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モバイル売上がついに増収に転じたソフトバンク、宮川社長「ペイトクが好調」
2024年2月7日 23:10
ソフトバンクは7日、2024年3月期第3四半期の決算を発表した。同日に開催された会見には、ソフトバンクの宮川潤一代表取締役社長が登壇した。
宮川社長は冒頭、令和6年能登半島地震の復旧状況に関して言及した。地震発生から1カ月以上が経過する今も、完全復旧には至っていない。いまだに現場へ到達できていない地域もあるといい、「2011年の東日本大震災のときとはまったく違う復旧の難しさを感じている」と宮川社長は語る。
第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比1661億円(3.8%)増の4兆5116億円。営業利益は前年同期比2501億円(25.5%)減の7319億円、純利益は前年同期比1291億円(20.4%)減の5027億円だった。
モバイルサービスなどのコンシューマー事業の売上高は、前年同期比59億円(0.3%)減の2兆1218億円を記録した。
第3四半期連結累計期間のモバイル売上は、2021年春に実施した通信料の値下げ影響の縮小などにより、前年同期比での減少幅が大きく縮小。前年同期の566億円減少から、第3四半期連結累計期間では38億円(0.3%)の減少となった。
宮川社長はモバイル売上高について「ついに増収に転じた。通信料値下げに影響を受けた減収トレンドが3年間は続くと覚悟していたが、2年半で抜け出せた」とコメントした。
スマートフォンの契約数は、「ワイモバイル」ブランドを中心に増加。5%の増加となっている。
会見では、ソフトバンクが進める次世代社会インフラの構築の進捗なども紹介された。
全国に分散配置するAIデータセンターでは、データセンター同士をつなぐために大容量で省電力のネットワークが必要になる。これについて、「光電子結合ネットワーク」の全国展開が完了し、2023年10月に富士通との共同発表に至った。消費電力を大幅に抑え、データセンターの一体的な運用が実現している。
国産の大規模言語モデル(LLM)については、3900億パラメーターの構築に向けて取組みを進める。マルチモーダルへの対応も進めつつ、将来的には1兆パラメーターを目指していくという。
グローバルでは、2023年12月にアイルランドのCubic Telecomへの出資を発表。51%の株式を取得して子会社化した。コネクテッドカー向けのグローバルIoTプラットフォームを手掛けるCubic Telecomの子会社化により、AIサービスの国外展開などを視野に入れる。
質疑応答
――Appleが「Vision Pro」を発売した。期待感は。
宮川氏
すばらしい構想だと思いますが、もう少し安くならないと(編集部注:Vision Proは日本円で約50万円)、それを購入して楽しんでいただけるお客さんが増えていかないかなと思っています。
ただ、このVRやXRの世界は、Appleほどの企業が動き出すことによって加速していくだろうと思います。
――令和6年能登半島地震の復旧の見通しは。
宮川氏
本当にわかりません。東日本大震災は大きな地震でしたが、北からも南からも、復旧支援はしやすかった。今回は海からもなかなか入れず、エリアの割には相当手こずっているのが事実です。
完全復旧という点では、やはり我々は電力の復帰を待ってからということになります。その間は発電機を回しながら、暫定的に復旧しているという環境です。
――モバイル事業が増収に反転した要因は。
宮川氏
「ARPU(契約者ひとりあたりの平均収益)が下がっても、全体の面積(契約者数)が増えれば補える」とお話してきましたが、ARPUが下がるということについて、一定の歯止めがかかってきたということです。
要因としては、我々が投入してきた新プランも効いています。ARPUが落ち着いて、ユーザーの拡大も順調に推移していますから、面積が増えた分、業績が上がってきたということになります。
――ARPUに影響を与えている要因は。
宮川氏
同じ第3四半期を単体だけ見ると、昨年は210円ARPUが下がって、今回は100円下がってという構造です。
「ペイトク」のような新プランは、どちらかといえばARPUを上げる要因で、ARPU上昇というカテゴリーとしては非常にありがたい。実は今、(ペイトク)が結構好調であり、その分が効いています。
――どの程度好調なのか。
宮川氏
定量的なものは発表しないと聞いておりますので、ちょっとご勘弁くださればと思います。
――KDDIがSub6の出力を拡大して、首都圏のエリアを一気に広げるという話がある。衛星との干渉条件が緩和されるということで、ソフトバンクも恩恵を受けるのでは。出力を上げるなどして、5Gのエリアを拡大する方向性はあるのか。
宮川氏
スカパーさんに相当協力いただきまして、衛星干渉がなくなってくるということで、我々も出力を上げられますから、首都圏はさらにつながりやすくなります。ですから、(KDDIと)まったく同じ構造です。
特に我々の場合は首都圏であっても3セクターの展開をしていて、もっと効きやすい状態になると考えています。
――NTTドコモが、「ソフトバンクの通信品質に関する広告は、優良誤認になるのでは」と言っていた。これに関する受け止めは。
宮川氏
あ、そういうことがあったわけですね……(笑)。ちょっとごめんなさい、詳細は把握しきれてなくて大変申し訳ないんですが、これまでも「どこがつながる」「どこがつながらない」というのは、各社でいろいろやりあってきました。
たとえばOpensignalやうちの(グループ会社の)Agoopのデータを見て「No.1だぞ」っていう話を聞きながら、現場が調子こいたんでしょうねぇ(笑)。
すみません、ちょっと確認しておきますが、ドコモさんも本当に一生懸命頑張られていると思っています。ですから決して我々だけがつながりやすいというわけではなくて、しのぎを削っているとご理解いただければ。
――NTT法に関する最近の状況をどう受け止めているか。
宮川氏
(NTT法廃止が)2025年度ありきということについて違和感をおぼえたままですが、総務省のなかで3つのワーキンググループが立ち上がって、これから本格的な議論が始まるという段階です。
そこで我々も、「こういう懸念がある」ということは主張していきたいと思います。
もしNTT法が廃止されてほかのもので代替するということであれば、それが本当に機能するかどうかを細かくチェックさせていただこうと思っています。
彼らが保有している特別な資産と言われているものがリスクにさらされることがないよう、あるべき制度について丁寧に議論していきたいです。
直近ではIOWNの半導体に、国が支援をするという発表がありました。「それ見たことか」という気持ちで僕は見ていました。
半導体というのは好不況の波が激しい業界ですから、これがもしダメになったときに「光ファイバーの値段を10%値上げします」というような決着があれば、それは本当にやっていけないことだと思います。
「これはこれ、それはそれ」という分離をするやり方を心底望んでいますから、それを主張していきたいです。