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実証実験中のデジタル版「みさきまぐろきっぷ」を試す!

京急の三崎口駅。三崎港からは少し離れているが、駅名看板からマグロ推しがすごい

 先日、私用で(半分観光で)神奈川県の三浦半島の突端、三崎まで行ってきた。マグロで有名な三崎港や城ヶ島、油壺などの観光スポットで知られる地域だ。公共交通機関を使う場合、京急本線の先にある京急久里浜線の終点、三崎口駅からバスで移動することになる。

 京急ではこの三崎周辺での観光向けに、鉄道やバスと食事やお土産までをセットとした「みさきまぐろきっぷ」を販売している(京急では「三浦半島まるごときっぷ」や「よこすか満喫きっぷ」、「葉山女子旅きっぷ」も販売している)。

 通常、この「みさきまぐろきっぷ」は紙の切符で発券されるが、2021年6月22日~7月21日までのあいだ、観光型MaaSアプリ「みうらよこすかMaaS」の実証実験として、スマホを使った「デジタルみさきまぐろきっぷ」も販売されている。

デジタルみさきまぐろきっぷの購入画面。購入後、「使用開始する」をタップした1日間、利用できる

 紙の切符と違い、デジタル版は品川駅発(大人3570円/小児2580円)のみで、利用できるはiPhoneのみとなっている。せっかくの機会なので、今回はこの「デジタルみさきまぐろきっぷ」を使って三崎に行ってみることにした。

 使うための準備として、iOS 13.6以上のiPhone 7以降にアプリ「みうらよこすかMaaS」をインストールし、連絡先やクレジットカードを登録しておく。あとは好きなタイミングで購入し、利用する日の朝5時以降に利用開始ボタンをタップすることで利用できる。

利用開始後のチケット画面

 利用開始すると、その日だけ、アプリ上から「鉄道・バス」と「まんぷく券」、「おもひで券」のチケットが利用できる。

 まず最初に使うのは「鉄道・バス」にある「京急線乗車券」だ。これで品川駅から目的地まで行く。筆者の目的地は三崎口駅だが、往路復路ともに途中下車もできるようだ(逆戻りは不可)。

対応する駅やお店にはスタンド型のICタグが設置されていて、これをアプリ上の各チケット画面で読み取る

 品川駅と乗り降り自由な駅の有人改札にはICタグが設置されていて、アプリ上の「京急線乗車券」の「チケットをかざす」をタップし、そのICタグにiPhoneをかざして、改札を通過する。自動改札は使えない。

 品川駅構内にあるJRと京急の乗り継ぎ専用改札を利用するときは、まず窓口でJRを精算してレシートを受け取り、そのあと自動改札脇の有人改札でレシートを渡しつつ、壁に貼ってあるICタグにiPhoneをかざす。このJRからの乗り継ぎに関しては、実証実験ということもあり、ちょっと面倒臭い。

品川駅は設置場所の関係か、ICタグはスタンド型ではなくポスター型だった

 とくに注意が必要なのは、窓口での精算だ。JRの乗車券をいったん窓口内に渡す必要があるのだが、Apple WatchのSuicaで乗車していると、それを外して渡さないといけない。しかしApple Watchは通常設定だと外した瞬間にロックがかかってしまうので、その設定を一時的にオフにする必要がある。同時にマスク着用時のFace IDロック解除の設定もオフになってしまうので、あとで設定を戻すときに注意しよう。

 ちなみに同じ乗り継ぎ専用改札でも、帰り、京急からJRへは簡単だった。有人改札で駅員さんに言ってiPhoneをICタグにかざすと、「精算済証」をもらえるので、それを改札に入れ、改札のリーダーに使いたいSuicaをかざせばJRに入れる。

 「みさきまぐろきっぷ」では発駅(デジタル版は品川駅)から三崎口駅までのあいだが途中下車可能となるが、「まんぷく券」などは三崎港が中心となるので、基本的には三崎口まで行くことになる。

