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ソフトバンク23年上期は“増収増益”、法人事業が好調で通信料値下げの影響はまもなく反転へ

ソフトバンク代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川 潤一氏

 ソフトバンクは8日、2024年3月期の第2四半期連結決算を発表した。連結売上高は、前年同期比1252億円(4.5%)増の2兆9338億円、連結営業利益は、前年同期比275億円(5.7%)増の5144億円の増収増益となった。ファイナンスやコンシューマー事業は減益となった一方、メディア・EC事業や法人向け事業などが増益となっている。なお、連結純利益は29%増益の3021億円となっている。

 決算説明会で同社代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川 潤一氏からは、決算の内容のほか、質疑にてNTT法の議論の在り方や、楽天モバイルのプラチナバンド開設計画に関する思いなどが説明された。

コンシューマー事業の減収はそろそろ反転へ

 コンシューマー事業の売上高は、1兆3803億円で前年同期比で0.4%の減収となった。一方、宮川氏は「売上高の前年同期比減少額は縮小傾向」とし、2024年度通期での反転は「視野にはいっている」(宮川氏)とコメント。

 また、営業利益は3096億円と2%の減益となっている。

 主要回線の純増数は、23年度上期で40万、スマートフォン純増数も63万としている。スマートフォンの累計契約数は、前年同期比6%増と順調に推移し、11月には3000万契約を突破したことを明らかにした。

 ソフトバンクブランドでは「ペイトク」プラン、ワイモバイルでは1GBあたりの単価を下げた「シンプル2」プランが提供開始となり、順調に推移していると説明。ペイトクの無制限プランについては、「本当に好調。今まで数を稼いでいたのはワイモバイルブランドであったが、今はペイトクの無制限プランの方が数字として勢いがあると感じている」(宮川氏)とコメント。

 2つのブランドの新プランについては「本当は、ワイモバイルの新料金の方が受け入れられやすいと個人的に思っていたが、ソフトバンクの方がよく、ちょっと自分の感覚とは違っていたなと思っている」とした。

 「ペイトク」プランでは、PayPayなどの決済サービスでポイント還元率が上昇するようになっており、「販促費をばらまいているのではないか?」という指摘があると宮川氏は話す。宮川氏は「ヤフーやPayPayなどのサービスを利用しているユーザーの解約率は下がる。両方にメリットがある」とし、同プランの意義をあらためて説明した。

 ユーザーあたりの単価(ARPU)について宮川氏は「新プランの導入で、少し上向きにかるとは思っているが、いろいろな競争もあり全体的に見るとこれから数年は横ばいになると見ている」とした。業績への影響については、ユーザー数の純増が続いているとし、母数が増えた分良くなっていくとした。

法人向け事業は増収

 法人向けのエンタープライズ事業では、ソリューション好調の波をうけ5%増収の3794億円の売上高、15%増益の819億円の営業利益となった。

 ソリューションの売上について、継続収入が18%増加しており、今後の堅調さをアピールした。

 宮川氏は、エンタープライズ事業の成長戦略として「ヘルスケア領域」と「Autonomous Building(スマートビル)領域」を挙げる。

 ヘルスケア領域では、住友生命とソフトバンク傘下のヘルスケアテクノロジーズが資本業務提携を締結し、ウェルビーイング領域の新サービス開発へ取り組んでいる。スマートビル領域では、日本最大の組織設計事務所である日建設計との合弁会社「シナプスパーク(SYNAPSPARK)」で、データ連係により自律運営するビルの普及を図ることが説明された。

メディア・EC事業は2%の増収

 ヤフーやLINEなどが入るメディア・EC事業の売上高は2%増収の7778億円、営業利益は28%増益の1090億円となった。

 Zホールディングスやヤフー、LINEを含めたグループ再編を実施しており、サービスをまたいだクロスユースの推進や、生成AIを活用した検索体験の提供、それぞれの会員を自社のECサービスへ誘導する取り組みを実施していく。また、金融サービスの連携や整理を行い、成長への取り組みを加速させていくとした。

ファイナンス事業

 なお、ファイナンス事業については、2022年度第3四半期にPayPayを子会社化したことにより、売上高は1095億円で増収、営業利益は-20億円の減益としている。

 PayPayの影響を含めた営業利益をあらためて試算すると、前年同期の営業利益は-92億円であったとしており、これと当期の-20億円を比較すると「実力値では大幅に改善」としている。

 PayPayにあたっては、2023年度上期の連結売上高は、前年同期比+33%の995億円となっているほか、台湾のキャッシュレス決済サービスと連携し訪日外国人への決済サービス提供への取り組みを進めている。

 また、SBペイメントサービスにおいても、前年同期比21%増の3.8兆円の決済取扱高となっており、非通信系の決済も順調に推移している。

 PayPay証券では、PayPayポイントを活用したポイント運用の累計運用者数が1200万人を突破した。

HAPSなど非地上系ネットワークの進捗

 宮川氏は、低軌道衛星などを活用したネットワークである非地上系ネットワーク(NTN)について、ソフトバンクでの取り組みの進捗について説明した。

 ソフトバンクでは、高度順に通信衛星の「OneWeb」、低軌道衛星の「Starlink Business」、成層圏通信プラットフォームの「HAPS」を活用し、地上ではカバーできないエリアへの通信サービス提供へ取り組みを進めている。

 HAPSについて、総務省所管の情報通信研究機構(NICT)から2つの委託研究を受託していると宮川氏は説明。ひとつは「災害時の応急エリアカバレッジ」として、災害時に基地局が利用できなくなった際のエリアカバー時に、運営を継続できている基地局の電波と干渉しないよう自動制御するシステムの開発をすすめている。ふたつめには「HAPS通信の高速・大容量化」をあげ、NTN全体でお互いが補完しあってブロードバンドサービスを提供できる構造にする研究を進めているとしている。

 HAPS関連では、ルワンダにおけるHAPSの実証実験として、低温度下でも動く5G通信機器を自社開発し、ルワンダにおけるデジタル格差や教育格差の解消を目指す取り組みも進めているとしており、ソフトバンクのHAPS関連の取り組みは、着実に進んでいる旨をアピールした。

AIデータセンター

 宮川氏は、10月のSoftbank Worldでも取り上げたAIデータセンターについても説明。AI処理に関わる計算基盤を、日本全国に分散配置することや、グリーンエネルギーを調達して運用する取り組みについて、進捗していることをアピールした。

 たとえば、北海道のデータセンター「Core Brain」は、すでに第1次工事が完了しており、2026年度の開業に向けて進めている。

 また、日本語国産LLM構築への取り組みや量子コンピューターの実用化に向け、理化学研究所との研究開発も推進しているとした。

 理化学研究所との研究開発では、量子コンピューターの欠点やデメリットを補うべく、スーパーコンピューターとの連携や協調ができるようプラットフォームを整備し、実用化に向けた取り組みを進めている。

 宮川氏は、生成AIに対する考え方として「米国や中国にはGPT 4.0相当のものがあって、日本にもしなかった場合、すべて輸入に頼る環境になってしまう。チャレンジできるのであれば、国内の内製で作り上げ、貿易に頼らない構造作りができるなら、しっかりとやっていきたい」とした。

 また、将来のGPTとして宮川氏は「日本の文化や歴史に関する知識があったり、昔の古文が読めたりそういったものは米国の視点には入っていない。やれるチャンス、やれる人材、至近もなんとかなるとなれば、今日本でやるべき存在ではないかと思っている」とAI事業に関する取り組みの姿勢を示した。