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ソフトバンクG決算で孫氏"最後”の登壇、「Armの成長に没頭」と想いを語る

2Q純利益は、アリババ関連取引で3四半期ぶりの黒字

代表取締役会長兼社長執行役員の孫 正義氏

 ソフトバンクグループは、11日に2023年3月期第2四半期決算を発表した。代表取締役会長兼社長執行役員の孫 正義氏は、「決算会見で登壇するのは、当面の間これが最後」とし、決算会見冒頭で挨拶した。

孫氏

 11日の決算会見では、壇上に孫氏の席はなく、これまで孫氏の指定席であった一番左側の席には、CFOの後藤氏が着席していた。孫氏は今後の決算会見について「当面は後藤氏が説明することになる。後藤氏はこれから自分でプレゼンができるとわくわくしていると思う」とユーモアを交えて説明。「株主総会や突発的な事態には顔を出すことはあるが、そうでなければ後藤氏から説明する」とし、孫氏とソフトバンクグループのこれまでとこれからの歩みを語り、今回の経緯について説明した。

アメリカの道端で出会ったマイクロコンピューター

 孫氏がアメリカに滞在していた若かりし頃、道路の歩道でサイエンスマガジンを読みながら歩いていると、一枚の写真に出会ったという。

孫氏が若かりし頃出会った写真

 その写真は、最初は「不思議な写真だ」と孫氏は感じたが、次のページをめくると、それはマイクロコンピューターのチップであった。1cmにも満たないチップを目の当たりにしてえらく感動したと孫氏は思い出す。

 孫氏は、当時からコンピューターでプログラミングをしており、「コンピューターとはなにか?」を当然知っていたというが、マイクロコンピューターのチップは、それよりも遙かに小さく「人差し指の上に乗るようなものは想像していなかった」(孫氏)とし、途端に両手の上がじんとしびれて涙が止まらなくなったという。

 涙の理由を孫氏は「人類の知的活動を初めて超えるかもしれないものを見いだしてしまったのか」と感じたからと説明。「地球上で最も知的に活動しているであろう人類が、人類を超える知性のものを生み出したことに感動した」と当時を振り返る。

 そこから数十年が経過した現在でも、マイクロコンピューターは成熟するどころか、ビッグバンとして大きく広がっていく。何万年何十万年の人類の歴史がのなか、ほんの50年の間に情報革命はあっという間に広がっていき、今やスマートフォンなしでは生活できない状況になってしまっている。コンピューティングの歴史は、一般のユーザーには、パソコンから始まり、スティーブ・ジョブズがiPhoneを生み出して以来、スマートフォンが中心になったと孫氏は説明。

 そして、CPUの中心は、インテル(Intel)からアーム(Arm)になると孫氏は語る。

Armのプロセッサーの進化を期待する時代に

 クラウドに情報が集約されていくなか、クラウドに欠かせないコンピューティング技術。そして、そのコンピューティングに欠かせない「電気」という存在を孫氏は注目し、「電気をエネルギー源として、最も効率的なアーキテクチャーを持っているArmのポジションがどんどん強くなり揺るぎないものになる」と孫氏は説明。

 これまで「Armのプロセッサーは、能力が弱くクラウドには向かない」と思われていたが、最近そうではなくなってきているとし、Armのプロセッサーはすでにパソコンでも利用されてきており、その市場は昨年から一気に広がってきているとする。

 孫氏は、ソフトバンク創業に際し、「情報革命に人生を捧げよう」と思ったという。その最初のきっかけになったマイクロコンピューターのチップの写真を見たとき、「ただ純粋に感動した」だけだったとし「マイクロコンピューターの中心であるArmの持ち主になること」は全く想像の外にあったものと、19歳の当時を振り返る。

孫氏「Arm事業に注力」

 孫氏は、改めて現況を「コロナの谷はそこまで深くない」と分析。

 「人類にとってどれくらい危険なのかがわからない」新型コロナウイルス感染症の拡大で、「多くのユニコーン企業が転げ落ちる映像を見せたことがあった」(2020年5月の会見)が、「実際にはユニコーンこそが、オンライン化の普及で先に立ち上がった」と説明。

当時の「コロナの谷」イメージ

 ソフトバンクグループとしては、生き延びるためにありとあらゆる資産を売却し、これまでのネットバブルがはじけた際やリーマンショックなどを乗りきってきたとし、今回のコロナショックでも、「生き延びるため」に実施した。そのひとつが「Armの売却」だったと孫氏は振り返る。

 Armの売却時は、1/3を現金で、2/3を売却先のNVIDIA(エヌビディア)の株式を受け取ることで、合併後の会社で筆頭株主の地位となることを考えていたという。AI時代で最も重要なコンピューティングの中心になれるという動きを取っていたが、いくつかの政府から承認が下りず、売却することができなかった。

 Arm売却の失敗について孫氏は「コロナの谷がそれほど深い物でなければ手放したくなかったもの。承認が下りなかった時点で、コロナの谷が思った物ほど深くないかもしれない、ワクチンの開発が見えてきた」とし、むしろそれはそれでよしと考えていたと説明。

 一方で、ウクライナ問題や、世界での急速なインフレ、各国の中央政府/銀行が行った財政支援の反動、消費の急拡大、エネルギーコストの高騰など、昨今の情勢で投資をするにはリスクが大きいと孫氏は指摘し、ソフトバンクグループとしてはより安全運転していく方針を取るとコメント。

 世界的なインフレは今後しばらく続くとし、上場企業ですら大変な状況が続いていくと分析、早々に決断した「守りを固める」という方針は正しかったとし、今後も継続していくこととした。

 孫氏は、新規投資を控えることで「投資家としての力を持て余す」としながらも、「Armの成長に神経を集中させる」とコメント。Armの技術革新や成長機会に爆発的な物があるとし、今後数年間はArmの爆発的な成長に没頭することにしたと説明した。

 ソフトバンクグループとしては、守りに徹するためCFOの後藤 芳光氏に任せることにしたという。

 孫氏は、自身を「攻めのトップ」とし、引き続きArmの攻めに集中するという。これは、ソフトバンクグループの株主や人々のために最も役に立つことではないかと想いを語り、「情報革命で人々を幸せに」をこれからも想い続け、Arm事業に集中し、決算や発表などソフトバンクグループの基本的な情報は、後藤氏から発表することにしたと説明した。

 孫氏は説明後、後藤氏の肩を叩き、何かを話しかけた後、壇上を後にした。

第2四半期決算

CFOの後藤 芳光氏

 ソフトバンクグループの第2四半期決算は、連結で売上高が3兆1824億7700万円(前年同期比+6.7%)、四半期利益は135億6200万円の赤字(前年同期は5901億2500万円の黒字)となった。一方、第2四半期単独(7月~9月)の純利益は、3兆336億円の黒字で、3四半期ぶりの黒字となった。これは、アリババ関連の取引などが影響している。

 投資額を減らし「守りに徹する」なか、ArmやPayPayについて後藤氏は説明。Armは高い成長が期待できること、PayPayではキャッシュレス決済市場でまだまだ拡大の余地があるとの分析を示した。