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ソフトバンク、怒鳴り声を「怖くない声」に変換するAI コールセンターの“カスハラ”対策
2026年2月2日 16:26
ソフトバンクは、カスタマーセンターにおける「カスハラ」対策ソリューション「SoftVoice」の提供を開始した。オペレーターに届くコールセンター利用者の怒りの声を軽減し、オペレーターの心身にかかる負担を抑制する。
AIで怒りを怖くない声に変換
パソコンにソフトをインストールして利用する「ソフトフォン」を対象にアプリケーションのかたちで提供されるサービス。「怒り抑制」「警告メッセージ」「ノイズ抑制」「通話録音」の4つを主な機能とする。
怒り抑制は、AI音声変換技術を活用して通話の内容を変えずに「怖くない声」にリアルタイム変換する。アプリの操作だけで簡単に切り替えることができ、音声パターンは150種類からオペレーター自身が選べる。声質のほか、人によっては恐怖を感じる抑揚もスライダーで好みの具合におさえられる。
8kHzという狭い帯域幅で届く電話の音声を的確に認識して変換するため、AIのモデルは一般に公開されているものをベースに、6万時間ほどのデータを学習させた。エンドユーザーのパソコンに直接インストールして動作する仕組み上、軽量なソフトウェアに仕上げられている。
また、通話が長時間に及んだり暴言などが続くと、オペレーターから現場の管理者に警告メッセージの送信を依頼することで、電話をかけてきた人に対して、暴言を控えるような警告メッセージを送信できる。3段階の警告レベルを使い分けられる。メッセージの声は「いい声」だとして選ばれたソフトバンク社員だという。
当初は「Emotion Canceling」(エモーションキャンセリング)という名称で開発されており、変換した声もロボットボイスのようなものが想定されていた。しかし、コールセンターの現場からは最低限、声から感情が読み取れないと、スムーズに応対できないということから、現在の形になった。
ソフトバンク AIテクノロジー本部 AI&データ事業推進統括部 担当部長の中谷敏之氏は「怒っている声(内容)はそのままに、恐怖を取り除く」と狙いを語る。脳科学の観点から、人間は恐怖を感じると扁桃体が過剰反応し、理性を司る前頭前野の働きを抑制してしまうため、オペレーターは言葉が出なくなる。
AIで「安心できる声」に変換することで、脳の萎縮を防ぎ、本来の冷静な対応が可能になる。中谷氏によると実証実験を通じて、SoftVoiceありの場合は、なしの場合と比べて怒りの評価指標が30%以上軽減することが確認された。
義務化されるカスハラ対策、「内容はそのままで怖くない声に」
ユーザーからの声が直接届くコールセンターでは、要望の内容や利用者がおかれた状況では、ハラスメントにつながる割合が少なくない。民間の調査によるとコールセンターのオペレーターの7割がカスハラを経験したことがあるという。
オペレーターによっては「仕事に対する意欲が減退した」「眠れなくなった」など、心身へ影響が及ぶケースも多い。オペレーターを萎縮させるハラスメントの抑制は急務となっている。
一方で、クレームの正当性は公的な判断基準がなく、不明瞭なのが実態だ。脅迫や人格否定などの「明確な悪質クレーム」と、企業として聞くべき「正当な主張」の間には「主張は正当だが、言い方が攻撃的・過剰」といったグレーゾーンが多く存在する。こうした判断の難しいケースへの対応も、現場の負担となっている。
2026年10月に施行される改正労働施策総合推進法により、カスハラ対策が義務化される。企業にも本腰を入れた対策が求められることを背景に、内容は変えずに怖くない声に変換することで、オペレーターの負担を軽減する。
利用料は、10IDで5万円(税別、以下同)。11ID以降は1IDにつき5000円となる。初期費用などは不要で、導入を希望する事業者や自治体に向けて、2カ月間の無料トライアルも用意する。
中谷氏は「SoftVoiceを『従業員の心の盾』として利用してもらえれば。カスハラ対策を当たり前の社会にしていきたい」と語った。



































