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NTTの生成AI「tsuzumi」が商用化、日本語性能・低コストなど武器に浸透目指す

 NTT(持株)は、同社が開発した大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」を商用展開する。すでに500以上の導入相談があるとしており、同社ではパートナー企業とともにサービス展開に向けて取り組む。

冒頭では鼓奏者・能楽師の森澤勇司による鼓演奏が披露された

すでに500以上の導入検討

 tsuzumiは、2023年11月に発表されたNTTが独自に開発したLLM。グローバル企業が開発したLLMと比較して非常に軽量で、日本語に特化しており、チューニングしやすい、画像の解析、聴覚への対応が可能などの特徴を持つ。NTTの島田明代表取締役社長は、ヤマト運輸や東京海上日動、福井県など500を超える企業・団体から導入相談があることを明かし「正直に言って、嬉しく思っている」と満足げな表情を見せた。NTT 研究開発マーケティング本部長の大西佐知子常務執行役員によれば、多くは国内企業が中心だが1月に入ってから海外からも数十件の問い合わせがあったという。

右=NTT 島田社長

 日本語に特化した性能が大きくアピールされており、当初よりも対GPT-3.5における勝率が30%向上したという。学習データの向上によるところが大きく「どう答えたらよいか」などのフォーマットも研究を重ねており、性能向上につなげた。tsuzumiのバージョンアップについては、内部的には頻繁に行っているとしつつ、ビジネス的な部分では顧客との相談のうえで進めていく。

 商用展開では、NTTグループ外での活用が多く示されている一方、グループ内での活用としてはNTTドコモのカスタマーサポートを担うコンタクトセンターやチャットボットでの導入、ネットワーク運用やセキュリティにも活用していくという。コールセンターのマニュアルなどの学習はすでに始めており、準備ができ次第運用を始めていく。

 tsuzumiには、スマートフォンでも動作するという超軽量版も存在する。こちらはすでに2月に完成しており利用するユーザー企業と提供するかたちを議論しているところとされた。

さまざまな産業で導入図る

 今回の商用化にあたってはオンプレミス、プライベート・パブリックのクラウドと3つの環境とCX、業界・業務別EX、IT運用サポートと同じく3つソリューションメニューが用意されており、これらを組み合わせて使える。

 CXソリューションでは、コンタクトセンターでの自動要約や情報抽出などで対応顧客の通話待ち時間の削減などが期待される。デジタルヒューマンとtsuzumiを組み合わせることで顧客の要望に応じた製品の提案や専門家への引き継ぎなどの実証を進める。

 EXソリューションでは、民間企業のみならず自治体の会議議事録作成・要約のほか、製造業の業務マニュアル作成に加えて金融業、流通など幅広い分野で生産性向上を図る。特にプライベートクラウドなど安全性を確保した環境で利用できるtsuzumiは気密性の高いデータの取り扱いでもアピールする。福井県とともに県民サービス向上に向けて庁内で生成AI利用の実証実験を進める。千葉大大学では医療分野でインフォームドコンセントでのAI活用に向けて実証を行うという。

 IT運用サポートソリューションは、マルウェアの対処やセキュリティ人材の不足を補うことを目指す。NTTによれば、多くのセキュリティアラートは過検知であり、生成AIを活用することで人間の負担を軽減する。

企業とのパートナーシップも

 パートナープログラムも展開する。tsuzumiのAPIを一部無償提供することで、サービスへの組み込みのほか特化モデル開発、インテグレーションを促進するとしており、募集は5月から順次始まるという。

 また、都市部の企業がtsuzumiで地方のDXを推進する地方創生事業を実施する。働き手やノウハウの少ない地方企業を、都市部の企業がtsuzumiの活用をはじめとしたDXスキル向上やtsuzumiの社会実装などで支援する。今夏にも能登の支援から始まる。さらに業界や業種特化型のLLMを多言語展開し、グローバル展開を進めていく方針も明かされた。

 今後、tsuzumiを含めたAIを利用するユーザーを対象に、使用実例などを共有できるメンバーズフォーラムを開催。NTTでは、複数の小型LLMを連携させてさまざまな分野に対応する「AIコンステレーション」という構想を掲げており、島田氏はパートナー企業とともに実現へ向けて取り組むと意気込みを示した。