インタビュー
KDDIが参画するキャリア共通API「Open Gateway」は何を目指すのか
2023年3月3日 05:00
2月27日、KDDIは世界各地の携帯電話事業者による新たな取り組み「GSMA Open Gateway」への参画を発表した。
「Open Gateway」とは、参画する事業者で共通するAPIを用意しようというもの。KDDIの髙橋誠社長は、コンテンツやアプリをグローバルに展開する事業者に向けて、新たなビジネスモデルにつながるとの期待感を示す。
その詳細について、KDDIで技術面を中心に標準化をリードする古賀正章氏に聞いた。
5Gをどうマネタイズするのか
――「Open Gateway」では共通APIを作るとのことですが、その前提として、どういった課題があったのでしょうか。
古賀氏
GSMAは携帯電話会社の世界的なグループです。そのなかでの議論で、一番関心が高いのは「5Gをどうマネタイズするのか」ということなんです。それが一番の課題として認識されています。その結果として「Open Gateway」が出てきたと。
America Movil、AT&T、Axiata、Bharti Airtel、チャイナモバイル、ドイツテレコム、e& Group、KDDI、KT、Liberty Global、MTN、Orange、シングテル、Swisscom、STC、テレフォニカ、Telenor、テルストラ、TIM、ベライゾン、ボーダフォン
――いつごろから話し合いは始まったのでしょうか。
古賀氏
話し合いを始めてから、1年も経っていないでしょうか。話し合いの初期段階から、APIといったゴールの姿はある程度、描いた上で構想として立ち上げられるよう話し合いを続けてきました。
5Gの特徴のひとつとしてよく挙げられる機能が「エッジコンピューティング(ユーザーと近い距離にあるサーバーで負荷の高い処理をこなす機能)です。また、ネットワークスライシング(サービスごとに使えるネットワークを分割するようなイメージの機能)もそうです。
もともと5Gのコンセプトとして、携帯電話会社が5Gの特徴的な機能のAPIを、サードパーティに向けて用意することは含まれていたんです。
そのAPIを今回、世界共通化することになった。たとえばコンテンツを提供する事業者が、KDDIで利用し、ほかの携帯電話会社のネットワークも使える。これまでそういう物ってなかったのです。
たとえばメタバースなど、新しいコンテンツでAPIを使っていただくことが親和性のある用途かなと思っています。
――最初から5Gのコンセプトに含まれていたんですね。
古賀氏
そうなんです。でもここまでは共通化されていなかったのです。
――どのようなAPIが今回、共通するものとして策定されたのでしょうか。
古賀氏
ひとつは「クオリティオンデマンド」です。ネットワークスライシング機能にも関わるのですが、サードパーティがアプリを利用してもらう際、一定の通信品質を要求できるようにします。
それから、アプリがキャリア経由での決済機能を利用できるようにする「キャリアビリング」というAPIなど、8種類あります。今までは、キャリアごとに独自のAPIだったものを、揃えていくということになります。
このほか、エッジコンピューティングに関するものもあります。
――アプリ開発事業者がAPIを利用する場合、キャリアに申し込むということになるのでしょうか。
古賀氏
そうです。API自体は、オープンソースで作っています。すべて開示されます。
――KDDIとしては、共通APIの議論へどういう経緯で入っていったのでしょうか。
古賀氏
KDDIは、現在、GSMAのボードメンバーを務めています。そうしたなかで、世界的にメタバースへの関心が高まる中で、先行してメタバースに取り組んでいたKDDIにも「議論へ参加してほしい」という声がかかったんですね。
世界中でメタバースやクリエイターのコンテンツはありますが、通信キャリアでそこに取り組んでいるところは、そう多くはない。
で、これまでKDDIからは「メタバースでこういうことをやっています」といった発信をしていて、それを見て議論に入ってほしいと。
――なるほど、APIを通じて、ユーザーの通信環境を一定品質まで担保するメタバースサービス、といった例を想定していく感じですね。
古賀氏
世界の通信キャリアで、5Gをどう役立てていくか、という点はずっと取り組んでいる話です。そこで評価を受けてのことかと思います。
――なるほど、ありがとうございました。