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ドコモ、映像伝送や自律飛行ドローンなど5G時代の法人向け製品の展示会

 NTTドコモは15日、同社の法人ソリューションの展示イベント「docomo 5G DX MEETUP for business」を開催した。

ドコモ 丸山氏

さまざまな分野に5Gを投入

 発表の場には、NTTドコモ 代表取締役副社長の丸山誠治氏が登壇。同社が5Gを活用して社会課題解決や産業高度化に取り組んできたことを紹介。ドコモではこれまで、5Gによる高精細な映像伝送や遠隔作業支援のソリューションなどさまざまなソリューションを提供してきた。

 このほか、遠隔手術ロボットや教育分野においては、360度ビデオ撮影で体育授業の実技指導の支援などが行われている。

 5Gオープンパートナープログラムの参加社数は4000にまで拡大。開始当初の450社から大幅な伸長となり、年度末には5000社の達成を目標とするという。

 加えて、直近の5G契約者数が500万を突破したこと、5G基地局が1万局を突破したことなどが紹介された。

スマートグラスを取扱いへ

 ドコモでは、これまで全国でおよそ300件の5G共創案件に取り組んできた。丸山氏は「5Gはさまざまな社会課題を解決するインフラであり、地域における活用が期待される」と語る。

 発表の場で示された図では、全国の幅広い地域で5Gに関連した取り組みが行われていることがわかる。こうした取り組みを加速させるデバイスとしてグーグル製の「Glass Enterprise Edition 2」が発表された。

 遠隔作業支援や迷子捜索、警備などでの活用が見込まれる。同デバイスは、8月10日発売予定。条件を満たす法人ユーザーには、特別価格で提供するキャンペーンも実施される。

 Glass Enterprise Edition 2では、2022年3月を目処にドコモのクラウド型遠隔作業ソリューション「Smart Glass Cloud」に対応予定。遠隔地でも熟練者からサポートを受けられ、一度に複数の現場の様子も確認できるため、生産性向上に寄与するという。

Smart Glass Cloudのインターフェイス

スローガン刷新

 加えて、新コーポレートスローガン「あなたと世界を変えていく。」も発表された。同社のスローガンが変更されるのは、2015年の「いつか、あたりまえになることを。」以来で、合わせて新ブランドステートメントも発表された。

 新たなスローガンは、7月19日から使用される。

映像分野の需要根強く

 5G開始後から、ドコモに相談が寄せられた5G商用案件は、3割強が映像に関するもので占められているという。実際にこれまで、ドコモがパートナーとともに実現した映像ソリューションは13例。

 主な利用シーンとしては、中継・配信や遠隔作業、監視・検知、技術伝承・教育、リモート会議が挙げられる。

 同社が提供する映像ソリューションとしては、可搬性に優れた5G映像中継の「LiveU」や複数台のスマートフォンで撮影された映像を合成、マルチアングル映像の配信が可能な「SwipeVideo」がある。

 ドコモでは今後、さまざまな技術と映像をかけ合わせることで付加価値の高いソリューションを提供するとしている。

XRでの活用を期待

 今後、伸長が期待されるXR分野。ドコモに寄せられる5G案件のうち、映像に次いで需要が高いのがXRだという。

 その中でも、用途としてもっとも注目を集めるのが遠隔作業支援だ。こうしたソリューションを提供していく中で、ユーザーからは「もっと軽量なデバイスはないか」「作業者だけでなくもっと多様な視点がほしい」という声が多かったという。

 こうした声を受けて、ドコモでは前述の「Glass Enterprise Edition 2」の提供や360度・4K対応の映像配信サービス「AVATOUR」の提供に至った。

 ドコモでは、今後もさまざまなビジネスシーンでXRの活用が当たり前になるよう取り組むとした上で、課題解決を促すソリューションの提供で、新しいビジネスを創出していきたいという。

医療や建設分野でも5Gを活用

 医療分野においても、前述のLiveUが活用されている。高精細な映像を安定して伝送できるという特長を活かして、病院・大学間での手術室映像や内視鏡映像の共有による教育、訪問診療における専門医の遠隔サポート、救急搬送時の処置支援や受け入れ体制構築などで活用されているという。

 同時に、ソリューションを実装していくには、機能のさらなる高度化が必要という。同社では今後、MECやAIなどでオペレーションの効率化、特にニーズの多い小型デバイスやハンズフリーデバイスの投入に加えて、医療機器メーカーなどとの協業で医療現場に根ざしたソリューションを提供していく狙い。

 その一環として「Glass Enterprise Edition 2」の活用プログラムが用意される。詳細な内容は決まり次第発表するとしている。

 これに加えて、建設業界においても積極的なソリューション提供を目指す。建設業界は1997年をピークに労働者数が減少傾向にあり、高齢化が進んでおり、2025年には130万人の労働者数が不足するとの試算もあるという。

 これに対応すべく、政府ではテクノロジーを活用した「i-Construction」を推進。建設のDX加速に向けて、ドコモでもコマツ、ソニーセミコンダクタソリューションズ、野村総研とともに新会社EARTHBRAINを発足。

