ニュース

楽天モバイル山田社長が語る、これまでとこれからの歩み

恵比寿にMNO事業の新店舗オープン、4月からの本格サービス開始も

 23日、楽天モバイルは、無料サポータープログラムの拡大や、4月からの本格サービス開始を紹介する記者説明会を開催した。

 事実上の試験サービスである「無料サポータープログラム」開始から3カ月あまりの状況や、4月からの本格サービスの展望が語られた。

山田氏

応援の声も

 新たに自前の基地局を展開することになった楽天モバイルのサービスエリアは、まだまだ限られている。

 ゼロからエリアを作りあげる以上、全国展開にある程度の時間は必要だが、サービスエリアが限られる中でも無料サポータープログラムへ申し込んだ理由として、ユーザーから寄せられた理由は「試してみたかった」が最も多かったものの、使い放題を挙げる人も続く。

 ユーザーからは「結構繋がる」と評価する声がある一方で、「繋がりにくい」「途切れる」という指摘も寄せられており、山田社長は「真摯に受け止めなければならない。月を追うごとに改善してきた」とその声に応える姿勢を示す。

 また携帯電話サービスへの新規参入事業者である楽天を応援したい、という理由で無料サポータープログラムに申し込んだ人も多かったとのことで、山田氏は笑顔で「心強い」とコメント。

「楽天証券の役員に『ビルオーナーを見つけてください』」

 その基地局展開でも、計画を上回る設置数になる見通し。ただ、2019年には総務省から計画の遅れを指摘されていただけに、どうやって挽回したか、報道陣から質問が飛ぶと「楽天グループで総力を挙げた」と山田氏。

 エリア整備にあたっては、基地局を設置する際に、地権者との交渉などが必要になる。そこで楽天グループ各社の役員に、特定のエリアを割り振って対応を進めた。山田氏は「たとえば楽天証券の役員に『このエリアの担当だから、その地域のビルオーナーなどを、自身のコネクションで見つけてください』などとやっている」と内情を披露。楽天モバイルだけではなく、全体で取り組みを進めているとした。

12月は15GB

 2010年10月開始の無料サポータープログラム、ユーザーはどの程度利用しているのか。山田社長によれば、2019年12月の平均が15GB以上に達したことを明らかにした。

 同時期の国内平均は4.1GBであり、3倍以上の利用を記録。山田氏は圧倒的に通信量が多い。低価格で自由なネットワークであればたくさん使いたがっていると実感した」とユーザーのニーズの大きさを指摘する。

Rakuten Miniを発売

 オリジナルスマートフォンである「Rakuten Mini」も23日から、無料サポータープログラムのユーザー向けに発売されることになった。eSIM対応の機種であり、山田氏は「eSIM対応機種を積極的に採用し、お客さまの選択肢として、最大限、自由な動きをできるようにしていきた」とコメント。

 今後もオリジナル機種を手がけるかどうか、山田氏は、各メーカーから魅力的な機種が登場しているとした上で「ポートフォリオ全体、バランスを見て手がけたい。今後もオリジナル機種は手がけたいが、極端に増やすことはない」とした。

iPhoneの取り扱いは?

 報道陣から「iPhoneは取り扱うのか」と問われた山田氏。しかし回答は短く「iPhoneについてはノーコメント」とするに留めた。

eKYCとeSIMの組み合わせ

 また、電子的な本人確認であるeKYC(身分証明書のアップロードと本人顔写真の撮影などを行う)も、携帯電話の回線契約に活用できるよう総務省で動いてる、と山田氏は語り「eKYCとeSIMを組み合わせると、これまでの枠組みが大きく変わる。お客さま目線で推進したい」と述べ、契約にかかる手間を大きく軽減する可能性を指摘した。

23日午後、一時的にeSIM手続きできず

 23日13時から発売されたRakuten Miniは、同日午後、一時的に機種変更手続きが進められない状態となった。楽天モバイル広報によれば、一時的にeSIMの交換を受け付けるシステムで問題があったことを認めつつ、すぐ復旧したとしている。

楽天Link、ベータ版で提供開始

 次世代コミュニケーションのためのサービスとして提供されるオリジナルアプリ「楽天Link」は、2019年9月の発表会で紹介されていたが、今回、ようやくベータ版の提供が開始されることになった。

