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「Starlink」を災害復旧にも、KDDIが災害対策訓練

 KDDIは2日、災害対策訓練を開催した。現地ではKDDIが保有する移動基地局や避難所向けの装備が展示されたほか、首都直下型地震が発生した状況を想定し、横浜市消防局や陸上自衛隊、海上保安庁と共同で訓練が実施された。

首都直下型地震を想定

 訓練で想定された状況は、マグニチュード7.3、最大震度7の首都直下型地震が発生したというもので、新宿の災害対策本部やオペレーションセンターが初動の対応にあたる様子が再現された。KDDIは東京と大阪にあるネットワークの状況を監視するセンターの機能をミラー化しており、一体的な運用が可能とする。どちらかが機能不全におちいっても、もう片方のセンターがその機能を引き継げる仕組みだ。

 災害対応でもDX化に力を入れており、必ずしもオンライン環境にいられるとは限らない現地作業員との連絡を確実にする「PWA」(=Progressive Web Apps)や基地局の状況を確認するためにSVG技術を用いた地図描画技術などが導入されている。SVG技術を用いた仕組みの場合、従来方式に比べて表示速度が早いなどのメリットがあり、いくつもの情報を素早く確認できるようになる。

 停波している基地局などを確認できる「災害ダッシュボード」は、かつて情報を把握するまでに3時間程を要していたが、現在では10分程度でデータの加工は終了するという。どの地域でどの基地局が停波しているか認識するまでの時間短縮により、迅速な復旧作業を可能にする。

携帯電話の電波で命をつなぐ

 同社では、被災者・遭難者などの捜索救助支援の仕組みとして「携帯電話電波捕捉システム」を開発。地震などの災害の場合、要救助者が家屋や瓦礫の下などに埋もれていることがあり、上空や目視のみの捜索では発見が難しい場合がある。

電波を探索するドローン

 携帯電話電波補足システムは、照射幅の異なる3つのアンテナをヘリやドローン、人が装備して要救助者の携帯電話の電波をとらえ、位置を推定する仕組み。電波をとらえた方向をパソコンの地図上に表すことで、要救助者のいる可能性がある方角を確認できる。

 アンテナは状況によって使い分けられ、訓練中では中角アンテナを搭載するドローンが徐々に高度を下げながら、要救助者の位置をおおまかに特定。その後、狭角アンテナを人が手で持ち、より詳細な位置を特定するという様子が再現された。

ドローンはIP55防水防塵対応
エンジンカッターで屋根を切断。携帯電話電波捕捉システムで発見した要救助者を救出した

Starlinkを災害対策にも導入

 KDDIが導入を進める衛星ブロードバンド「Starlink」もまた、災害復旧の現場で活用される。

右は自衛隊の車両で輸送したStarlink活用の可搬型基地局を設置する様子

 Starlinkをau回線のバックホールとして活用することで、既存の衛星通信と比較して高速な通信を被災地に持ち込め、機材も小型で設置時間も短縮できた。これにより、ドローンを活用した被災状況の確認が可能になる。

 このほか、船舶型基地局の設備としても、Starlinkを導入予定。従来のVSATアンテナは重量137kgと、クレーンで積み下ろしする必要があったが、Starlinkのアンテナはわずか7kgで人が背負って持ち運べるなどのメリットがある。訓練では海上保安庁と協力し、巡視艇「はまなみ」から人がStarlink活用の可搬型基局設備を搬入する様子や陸上自衛隊の輸送部隊と連携し、可搬型基地局を輸送・設置する様子が公開された。

 訓練会場では、Starlinkを搭載した移動基地局車も公開された。KDDIではさまざまな最新技術を災害対策にも導入し、迅速なサービス復旧を実現していく狙い。今後に向けた取り組みとしては、過去のデータから停電の予測、災害に弱い基地局を特定し、あらかじめ物資などを用意しておくことや基地局復旧の効率的なプランを自動で作成するといった取り組みが検討されており、順次進められる。

展示された車両・装備品

小型で機動性の高い軽自動車の移動基地局
復旧作業要員のためのキャンピングカー
イベント用の5G対応移動基地局
基地局へ電気を供給する電源車や外部電源