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ドコモ、増収増益の決算――新プランで端末販売・サービス契約が上向き

 NTTドコモは、2023年3月期第2四半期決算を発表した。売上高は2兆9464億円、利益は5808億円と前年同期比で増収増益だった。

通信事業は82億円の増益

 コンシューマー向けの通信事業での売上高は1兆6703億円、利益は3353億円と減収増益。スマートライフ事業の売上高は5210億円、利益は1034億円とこちらは増収増益だった。

 コンシューマー通信とスマートライフ事業が増益したことで、法人事業の減益をカバーし、全体では対前年比で増益となった。スマートライフ事業は新規領域への投資が利益に影響をもたらしたものの、最終的には2億円の増益だった。

 コンシューマー通信では、値下げによる影響があったものの上位プランへの移行促進やコスト効率化により82億円の増益を達成。これまでに比べ、主要サービスの契約率が上がっており、低容量帯を支えるirumoによりライトユーザーの解約率も改善した。井伊社長によれば、eximoとirumo影響でドコモショップへの来店者数も増加しており、端末販売台数も増加したという。

NTTドコモ 井伊社長

dカードなど伸びる、マネックスと新サービスも提供へ

 スマートライフ事業では、金融決済とマーケティングソリューションの2つが伸びた。金融決済取扱高は6兆3200億円、うちdカード取扱高は4兆5100億円で前年同期比それぞれ22と18%増となった。一方、マネックス証券との提携で金融サービスを強化。ドコモの顧客基盤のデータとマネックス証券のサービスをかけあわせた新サービスで金融事業のさらなる拡大を図る意向を示した。

 マーケティングソリューションも460億円と前年同期比で17%増益。井伊社長は2023年度通期で約1000億円超の収益を目指すとした。同事業では、これまでのドコモとパートナーのデータのかけあわせだけに限らず、インテージホールディングスによるデータ分析にも取り組む。

回線品質は継続して改善、Starlink Businessは年内提供

 ネットワーク関連の取り組みでは、自社運用の静止衛星「ワイドスターIII」に加えて「Starlink Business」も年内に提供する予定。一方、オープンRANでは「OREX」として自社ネットワークのみならず海外の通信事業者に対してアピールする。

 また、つながりづらいなどの声が多く聞かれるようになったことに対しては継続的な品質改善を約束。同社では東名阪を中心とした全国で2000カ所以上、また50以上の鉄道路線での品質改善策を急ぐ。12月までに90%以上を完了し、2023年度末までに100%の達成を目標に取り組む。

NTT 島田社長、NTT法見直しであらためて立場を主張

 先行して行われたNTTの決算会見で島田社長は、あらためてNTT法の見直しをめぐる同社の考え方を表明した。

NTT 島田社長

 競合他社が懸念する、ドコモとNTT東西の一体化についてはあらためて否定。電気通信事業法を遵守し、他社にも公平にネットワーク提供を行うとした。また、NTT法では、NTTに対して撤退不可能な電話サービスの提供義務を定めているが、同法が廃止された場合でも、電気通信事業法で特定事業者に対して、同様の責務を課すことは可能と、他社の主張を退けた。

 電話のユニバーサルサービスについて、競合他社が固定電話がいまだ6000万回線あるとするのは誤解にもとづくものであるとする。NTT東西の「ひかり電話」はユニバーサルサービスの対象外であることから、NTT法で定められるあまねく提供義務は約1350万回線の加入電話や公衆電話などになるとした。

 このほか、外資規制は外為法のほか事業法などほかの法令も含めて検討すべきとあらためて主張。公社時代から受け継いだ資産は、政府に株を割り当てた時点で政府に帰属。その後2/3は民間に売りに出されたことから、その分は民間の株主に帰属するとする。

 島田社長は、NTT法のような特殊法人法は世界にほとんど例がなく、欧州や英国では同様の議論の末、廃止されていることから「世界では20年前に終わっている。世の中は変わっているのに20年経って同じ議論をまたするのか?」とも語り、未来に向かって進むべきだとした。

質疑応答

――端末販売について、概況と来店客が増えたことによる販売増ということだが具体的にどの程度増えたのか?

