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テクノロジーに再びワクワクを、Nothingが“デザインの透明性”で目指す世界

 部品が見える透明な背面に、着信に合わせて光るしかけ――2022年7月に登場した「Nothing Phone (1)」は当時、そのユニークなデザインで大きな話題となった。それから一年後の2023年には、後継機として「Nothing Phone (2)」が登場。先代のデザインは踏襲しつつ、ハイエンドモデルへのアップグレードを実現した一台となっている。

 英国に拠点を置くNothing Technologyは、いったいどのようなデザイン哲学を掲げているのだろうか。11月23日に京都・上七軒歌舞練場で講演会が開かれ、同社デザインディレクターのアダム・ベイツ(Adam Bates)氏と、ブランディング&クリエイティブディレクターのライアン・レイサム(Ryan Latham)氏が、デザイン哲学などについて語った。

透明なボディは信条のあらわれ

 ベイツ氏は、かつてダイソン(Dyson)でデザイン責任者を務めていた経歴を持つ。ダイソンでは「ゼロから作って学ぶ」社風があり、早期にプロトタイプ(試作品)を作ることが多かったという。

ベイツ氏

 Nothing創立者のカール・ペイ氏について、ベイツ氏は「スマートフォンを知り尽くしており、作り変える方法を知っている」とコメント。拠点の英国・ロンドンについては「ファッションの発信地であり、クリエイティブな拠点」と語る。

 そんなNothingが掲げるのは「デザインの透明性」。これはデザインなどのアイデアについてオープンであり、隠さず外部に開示することを意味する。

 「我々の製品が透明なのは信条が形になった結果」とベイツ氏は語る。近年のスマートフォンなどは基本的に内部が見えない構造になっているが、透明な本体を採用することで「楽しさがアップする」。

 デザインにおいては「机上の空論にとらわれない」ことも重視するNothing。ハードウェアとソフトウェアの技術者が同じスペースに集まり、製品の試作や開発に勤しんでいるという。

 また、たとえば製品のパッケージングには、「あらゆることを問い直す」というNothingの哲学が生きている。「スマートフォンのパッケージは決まっているが、それはつまらない」(ベイツ氏)という考えから、まるでお菓子の箱のようなパッケージが生まれた。

 ベイツ氏は「テクノロジーにはどこか不気味なイメージもあるかもしれないが、それを楽しくしたい」と語った。

テクノロジーと“ぬくもり”を掛け合わせる

 Nothing Phone (2)のデザインを手掛けたレイサム氏にも、ベイツ氏と同様、ダイソンで勤務していた過去がある。同氏はかつて、ダイソンのマーケティングディレクターとして働いていた。

レイサム氏

 レイサム氏が強調するのは「テクノロジーのぬくもり」。進歩すればするほど無機質なものになりがちなテクノロジーに対し、人間性の素晴らしさを掛け合わせる。

 たとえばフルワイヤレスイヤホン「Nothing ear (1)」では昆虫がコンセプトとなり、ビジュアルにてんとう虫が用いられた。この理由についてレイサム氏は「昆虫は小さな機械のような構造をしている。(昆虫を使うことにより)機械に人間らしさがもたらされると考えた」とコメント。

 「Nothing Phone (2)」のビジュアルに用いられているのは半透明のタコ。本体背面の光にタコが魅了され、夢中になって遊ぶ様子が表現されている。

 Nothing Phoneの光る背面は「グリフ・インターフェイス」と呼ばれており、単なる装飾にとどまらない機能性を備える。たとえばフードデリバリーの到着予定に合わせて光の表示領域が増えていく機能があり、スマートフォンを触らなくても必要な情報が得られるしくみだ。

 レイサム氏は「(グリフ・インターフェイスは)デザインという枠を超え、スマートフォンの使い方という概念も変えるもの」と自信を見せた。

 ベイツ氏は「人々はあまりにもスマートフォンに夢中になっている」とコメント。グリフ・インターフェイスの効果について、同氏は「本当に重要なことに集中できる」と語る。

トークセッションや交流会も

 講演後には、スマイルズ取締役社長兼CCOの野崎亙氏や、京都精華大学デザイン学部准教授の蘆田裕史氏を交えたトークセッションが開催された。蘆田氏からは「スマートフォンをそもそもなくす方向は考えなかったのか」という質問も。

 これに対しベイツ氏は「それも当然考えたが、タイミングもある。現段階では人々にとってスマートフォンは重要。そのようななかで状況を改善するために、グリフ・インターフェイスという結論に至った」とコメントした。

 レイサム氏は「今日、ここの会場にいる人がみんな違う服を着ているように、人には個性がある」とコメント。「今はスマートフォン端末や音楽プラットフォームなどが画一的になっている。(Nothing製品が)個性的なものへのニーズに応えられれば」と語った。

 Nothingでは今後、日本市場への注力を強める考えがあり、今回のイベントはその足がかりになるものとして位置づけられているという。講演会とトークセッションのあとは交流会が開かれ、ベイツ氏やレイサム氏は一般参加者の声に熱心に耳を傾けていた。