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孫正義氏「真冬の嵐のど真ん中」、ソフトバンクGの決算会見

 ソフトバンクグループは、2022年3月期第2四半期決算を発表した。売上高は2兆9835億400万円で、四半期利益は5901億2500万円。前年同期比で増収減益となった。

 発表の場に登壇したソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長執行役員の孫正義氏は、第1四半期決算から大幅に利益を落とした現状を「真冬の嵐のど真ん中」と表現した。

ソフトバンクG 孫正義氏

大幅な減益に

 同社は2021年3月期決算上期では1兆8332億円の純利益を計上したが、今回の2022年3月期上期ではそれが3636億円と大幅な落ち込みを見せた。

 赤字ではないものの孫氏は「実質、大幅な赤字」と語る。同氏が会計上の純益よりも重視すると語る、時価評価資産から負債を控除した「時価純資産」(NAV)は、2021年6月末時点と比較して、およそ6兆円のマイナス。孫氏はこれをもって「実質6兆円ほどの赤字。これは一大事」と説明する。

 しかし、一方で孫氏は「言い訳抜きで(純資産が)6兆円減ったことは事実」としたうえで「そこまで悲観しているわけでもなく、悪い話ばかりではない」とも語る。

中国株の下落など響く

 同社のNAVの下落の原因は、ソフトバンクグループが出資する中国のアリババグループ株が大幅に下がったことを受けたことなどがある。

 中国では、政府当局の規制強化により、アリババを含めてハイテク企業株が下落傾向にある。

 アリババ株は、一時期ソフトバンクグループのNAVの6割ほどを占めた時期もあったが、現在は28%。スプリントやアーム株などの企業がもう28%を占める中でその割合を増やしているのが孫氏が同社の“本業”と語る「ソフトバンクビジョンファンド」(SVF)だ。

 SVFは現在、同社のNAVの44%を占有する。2021年3月期の上期は16%程度だったところが、大幅にその割合を増やした。これにより、NAVの大部分は現在SVFによるものとなっている。

 国別の投資内訳を見ると、米国への投資が躍進。アジアやヨーロッパなどの投資先も数位は順調という。一国での投資額としては現在も中国が多いものの、ほとんどアリババによるものという。ディディ(DiDi)などSVFで中国に投資している面もあるが、ハイテク銘柄の値動きは芳しくない。

 NAVに並んで重要という、資産総額に対する負債残高の割合を示す「LTV」は、19%。「ソフトバンクは借金大魔王」だというのは昔の姿だとして、現在では通常25%未満で運用するというルールがあると社内的な取り決めがあることも紹介した。

SVFは6兆円の利益に

 ただし、同社の本業というソフトバンクビジョンファンドは、この3カ月で1兆円くらいの赤字で「決して胸を張れるものではない」と孫氏。

 しかしその一方で、開始して以来の累積で6兆円の利益があり、長期的な目線で見ると成功していると分析する。ディディが中国当局の規制で下落していることをはじめ、韓国のEC事業を手掛けるクーパンが上場したことの反動もあると説明した。

 現在の利益の内訳としては、ソフトバンクビジョンファンド1が大半を占めているが、孫氏は「SVF2はまだスタートしたばかり。だいたい3~4年かかって上場する。これから続々と上場していく」と語る。

 投資先の国としては米国が多く、順調な伸びを見せている。アジア地域も韓国クーパンで利益が出ており、唯一減ったのが中国という結果となった。今後の方針としては、アジアや欧州、中南米に注力し、米国以外にも広く投資することで、米国のベンチャーキャピタルとの差別化を狙う。

 分野別の投資では、コンシューマーサービスや物流、モビリティが多く、近年ではフィンテックも伸びているとしている。

PayPayとアームが注目株

 新たな企業への出資が、手持ちの資金で運転できるようになってきたと語る孫氏。そうしたソフトバンクビジョンファンドの新たな「芽」となりえるのが、アームとPayPayだという。

 アームについては、NVIDIAと4兆円の評価で合併合意に至っており、その2/3はNVIDIA株によるもの。NVIDIA株は現在2倍以上で、正式には政府の認可を待つ必要があるが、現時点で5兆円の含み益が育っていると語る。

 一方のPayPayについても「ペイメントアプリがダウンロード数で総合1位になるというのは他国では少ない」ことや取扱金額も伸びていることも挙げた上で「経費はかかっているものの、必ず大きく伸びる」と推測を示した。

質疑応答

――日本企業であるアキュリスファーマへ出資したが、今後も日本企業への投資を続けるのか?

孫氏
 ぜひ日本の会社にも投資を増やしていきたい。3000社のパイプラインからフローを見ているが日本企業が少なすぎて残念。SVFとして日本企業出資の第1号になる。

――日本企業への投資は今後も続くのか?

孫氏
 すでに第2号となる企業とは具体的な投資の条件や手続きを進めている最中。もう近いうちに出てくる。ほかにもいくつか検討中の企業があり、これからは日本の銘柄も増えていく。

――アームのNVIDIAへの売却は、欧州などの当局が懸念を示しているというが現状の認識は

孫氏
 相手があることなので確約はできないが、無事に通るのではないか。

――SVFの幹部流出が続いているというのは事実か?

孫氏
 シリコンバレーの有力企業は幹部が常に入れ替わる。それがシリコンバレー風。それを前提に経営していかなくてはいけない。属人的にならずに組織としての強みを育てていきたい。