 工事現場に設置されたセンサーなどから取得されたデータでデジタルツイン環境を構築。建機の活動状況や進捗状況、活動しているエリアなどを確認できるといった世界観を目指す。サイバー空間、ネットワーク、フィジカル空間の3つのレイヤーにおいて、次世代スマートコンストラクションの高付加価値化を実現していくという。

自治体・地方での取り組み

 自治体との連携も重要な取り組みのうちのひとつ。ドコモ中国支社では、広島県や山口県、岡山県において合計で10件の協定を締結。

 そのうち、広島県とは2018年に連携協定を締結。2019年には8Kマルチアングル映像の実証実験などを実施してきた。商用5Gの展開が進むとともに開始されたのが「ひろしまサンドボックス 5G LOVE&PEACE Lab」だ。

 広島市中心部の5Gエリアを会場として、全国から活用のアイディアを募集する。

 一方、同じく地域での取り組みとして、神奈川県横須賀市の三浦エリアにおける観光型MaaSの実証実験も実施されている。京急電鉄による企画乗車券「みさきまぐろきっぷ」をデジタル化。

バスや店舗の混雑状況

 本人の嗜好に合わせた観光ルートの提案やさまざまな交通手段をアプリ「みうらよこすかMaaS」の中で検索・予約できるといった機能が利用できる。

 加えて、コロナワクチンの予約や高齢者の見守りに対応するAIサービスなども提供されている。

 さらに、地域企業との共創やDX推進の場となる「ドコモ 5G DX スクエア」を全国へ展開していく。既存のドコモ5Gオープンラボに加えて、5Gソリューションを実際に体験・実験できる「体験・情報発信拠点」とアクセンチュアやNECなどパートナー企業が運営するオープンイノベーション拠点を各テーマに沿って利用できる「業界専門拠点」の2つで展開される。

 開始当初は、5Gオープンラボと合わせて17拠点。2022年3月末までに全国50拠点へ広げるとしている。

高性能MECの試験環境も

 ドコモ5GオープンラボYotsuyaにおいて、次世代MEC試験環境の「Beyond-MEC」の提供を開始した。高負荷がかかる4K映像伝送やXR活用サービスでの利用を視野に処理速度を向上させている。

 5Gの低遅延通信とあわせて、高性能なGPU(NVIDIA Quadro RTX 8000 GPU)による超低遅延処理によって従来よりもさらに低遅延環境を実現するもの。GPUのみでは難しいさまざまな場所でのCAD操作や高性能AIや画像処理といった用途が検討されるという。

 同じくエッジ処理を活用したものとして「EDGEMATRIX」(エッジマトリックス)が提供されている。AIによる映像解析ソリューションで、専用のアプリストア「EDGEMATRIXストア」から用途にあわせたさまざまな機能を持つアプリをダウンロード可能。

白い4本のアンテナが備わっているのがEdge AI Box
人数カウントをしている様子

 ネットワークカメラと組み合わせて通過する車両のナンバープレートの認識や通行人の人数カウントなど多彩な用途に利用できる。

 ドコモでは、連携するデバイス「Edge AI Box」や導入、設置、保守の支援もワンストップで提供する。

より深く、より広く

 NTTドコモ 常務執行役員 法人ビジネス本部長の坪内亘治氏は、これまで取り組んできた法人向け5Gビジネスには、先進技術のかけ合わせ、各地域の特徴に合わせた進め方など、さまざまな気づきがあったと語る。

ドコモ 坪内氏

 SA(Stand Alone)時代に向けて、5Gの性能を発揮できる体験・実験環境が必要になってくると坪内氏。加えて、先進技術を全国へ広めていく必要があるとしてこれを「より深く、より広く」という2つの軸と説明する。Beyond-MECやドコモ 5G DX スクエアはその取り組みの一環と位置づけられる。

 「産業の高度化、社会課題解決のために5Gに『より深く、より広く』取り組む。パートナーとともに世界を変えていきたい」と熱意を示した。

そのほかのソリューション

ドコモ画像認識プラットフォーム

 画像認識エンジンをAPIとして提供。全部で6種類のエンジンが利用できる。手書きの宛名の文字読み取りやWebサイト上での類似画像検索。さらに希少生物の識別やガードレールや白線識別などさまざまな用途に活用できる。

PUSHLOG

 PLC(機器の制御装置)などからの情報を読み取り、機器の動作状況の可視化や遠隔監視に利用できる。デバイスをシンプル化することで、低価格(2年間:9万8000円)を実現した。

ドローン

 LTE経由で制御可能なドローン向け料金プランの提供が開始されている。目視外飛行でも、モバイルネットワーク経由で安全な飛行を実現。災害時などに物資輸送や上空からのリアルタイム映像伝送できる。

 このほか、Skydio社製のドローンSkydioも提供している。

LTE上空利用プラン利用のイメージ
Skydio製ドローン。自動でステーションに帰還でき充電も可能

リモート接客ソリューション「TimeRep」

 アバターを介して遠隔地からオペレーターが案内や販売促進などの業務が可能になる。自社の制服などアバターをカスタムもでき、実際に鉄道駅構内において利用実績がある。オペレーター不在時などはデジタルサイネージとしても利用できるという。

男性アバターもある
呼び出し画面