インタビュー

KDDI古賀氏に聞く、「5Gでキャリアが儲からない」現状に世界が取り組む施策とは

 世界の携帯電話会社は、オリジナルのサービスを追求すると同時に、たとえば通信規格はグローバルで標準化されたものを採用する。標準的なしくみのほうが、より多くの利用が見込め、その分、スケールメリットが効きやすいからだ。

 KDDIで、標準化に関する活動をリードする古賀正章氏に最新状況を聞いた。

――1年前のMWCにあわせて、「Open Gateway」と名付けられたAPIが発表されました。携帯各社の機能をAPI化するというもので、導入企業はキャリア課金のしくみを取り入れやすいといったものでしたが、1年を経て、最新状況を教えてください。

古賀氏

 当初は21社でしたが、その後、通信会社が26社増えて47社のメンバーになりました。

 ほかにも「チャネルパートナー」と呼ばれる事業者も参画しています。チャネルパートナーは、いわばAPIをとりまとめて提供する存在です。事業者がOpen GatewayのAPIを直接利用するのではなく、間に立って取り持つという。

 通信会社にとっては、5Gへの投資が重たい状況です。これは日本だけではなく世界で、です。

 5Gの基地局敷設に投資をしても、その分に見合った収入を得られていない。通信会社だけが投資を負担しなきゃいけないのか、というところでAPIが登場したわけです。

――どういった分野でAPIの利用が進みそうでしょうか。

古賀氏
 API自体は、個人向けサービスや法人向けサービス、といった垣根はあまりありませんが、やはり法人用途ですね。世界的に伸びています。たとえば金融関係が不正利用を防ぐためですとか。

 実サービスとしてはまだ道半ばですが、コンセプトだけだったものがサービスに結実してきつつある状況です。アジャイルに進んでいますので、たとえばネットワーク通信品質をある程度保証するAPIは、ネットワーク側の開発も必要ですから、徐々にというところです。

――この1年で増えたAPIにどういったものがありますか。

古賀氏
 KYC、本人確認のAPIがそのひとつです。2種類ありまして、ひとつは「コノ情報はキャリア側の情報と合っています」と返すもの。

 もうひとつは、「住所を教えて」といった場合に、APIを叩けば返すといったものです。API自体は広く公開するものではなく、キャリア側と開発者側がきちんと交渉して契約するものです。

――なるほど。たとえばKYCのAPIを使えば、au IDでログインできるサービスを開発できるとか。

古賀氏
 まさにそんなイメージです。KYCのAPIでは住所、お名前、生年月日といったものです。もちろん個々人のお客様の同意が必要です。

 アプリ・サービスを提供する事業者も、そういった情報をなかなか保持できません。

――API以外では、ほかにどんな動きがあるのでしょうか。

古賀氏
 ひとつはRCSです。日本では「+メッセージ」として導入されていますが、世界的には普及していません。

 ただ、欧州での規制の動きもあってか、2023年、アップルがRCS導入の方針を示しました。欧州では、ゲートキーパーと専門用語的に呼ばれますが、トラフィックを支配しているような存在は、サービスに相互接続性を持たせなければいけないとなったんですね。それが影響したと言われています。

 そうした流れで、グローバルでRCSももっと力を入れていこうという方向になっています。世界中でRCSの相互接続に向けて、まさに動いています。

――国際SMSだと、送信元を詐称できるようになっていましたが……。

古賀氏
 RCSだとそれも防ぐことができますね。

――なるほど、ありがとうございました。