月16日)でも発電機で稼働する基地局が5局、光回線が復旧しておらず衛星通信をバックホールにした基地局が10局残っていると説明。3000局あまりが停波しながら34日で暫定的にでも復旧したという東日本大震災と比較して、道路寸断による影響が大きい能登半島地震の特徴を語った。
同氏はそうした経験を踏まえて東京で大規模災害が起こった場合「通信難民」の発生や放置車両などによる道路支障による通行困難が発生すると予測する。人口の多い東京で大規模災害が発生した場合の情報の寸断の影響の大きさを憂慮した。
それらを踏まえて「都心部の大規模施設活用」と「官民一体の災害対策強化」の2つの対策を提案する。避難所に指定される場所でも72時間の電源が確保される場所は少なく、その対策を都と一緒に進めることや都民向けにそれらの施設を周知するなど、情報発信強化の必要性を訴える。
宮川社長は「自衛隊と包括連携協定を結んでいるが、ヘリでの物資輸送は通信関係が後回しになる」と話し、能登半島でも物資輸送に大きな苦労があったことを話す。東日本大震災以来、公的機関と協定を結んできたにもかかわらず、もどかしい状況が続いたことを明らかにする。東京都主導でヘリでの機材運搬、緊急輸送道路の通行など、実践的な災害対策訓練を実施してほしいと訴えた。
能登半島教訓に対策をアップデート
ドコモの前田義晃社長は、被災地へ自律的に人員などを展開する初動対応の強化や事業者間での連携、避難所支援の状況可視化など、リアルタイムな情報の収集・発信などが必要だと説明した。東京都内では従来の備えに加え、能登半島での教訓を取り入れた災害対策を整備していく。加えて、スマートフォンと直接通信する空飛ぶ基地局である、高高度プラットフォーム「HAPS」の実用化も急ぐ。
KDDIの髙橋誠社長は、米スペースXの衛星ブロードバンド「Starlink」での応急復旧を紹介。回線切断による基地局停波が多かった能登半島のケースでは効果が高かった。今後の展望として、コンビニを活用した防災拠点の設置、ドローンによる物資輸送・捜索などを描く。
楽天モバイルの矢澤俊介社長は、独自の災害対策として被災や復旧状況を可視化する「BCM」(Business Continuty Manager)や基地局の予備電源の延命対策などを紹介。同社でもStarlinkが基地局のバックホールとして災害対策に活用した。今後、AST SpaceMobileとともに2026年内を目処にスマートフォンと衛星の直接通信サービスの開始を目指す。
JTOWERらも災害対策に取り組み
JTOWERの田中敦史社長は、防災上重要な設備について、屋外で輻輳しても屋内ならつながる、というような通信環境の整備が重要と説明。NTT ブロードバンドプラットフォームは、帰宅困難者への対応策としてWi-Fi スポットを高密度化し、数珠つなぎのようにして帰宅するまでを支援する考えやUPS(無停電電源装置)を備えたフリーWi-Fiスポット機能を持つ公衆電話などの備えを説明した。
ワイヤ・アンド・ワイヤレスの向吉智樹社長は、無線LANローミングの国際規格「OpenRoaming」の機能を活用した、避難所への自動チェックイン・防災担当者への通知機能など「減災」につながる防災DXを紹介。NTT東日本の澁谷直樹社長は、モバイル各社の通信を支える光回線の迅速な復旧体制やガス事業者などほかのインフラ事業者とも連携していること、地域の防災力強化に向けて平時からサポートしていることなどを説明した。
東京都としても、災害時の通信環境を重要視して対策を進める。OpenRoamingに対応するWi-Fiを2025年度内に1300カ所ほどに拡大する。小池百合子東京都知事は「コロナ禍以降、YouTubeを見たりテレワーク・オンライン教育が増えたりした故に通信が途絶したら不安に(これまで以上に)つながってくる」と通信の重要性への認識を示したほか、技術開発を支える体制づくりや事業者を含めた訓練についても責任を持って進めたいと話した。