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ソフトバンクGの孫正義氏、新型コロナ影響も「真のユニコーン企業生まれると期待」

孫氏

 ソフトバンクグループは18日、2019年度の業績を発表した。代表取締役会長兼社長の孫正義氏のプレゼンテーションは、新型コロナウイルス感染症の影響がグローバルへ広がりつつも、投資先の一部がさらなる飛躍を遂げるという楽観的なメッセージを伝えるものとなった。オンラインでの開催で聴衆となる取材陣や証券関係者が不在だったためか、孫氏の語り口はこれまでと比べ、淡々とした調子となった。

ソフトバンクグループの業績
営業利益の状況

淘汰が進んで未来への期待感

 孫氏は「今は一番苦しいところだが、投資先が活躍するのではないか」とコメント。

 企業価値が1000億円相当とされる“ユニコーン企業”も苦戦している、とした孫氏は「本来なら上昇し続けるところで、『コロナの谷』がやってきた。どんどん落馬して大変な危機だが、中には羽が生え羽ばたく本当のユニコーンも生まれると信じている」と希望を示す。

 たとえば、多くの人が集まることが難しくなるのであれば、フードデリバリーや、オンラインを通じた会議、教育、ショッピングが成長すると分析し、「物理的に触れずともオンライン上で心が触れ合うことが広がっていくのでは」と予測する。

 たとえばライドシェアのUberは米国で苦しい状況にあるが、中国のDiDiは中国内でのライドシェアの活用が急激に元に戻りつつあるという報告を紹介し「ほかの国にも(中国の報告のように)広がることを期待している」という。

 将来の評価損・評価益は、複数の第三者のチェック機関や投資家からの厳しい確認がいくつも働いていると説明した孫氏は「先行きは誰にもわからない。評価損が出ないとまでは断言はできない。慎重に用心深く運営しなければならない」と将来への期待とあわせて、短期的な業績への慎重な見方を示す。

 同氏は「ソフトバンクビジョンファンドの1号ファンドでは88社に投資している、つぶれそうなところへ再投資することはない。15社ほどが倒産し、(その一方で、別の)15社が伸びるのではないか。伸びる15社は将来、その時点での(ファンドが生み出す利益の)90%の価値を占めるのではないか」と未来を予測。

 「倒産しそうなところは投資額が小さく、生き延びそうなところは大きな投資だが、例外はWeWorkで、私が失敗した。それ以外の大きな投資は結構伸びていく」とした。

ソフトバンクグループへの影響は限定的

 新型コロナウイルス感染症の影響について、1929年の世界恐慌を例に挙げて、非常に大きな影響があると指摘しつつも今後、新たな業種が勃興するとの見方を示す。

 一方、ソフトバンクグループへ与える同感染症の影響について、現時点では、創業後に体験してきた経済不況と比べれば軽微なものと説明。

孫氏
事業家として長い人生を歩んできた。ネットバブル崩壊後には体が半分以上、指2本で体を支えつつ崖に落ちそうな危機感だった。リーマンショックは腕で支えた。今回は、4.5兆円の現金が今後確実に調達できる状況。そのうちアリババ株を使った1.25兆円の調達もアリババの株価に影響を与えていない。過去の崖から転げ落ちそうな状況と比べ、余裕で崖の下を覗いている状況だ。

株主価値への影響「一番重要」

 ソフトバンクグループの事業のうち、ソフトバンクビジョンファンドのほか、通信事業のソフトバンク、米国のスプリント、半導体技術の中核を手掛けるArm、中国のアリババについて紹介した孫氏は、株主価値が最も重要とアピールする。

ソフトバンクビジョンファンドは8.8兆円の投資で1000億円の減

 同氏が示すソフトバンクグループの手掛ける株主価値は、2019年12月末時点で株主価値は23兆円。5月18日時点では21.6兆円となった。

一番重要と孫氏がアピールした株主価値

 1.4兆円の減少だが、孫氏は「価値が3割減った(という大きな)ものではない。ここが一番重要で減ったことを一番重く受け止めている。ソフトバンクの現況が一番わかる」とした。

甘いものではないが「頑張ります」

 新型コロナによる衝撃は大きなものではない、だからこそ4.5兆円の現金調達をした、今後の投資も用心深く進める、とした孫氏。

 会見の最後には「私自身はそこまで悲観していない。前回の決算会見で潮目が変わったと楽観的だったが、もう一度潮目が変わり悪い方向にいったが、頑張ります。ぜひよろしくお願いします」と締めくくった。