【MWC Barcelona 2025 】
エリクソン、日本にマッチする新型基地局無線機や「ネットワークAPI」のモデルケース
2025年3月7日 04:08
エリクソンは、MWC Barcelona 2025で同社が出資したAdunaを通じて提供するネットワークAPIなどの事例を紹介した。
2025年のMWCでは、例年以上にパートナーとの共同出展を強化。招待制のブースには、KDDIやソフトバンクなど国内キャリアとの共同で実施していたデモも多く見かけた。ソニー、トヨタなどの国内大手企業も、エリクソンとの共同デモを行っている。
Adunaはエリクソンが設立したネットワークAPIをハイパースケーラーやCPaaS事業者に提供する企業。半分はエリクソンが、残りの半分は世界各国のキャリアが出資しており、日本からはKDDIが参画している。ネットワークAPI自体はGSMAのCAMARA APIとして定義されているが、Adunaはこれを束ねて提供する。アプリ開発者は、キャリアと個々に契約する必要なく、直接クラウドサービスなどからAPIを呼び出せるようになる。
「銀行アプリにログイン」、キャリアの契約者情報で認証するAPI
エリクソンのブースでは、Adunaを通じて提供される、2段階認証のAPIを銀行アプリから呼び出すデモが実施された。通常、こうした認証にはSMSが使われ、4桁なり6桁なりのワンタイムコードが送られることが多いが、セキュリティの観点では懸念もある。
APIを通してキャリアに直接認証を求めることで、SMSを代替できる。ユーザー視点では、送られてきたSMSを開き、それを記憶したあと、再びアプリに戻ってコードを入力するという手間が省ける。アプリ開発者側は、APIが呼び出されるたびに従量課金されるという。
自動車内のビデオ会議、通信品質を優先するAPI
認証系のネットワークAPIだけでなく、5G SAでネットワークスライシングが導入されていることを前提に、優先制御をかけるようなAPIも想定されている。このデモは、エリクソンとKDDI、トヨタが共同で実施。レクサスの車内に設置したビデオ会議システムで、優先制御あり、なしのクオリティを比較することができた。
優先制御をオンにした場合、相手の映像が途切れずスムーズに流れていたのに対し、そうでない場合は時おり、映像がフリーズしてしまうことがあった。常時優先制御をかけるのではなく、必要なときだけスマホから有効にする際に、ネットワークAPIが活用される。
多大な投資要する5G、キャリアの収益化へAPI活用目指す
先行投資で構築した5Gのマネタイズをどうするかは世界各国で議論されているが、その1つの方法として、ネットワークAPIがキャリアやベンダー各社から注目を集めている。エリクソンブースでの展示は、こうした現状を反映したものと言える。通常、通信機器ベンダーのブースは招待制になっていることが多いが、同社は25年のMWCでオープンスペースを拡大。これもAPIを利用する開発者などにアピールする狙いがあるという。
基地局の無線機、日本にマッチ「FDDのMassive-MIMO」
MWCに合わせ、無線機の新モデルも発表している。エリクソンが日本の報道陣に向けてアピールしたのが、「AIR 3285」と呼ばれるアンテナ一体型の無線機。これは、FDD方式のMassive MIMOに対応しており、通信のキャパシティを向上させることが可能になるという。Massive MIMOはTDD方式で導入されていることがほとんどだが、これによってその他のバンドも容量を増やせるという。
エリクソン・ジャパンのソフトバンク事業統括本部 技術統括 滝沢耕介氏によると、同機は4G、5GのBnad 1/Band 3、n1/n3に対応しており、「特にアップリンクのキャパシティを上げるソリューションとして有効」だという。4T4RのMIMOと比べて、そのキャパティは「3倍から4倍に上がる」という。
また、30㎏と比較的軽量で、側面にエリクソンの特許である「ボルテックス・ジェネレーター」と呼ばれる風を逃がす機構があり、「日本のように台風が多い国でもビルの上に置くこともできる」(同)。日本では、風対策として円柱型のアンテナを設置することも多いが、その形状以上に風を拡散させる効果があるという。
エリクソンの発表した無線機は、「ハードウェア的にはOpen RANレディ」(同)だといい、会場には、同社のベースバンドユニットと富士通のRU(無線装置)を接続した状態のものも展示されていた。
6Gに向けた取り組みが少なくなったように見えた今年のMWCだが、エリクソンは7.5GHz帯~7.7GHz帯を使ったデモを実施。キーサイト・テクノロジーのテスターを実際につなぎ、通信状況が確認できるデモが行われた。滝沢氏によると、「この周波数帯は5GのSub 6に近い使い方ができる。上の方はミリ波に近いので、6Gでも低い方の周波数帯を確保しておくのが大事になる」と語った。