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携帯4社のトップが「TOKYO Data Highwayサミット」で語ったこと

 東京都は21日、都知事と通信事業者各社の代表が一同に会し、未来のビジョンを共有する「TOKYO Data Highwayサミット」を開催した。

 同サミットは、“5Gが実現する未来を語り、体感できる3日間”として開催された「スマート TOKYO 推進ウィーク」の一環として開かれたもの。テーマは「『つながる東京』の先にあるもの」で、携帯4社のトップも出席した。

 本記事では、「各社代表者と知事との対話」として、携帯4社のトップによって実施されたプレゼンテーションの内容をお届けする。

「TOKYO Data Highwayサミット」のメンバー
  • 小池百合子氏(東京都知事)
  • 村井純氏(慶應義塾大学 教授)
  • 井伊基之氏(NTTドコモ 代表取締役社長)
  • 髙橋誠氏(KDDI 代表取締役社長)
  • 宮川潤一氏(ソフトバンク 代表取締役社長 執行役員兼CEO)
  • 山田善久氏(楽天モバイル 代表取締役社長)
  • 田中敦史氏(JTOWER 代表取締役社長)

ドコモ 井伊氏

 ドコモの井伊氏は、「(ドコモが)5Gのサービスを開始してから約1年半が経過した。東京都のエリアにおいては、すでに2000局以上の基地局を設置しており、今後も増やしていく」と説明。また、全国における5Gの契約数は900万以上となっている。

井伊氏(2021年10月撮影)

 同社はおよそ500件の5Gソリューションを手がけてきており、パートナーとの共創によって社会課題の解決を図っていく。

 井伊氏はその一例として、東京女子医科大学との連携による遠隔医療ソリューションを紹介した。

 ドコモは都と連携し、西新宿や島しょ部の5Gエリア化を進めている。

 井伊氏は「スペースが限られる都市部では、シェアリングが重要だと考える。西新宿エリアでは、景観になじむようなサイネージ型の基地局設置も進めている」と紹介。

 また、「5Gの活用にはエネルギー消費の増加も課題になるため、省電力化やグリーンエネルギーの活用推進も必要不可欠。5G拡大とセットで“カーボンニュートラル”の実現を目指していく」とした。

KDDI 髙橋氏

 KDDIの高橋氏は、「ユーザーの生活動線を中心に、鉄道や商業地域で5Gエリアの拡大を進めている」と紹介した。

髙橋氏(2021年12月撮影)

 2021年6月に「鉄道路線5G化」を宣言した同社は、山手線の全30駅のホーム・駅間をはじめとして、鉄道路線の5Gエリア化を進めている。

 また、災害対策としては、都内すべての有人離島で電源対策が完了。災害時は、船舶型の基地局で通信エリアを維持する。今後は、島しょ地域についても高速通信エリアの拡大を図っていくという。

 髙橋氏は5Gのユースケースとして、モビリティやヘルスケア分野などにおける取り組みを紹介。そのうえで、「東京都のアセットを活用させていただきながら、5Gネットワークを早期拡大するとともに、ユーザー目線のサービスについても取り組んでいきたい」と語った。

ソフトバンク 宮川氏

 ソフトバンクの宮川氏は、「都市のあらゆるものが5Gでつながることにより、社会のデジタル化が進んで都民のQOL(生活の質)は向上していくと考える」と語った。

宮川氏(2021年9月撮影)

 同氏は続いて、米国や中国におけるロボットタクシーやAIの都市実装の取り組みを紹介。「日本のデジタル化は、世界とますます差が開きつつある」としたうえで、「都が掲げる“世界最速のモバイルインターネットの構築”については本当に同感で、全力でサポートさせていただきたい」とコメントした。

 また、「今日はお願いごとがある」と前置きした宮川氏は、島しょ部における5Gの展開についてコメント。

 現在の島しょ部の基地局は、「10~100メガの専用線を利用してサービス提供している」(宮川氏)。そのうえで同氏は、「これを5G化するには中継回線の速度が足りないので、基地局だけ5Gの設備を打っても意味がないことになる」と語った。

 そこで宮川氏は、「(都に)光ファイバーを新設してほしい」と訴える。そのうえで、「デジタル・デバイドを解消し、誰一人取り残さない『つながる』東京を目指す」と語り、プレゼンテーションを締めくくった。

楽天モバイル 山田氏

 楽天モバイルの山田氏は、東京都における5Gネットワーク構築の進捗について説明。すでに稼働している5G基地局が6局、構築中の基地局が77局となっている。

山田氏(2020年1月撮影)

 同社は5G関連のさまざまな研究開発を進めており、情報通信研究機構(NICT)による「Beyond 5G研究開発促進事業」においても、東大との共同研究などを行っている。

 また、ユニークな取り組みとしては、米ASTスペースモバイルとの連携による衛星通信ネットワークの構築が紹介された。楽天モバイルは、人口カバーではなくエリアカバーとして100%のカバー率を目指す。

 専用端末ではなくユーザーのスマートフォンで衛星から電波を受けることができ、災害時にも役立つという。

 山田氏は、「楽天モバイルでは、通常時も災害時もつながりやすい通信環境を提供できるよう、ネットワークを整備していく」とコメントした。