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ワンクリック契約やプラチナバンドなど、楽天モバイルの三木谷会長が決算の質疑応答で語ったこと

 楽天グループは12日、2023年度第1四半期決算を発表した。本稿では、楽天モバイル代表取締役会長の三木谷浩史氏らが登壇した質疑応答の様子(一部)を紹介する。

 なお、楽天モバイルが展開するモバイル事業について、同第1四半期の売上収益は579億円を計上。前年同期比で25.3%増となった。

三木谷氏

――オンラインでのワンクリック契約はかなり画期的でびっくりしたが、一方でデータ通信契約しかできないというのはちょっと残念だなと思う。「(音声契約付きのSIMについて)可及的速やかに対応したい」としていたが、現状は何が課題で対応できないのか。具体的なスケジュールがあれば知りたい。

三木谷氏
 海外だと欧州を中心に、ポストペイドについて本人確認は不要になってきています。一方、日本は役所さんの指導で、ボイス(編集部注:音声契約付きのSIMを指しているとみられる)については本人確認をしてほしいということになっています。

 ただ、よくよく考えてみますと、楽天カードや楽天銀行、楽天証券など、すでに本人確認ができているものが多いわけです。よって、これらを流用させていただくということで調整ができています。

 そこのインターフェイスを作るというところで、約2カ月遅れくらいでボイスについても始められるかなと。ワンクリックというところに限って言えば、本人確認が済んでいる方は楽天グループでたくさんいて、そこが他社さんとの大きな違いなのかなというふうに考えています。

 (ワンクリック契約について)データ通信は6月中に始めて、それ以外の人についても、2カ月遅れで開始する予定ですので、大変期待してください。

 1日4000万人ぐらいが楽天に来ていますからね(編集部注:楽天の月間アクティブユーザーのことを指しているとみられる)。その方が「Rakuten最強プラン」を試したいとなった場合、特にiPhoneだとプロファイルがいっぱい入りますから、それを使っていただいて、そこからボイスにもう1回乗り換えていただくということを考えています。

 ……なかなかすごいでしょ、これ。

――画期的でちょっと驚いている。

三木谷氏
 SIMっていうものをベースに、(携帯)業界は自分の島を守ってきたんだと思うんですよね。物理的なSIMで縛ることによって。

 僕らは(楽天モバイルの料金プランを)最強だと思っているし、価格も最強だと思っているけど、いくつかのハードルがあって「乗り換えにくい」とか「本人確認がめんどう」とか。そういうところをすべて取っ払っちまえと、まあそういうことです。

――もともと楽天モバイルはボイス込みのプランだったと思うが、新たにデータプランのようなものを始める理解で合っているのか。

三木谷氏
 基本的に料金は一緒なんですが、“お試し”をまずやっていただく方々に、データSIMというかたちで提供するということです。

 パッケージについては“無限”で、料金体系については変わらない。で、ボイスを使いたいということであれば、2カ月程度経って準備ができたら、乗り換えていただくかたちにしていこうと思っています。

――KDDIとのローミング契約によって、プラチナバンドのスケジュールや、エリアの計画に変更があれば教えてほしい。

三木谷氏
 東名阪エリアでは屋内を除いて、KDDIさんの持っていらっしゃるプラチナバンドは使ってきませんでした。そちらについても、使わせていただくというかたちになります。

 また、パートナーシップというかたちですから、さまざま柔軟に対応していただく。これは、共同的なプレスリリースが必要かなと思っています。

 プラチナバンドの獲得に関しては、我々の一存ではどうにもなりません。ですが、予定通り700MHz、それ以外の800MHzと900MHzについても、将来的に考えていきます。

 コストについては、我々はソフトウェア化を進めていますので、プラチナバンドの導入に関してはそれほど大きな費用負担にはならないと思います。

――携帯電話は4Gから5Gがメインになると思うが、5Gがメインになったときの楽天モバイルの競争力はどのようなところにあるのか。

三木谷氏
 4Gと5Gは基本的に電波は電波で、信号形式が違います。我々の強みは、電波信号からいわゆる通信信号への変換をソフトウェアでやっていること。他社さんはこれをハードウェアでやっています。

 我々は、今使っている周波数帯であれば、4G→5Gに変換していくことができます。

 そうは言っても周波数帯域が違いますので、基地局のアンテナをつけていく必要がありますが、最近入った(参入した)ということがあるので、5Gを考えたうえで(基地局の)ロケーションはだいたい決めてあります。

 新しいサイト(場所)の獲得というのも必要ない。今の4Gの基地局の上に5Gのアンテナをつけて、ソフトウェアをアップグレードしていくだけで、4Gから5Gにできる。つまり追加投資のコスト構造が他社さんと圧倒的に違うということが、仮想化技術のミソだというふうに思います。

――4Gから5Gメインになっていく時期はいつごろだと予測するか。

三木谷氏
 これは我々だけではなく他社さんもそうなんですが、日本のSub-6でひとつ大きな問題があるのは、通信衛星を使った放送事業者さんとの干渉です。これによってかなり遅れているところがあります。

 特に東京、関東はパワーダウンしたという問題があって、この問題が確か2024年中には解決されていくと思っていますので、その段階で(5Gメインに)変わっていく。

 ただ、考えるべきなのは、いわゆるプラチナバンドのところを5Gにしても、それほどパフォーマンスは上がらないということです。このローバンドの5Gは、海外では別の呼び方をしようということになっています。

 パフォーマンスが上がらず、ディスプレイの数字が4から5に変わるだけで「5Gが実現しました」みたいな話をしても意味がないので、実効的な5Gを(実現)する必要があると思っています。

――楽天モバイルの通信の安定性について、ユーザーの評価をどうとらえているか。

三木谷氏
 都市部以外のところ、地下鉄などの混雑、そしてKDDIさんから楽天へのハンドオーバー(切り替え)が、3つの大きな課題でした。その3つとも、今回の新ローミング契約で解決できます。

 逆に言うと、楽天のカバレッジがあるなかで生活されている方においては、(通信が)大変いいということ。

 それから、(ローミングについては)5GBを上回ったら1Mbpsの速度制限がかかりますが、調べてみると、5Gを超えても特に設定などを変更せず、1Mbpsのまま使っている方がかなり多いということがわかりました。

 そうなると、KDDIローミングへ行ったときにちょっと遅い。いわゆるスロットリングって言いますけども、こうしたスローダウンがなくなりますから、ここの部分は他社と並ぶ水準まで持っていけるのかなと。価格など、ほかのことを考えれば文字通り最強になるのではと思います。

――楽天モバイルの利用者数について聞きたい。前回の数字から増加していると思うが、その点をどう評価しているか。

三木谷氏
 加入については、計画通りかなと思っています。一方で脱退(解約)というところがありますが、その理由のほとんどが“つながり”というカバレッジの話ですので、6月1日以降の劇的な改善によって、いける(解約が減る)かなと思います。

 加入については、ワンクリック(で入れるしくみ)が効いていくんだろうなということと、エコシステムにおけるメリットの訴求をベースに、できれば今の加入ペースの2倍~3倍を目指していきたいです。

 脱退率(解約率)については、可及的速やかに、他社と同等まで持っていきたいと思っています。