井伊氏
 端末市場は楽な状況ではありません。円安もあり端末価格が高くなっていて、特に海外製品は高くなっているので買い控えは続いています。分割で毎月安い支払いで購入できるようにユーザーに新しい端末の購入を進めているところです。

 7月の新プラン発表で、来客数が増えました。その時に「端末の取り替えはいかがですか?」とおすすめするきっかけが増えるということです。対前年で毎年2~3割、来客数が減っていたことを考えると1年前に戻ったかなと。2割ぐらいは戻っている感触です。

――総務省が端末値引きについて新たな方針を正式発表した。これの受け止めは?

井伊氏
 これまでも申し上げてきましたが、1円端末などはやはりあまりに不適当であると考えていました。そういった安売りにより「転売ヤー」といった存在が出てきてしまったという深い反省を踏まえると、今回の総務省の提案はリーズナブル(妥当性がある)かなと。

 一律に決めるのではなく、端末の価格帯に応じて値引き額を決めるというのは納得感があります。これにより端末の不当廉売といいますか、不当ではないと思いますがあまりの安売りを避けて許容された割引幅のなかで買っていただくと。

 今回、我々がコンシューマー通信事業で増益したのは通信機器販売の利益率の改善があります。過度な値引きをしないことで売れ行きも若干悪くなるんですが、結果的には増益につながりました。数が多少減ってもきちんと利益が出る水準で端末を売ることをこの上半期徹底しましたので、これが利益に効いてきました。機器純増には効いてませんが、やはり利益を出すのが我々の使命。そういったやり方で対応していきます。

――eximoの割合が増えているとのことだが、基本的な料金水準は5Gギガホプレミアと変わらない。なぜ増えたのか要因を教えて欲しい。

井伊氏
 irumoのほうは3GB/880円でインパクトがあり、先にすごく売れました。しかしそれはあまり容量をお使いにならない方にとって非常に魅力的だったということでした。その後、1~2カ月と経つにつれて無制限プランもあるeximoの人気が出てきました。home 5Gやイエナカ機器補償などセットで申し込んでいただくというふうに販売していますが、それが功を奏して非常に人気が出てきています。

 まだまだ認知度が足りていないとも思っています。他社の類似のプランに比べますと、ここでもっと認知度を上げて加速させていきたいということで、私は今の数字に満足していません。もっとプロモーションしていきたいと思っています。

――他社では金融サービスとの連携プランもあるがどう見ているか?

井伊氏
 金融商品とのバンドルプランは、我々はまずバンドルするものがありませんでした。やっとマネックス証券と動きますが、本当に料金プランで強くバンドルしちゃうのがいいのか? それとも料金プランにあわせておすすめして買っていただくサービスミックスがいいのか、両方があると思っています。

 今のところは両方を組み合わせる方式で売っていますが、他社さんが先行してそういうプランを出されていてバカ受けするならキャッチアップしなきゃいけないなと思いますが、いまのところはまだ考えておりません。

――総務省で端末値引きの結論が出たが、値引きが進まないことで5Gの普及が遅れるのではないかという懸念がある。現在のドコモの5G普及率と今後の拡大に向けた策は?

井伊氏
 私どもはもともとのスタートの仕方として「瞬速5G」ということでSub6を使った5Gのエリア構築にこだわり、先行してきました。最近になって既存周波数を組み合わせた5Gを始めたところです。

 今の状況で見ると約2400万ほどの5Gユーザーがおりますのでそういった意味ではもう50%を超えて60%近い普及率というふうに見ています。既存周波数を使った5Gをもっと拡大していくということで、面的な広がり、人口カバー率を年度内に90%以上とした当初の目標を達成したいと考えています。

――楽天モバイルが700MHz帯を獲得した。ドコモ提案によるものだったが受け止めは?

井伊氏
 プラチナバンドは、過去にさまざまな議論がありました。既存の周波数帯を流用するのであれば、時間もかかりますしお客様対応にも大変な稼働がかかります。未利用バンドがあるのではと追求して提案しました。

 その方がスピード感をもってプラチナバンドのプラスができると考えてましてそのほかの周波数との干渉がないかどうかみたいな技術的な検討も協力しました。あとは強くご希望された楽天モバイルがしっかりネットワーク構築して活用していただければと思っています。

――プラチナバンド獲得に手を挙げなかった理由は?

井伊氏
 我々は今、プラチナバンドの帯域をたくさん持っていますし、設備投資の優先順位で考えるとSub6など5G領域への投資を優先させたいということです。あえて今回の700MHz帯には応募しませんでした。

 決していらないわけではないのですが、お金は有限ですので優先順位の問題です。