 当初利用できるのは、通話、チャット(非対応ユーザーとはSMSでやり取り)、グループチャット。チャットではテキストのほか、写真や動画もやり取りできる。将来的にはビデオチャット、多人数参加のビデオ会議もサポートし、パソコン版の提供も視野に入れる。

相互接続は白紙

 RCS(リッチコミュニケーションサービス、Rich Communication Services)という国際規格に準じたサービスだが、同じくRCS準拠で携帯大手3社が手がける「+メッセージ」との相互接続はまだ。山田氏は「他社とまだ話していない。同じ規格のため、国内外で連携の可能性はあるが、現時点では白紙」とした。

楽天モバイルが目指すもの

 本格サービスを4月からと明言した山田社長は、23日オープンの恵比寿店が、MNOサービス向けの新店舗となることを紹介。楽天モバイルでは「シンプル」「デジタル」「自由」という体験を届けるとした。

 たとえば、店頭に設置されるスマートフォンは全機種、ワイヤーでは繋がれず充電ケーブルも、マグネット式のものを活用して、端末単体を手に取れる。

 ワイヤーに引っ張られることがないため、その重さをより実感しやすくなり、ポケットに入れたときの感覚もつかみやすい。独自のセキュリティソフトを入れ、店外へ持ち出されればアラームが鳴る仕掛けを採り入れている。

 恵比寿店で新たに採用されたコンセプトは、楽天モバイルのコーポレートカラーであるマゼンタを基調にしつつ、自由な回遊型スペースを店内に設けた。契約カウンター専用の場所はなく、スタッフが持つタブレットを使い、店内のどこででも契約の手続きを進められる。

楽天モバイル恵比寿店店長の山下氏
マゼンタを基調
回遊型スペースに仕上げた。監修は佐藤可士和氏

最短18分

 事前に楽天IDを活用し、オンラインで契約者情報を入力したり、機種や料金プランを選んだりしておけば、通常楽天のMVNOサービスでは97分かかる店頭での所要時間が、より短くなった重要事項の説明とSIMの受け取りだけになり、最短18分で済むと見込む。

店内にポスターなし

 店内は、一般的なディスプレイや柱状のディスプレイを活用して、スマートフォンやサービスを紹介し、紙のポスターは活用しない。タブレットでの契約手続きもあわせて、ペーパーレスなデジタル環境のひとつとなる。

持ち込みOK

 自由という面では、回線だけを契約し、端末は、他社から調達する外からの持ち込みもOK」(山田氏)という点もある。山田氏は「メーカーには、(楽天回線へ)適合させてくださいとお願いしているが、使いにくいカスタマイズや、囲い込む発想はない。ただAPNなどの設置は必要」と説明した。

二次募集で経験値増狙う

 これまで5000人限定の無料サポータープログラムながら、誤送付や、開通手続きでのトラブル、通信障害の発生などが発生してきた楽天モバイル。

 山田社長は、今後、通信障害が発生しないよう万全のテストを実施しており、さらに追加して、過負荷試験を行うと説明。またこれまでのテスト項目も見直すなど、品質向上に取り組むと説明する。

 5000人限定だったこれまででも、一般的な利用とは異なる利用スタイルもあり、そうした事例を「コーナーケース」と呼んでいると語る山田氏は「(二次募集により)2万人へ増えれば、コーナーケースが(想定外の事例を)カバーする可能性も増えると思う。かなりいろんな課題が解決できるのではないか」と述べ、楽天モバイルとしてもトラブル対策の経験値を増やせるとの見通しを示す。

今後の展開

 屋外の繋がりやすさには手応えを見せた山田氏は、「他社でいうプラチナバンドのような周波数を求めるのか」という問いかけに、「今の周波数(1.7GHz帯)は結構繋がると思っている。今後、(携帯電話会社へ割り当てられるような)そうしたバンド(周波数)があれば、そういうことはあるだろうが、現状、なかなか簡単には出てこない。今の周波数を前提にネットワークを構築したい」と語った。

 5Gサービスを6月から提供することについては「これから建設する基地局は、5G前提で調査している。しかしまずは4Gが中心。工事が遅くなるくらいなら、4Gを優先する」と語る。