三崎港。マグロを食べられるレストランがたくさんある(まんぷく券非対応の店も少なくないので注意)。向こう側に見えるのは城ヶ島だが、徒歩では大変なのでバスを使おう

 三崎口駅は京急本線のさらに先にある京急久里浜線の終点だ。けっこう遠いが、京急といえば関東鉄道界のスピードスター。標準軌と恵まれた線形による最大時速120kmの瞬足で、品川駅から三崎口駅まで80分弱で到達する。本数は限られているが、座席が進行方向に向いたクロスシート車両(2100形など)もある。長時間乗車時の疲労感が桁違いに減るのでおすすめだ。

 目的駅からのバスでは、アプリ上の「京急バスフリー乗車券」を使う。みさきまぐろきっぷでは、三崎地区の京急の路線バスがフリー区間となる。バスを利用するときは、乗車時に念のため整理券をとりつつ(始発駅だと不要)、降車時に料金を払う代わりにアプリ上の「京急バスフリー乗車券」を運転手に見せるだけだ。

城ヶ島。こんな風景の磯をひたすら散策するだけでけっこう楽しい。歩きやすい靴と服装と日焼け止を推奨したい

 三崎周辺には三崎港、城ヶ島、油壺、ソレイユの丘など観光スポットが多いが、それぞれが距離的に離れていることもあり、徒歩移動は難しく、バスだと200円以上かかることがほとんどだ。複数のスポットをハシゴするとなると、バス代だけで1日で1000円以上は普通にかかるので、乗り放題は非常にありがたい。

 「みさきまぐろきっぷ」では三崎周辺を中心とした飲食店のまぐろ料理(海鮮丼が多い)の「まんぷく券」とお土産やアクティビティの「おもひで券」がそれぞれ1回ずつ利用できる。どちらも利用方法はアプリ上でチケットを起動し、店頭にあるICタグにiPhoneをかざすだけだ。すぐにチケットが使用済みとなり、チケットIDという番号が表示されるので、そのIDを店員さんにメモしてもらおう。

使用済みチケット画面。IDは消してあるけど、ここのIDをメモってもらう必要がある。やや面倒そうだったので、ここは正式商用化の際には効率化して欲しい

 このデジタル版の「みさきまぐろきっぷ」、実証実験だけに利用者が極端に少ないらしく、店員さんが不慣れであるケースが多い。ちゃんとIDのメモが取ってもらえたか、確認しておこう。

 また、「まんぷく券」も「おもひで券」も対応店舗や商品が限定されているので、あらかじめどこの何に使うかを決めておいたほうが良い。売り切れや入場制限などもあるので注意が必要だ。筆者は油壺温泉に行こうとしたら、夕刻は宿泊者優先で日帰り入浴が制限されていてダメだった。下調べホント大事。

名物のひとつ、「とろまん」。豚肉ではなくマグロ肉の肉まん。「おもひで券」で冷凍5個入りをもらうこともできるけど、やっぱ現地で食べたいよね

 駅や各店頭には「みさきまぐろきっぷ」アプリが読み取るためのICタグが設置されている。Suicaのような簡単さはないが、スピード処理も不要な観光向けのチケットなので、とくに気にはならない。各店舗はICタグを設置するだけで済むので、初期コストを安く済んでいそうだ。

 このデジタル版の「みさきまぐろきっぷ」は実証実験なので、実際に商用化されるかは決まっていないし、商用化するにはまだブラッシュアップが必要な面もあるな、と感じた。また、利用するには1人に1台のiPhoneが必要なので、家族づれや友人グループなどでは利用しにくいのも弱点だ。

城ヶ島を散策してたらApple Watch Nikeスポーツバンド焼けした。日焼け止めを塗っていたけど、汗で流されてしまった模様。もちろんマスク焼けもしている

 しかし、今回実際に使ってみたところ、非常に便利に感じた。スマホはいつでもすぐに取り出せるので、紙のチケットを財布内などに入れて持ち運ぶよりずっと便利だった。また、アプリ上のルート検索やスポット検索も使いやすかった。

 商用化は未定だが、商用化されたらデジタル版はおすすめだ。また、まだ実証実験期間中ではあるので、夏休み前にiPhoneユーザーだけで三崎観光をするならば、このデジタル版を試してみてはいかがだろうか。