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ソフトバンクの2019年度決算は全事業で増収増益、質疑で端末販売の動向やPHSの延長にもコメント
2020年5月11日 21:31
ソフトバンクは、5月11日、2019年度の決算説明会をオンラインで実施。売上高はZホールディングスを連結子会社化した前年同期比4%増の4兆8612億円、営業利益は前年同期比11%増の9117億円の増収増益となった。
通信サービスはマルチブランド戦略の推進
コンシューマ事業の内訳は、物販等が前年同期比8%減の6361億円、ブロードバンドが6%増の3838億円、モバイルが2%増の1兆6768億円となり、通信サービスは前年比4%増となった。
同社では、ソフトバンク・ワイモバイル・ラインモバイルの3つのモバイル通信ブランドを持っており、それぞれのユーザーに合わせた施策を実施してきた。
スマートフォンの累計契約数は、前年同期比9%増の2413万件、全ブランドで純増した。解約率は、0.70%と前年同期の0.83%に比べて減少しており、過去最低の数値となっている。
ソフトバンクは、スマホ初心者・大容量プランと5G
ソフトバンクは、2019年度、料金プランの改定をおこなった。
まず、19年6月から開始したスマホデビュープランは、5分以内の国内通話無料と1GBのデータ容量のセットで基本料が12カ月間980円。初心者でも使いやすいシンプルスマホや、全国のソフトバンクショップに配置しているスマホアドバイザーによる充実のサポートを展開している。
大容量を使用するユーザーに向けては、20年3月からメリハリプランを展開。対象の動画・SNSが使い放題と、50GBのデータ容量をセットにしたプランを用意した。加入ユーザーの91%が、同プランに満足している。
ワイモバイルは、料金プランをシンプル化 デュアルショップを拡大
ワイモバイルは、端末分離の料金プランを19年10月からスタート。違約金なしでデータ容量が3GB・9GB・14GBの、3つから選ぶシンプルなプランで展開。加入ユーザーの94%が、同プランに満足しているという。
また、1つの店舗でソフトバンク・ワイモバイルの両方のブランドを取り扱うデュアルショップを、全国約1800店舗を展開。
ラインモバイルは、SNS中心のユーザーに好評
ラインモバイルは、ラインなどのSNS利用が中心のユーザー向けの料金プランを展開、料金満足度は93%にのぼる。また、累計回線数は、ソフトバンクグループ入りした2018年以降で2倍以上に成長している。
5Gの展開
5Gの基地局には全国23万箇所の既存基地局の活用や、Massive MINOのノウハウ、KDDIとの合弁会社による地方での基地局資産のシェアリングで、地方展開もスピーディにすすめるとした。2021年度中に5G単独のスタンドアローン開始、2021年度末に人口カバー率90%超の展開を計画している。
その他事業
ヤフー事業の売上高は、前年比前年同期比10%増の1兆529億円だった。ソフトバンクとヤフーとの連携で、広告出稿額増大や新規顧客の獲得などで約44億円の連携効果があったという。
その他、決済代行事業のSBペイメントサービスの営業利益が前年同期比60%増の69億円となった。決済取扱高が約3.5兆円にのぼり、今後も成長が期待される分野であるとした。
PayPayなどの新規事業は、戦略の見直しも
PayPayは、引き続き高い成長率を維持しており、4月末時点で登録ユーザー数が2800万人を突破。決済回数も1年間で17倍となり、加盟店も全国でおよそ215万箇所に拡大した。今後はローンや後払いサービス、保険、投資などの金融サービスの強化を行っていく。
タクシー配車プラットフォームのDiDiは、25の都道府県で展開。1年間で契約タクシー会社数が11倍の563社に、配車回数は8倍に成長している。新型コロナウイルスに関して、タクシー会社への影響が懸念されるが、タクシー業界平均で27%減に対し、DiDi経由の売上は6%減にとどまっていることから、流し営業の減少分をDiDiからの配車対応でカバーしているとしている。新型コロナ対策として、アプリ内でのキャッシュレス決済の推奨や新型コロナ対策に関する案内を表示し、安全な移動をサポートする。
シェアオフィス事業のWeWorkは1年間でメンバー数が1.8倍になり、今後も稼働率の高い東京エリアで拠点を展開、2020年度中に単月黒字化を目指す。
ホテルサービスを展開するOYO Hotelsはブランドの確立に向け、成長戦略を再構築する。新型コロナウイルスの影響は、ホテル業界全体に比べて稼働率はある程度維持できているとした。新型コロナについては、ホテルオーナーへの支援や医療従事者への支援などでサポートしていくとしている。
2020年度の連結業績は4兆9000億円の増収予想
新型コロナウイルスの影響を受ける2020年度も、増益増配を行うとした。売上高は、1%増の4兆9000億円、営業利益は1%増の9200億円、純利益は、3%増の4850億円を予想する。
通信分野では、スマホ契約数の拡大や5Gの展開など、ヤフー事業ではeコマースや金融事業の拡大、LINEとの経営統合などを成長戦略とする。また、PayPayやタクシー配車サービスのDiDiなど拡大事業の利益化を推進するとした。
新型コロナの影響については、通信事業への影響は軽微としている。ヤフー事業では、eコマースは好調としながらも、広告出稿は減少しており先行きは不透明とした。
質疑応答
会見中の質疑応答の一部を掲載する。
登壇者
- 宮内 謙 氏
- 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO
- 宮川 潤一氏
- 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO
- 榛葉 淳氏
- 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO
- 藤原 和彦氏
- 取締役 専務執行役員 兼 CFO
――19年10月に電気通信事業法は改正されたが、影響は。
宮内氏
端末の営業は落ちている。10月に消費税の増税も重なることを考慮し、8月~9月に販売奨励金を増やしたため端末販売数がかなり増えた。また、改正直前でも売り込みをかけたため、そこまで大きく落ち込んではいない。
――PHSの終了期間が延長したが、終了後の巻取りと周波数の使いみちの予定は。
宮内氏
本来は、計画通りの終了を予定していたが、多数の医療機関から延長の申し出を受けていた。新型コロナウイルス感染症で医療機関の移行がそれどころではなくなったため、延長する形になった。
宮川氏
PHS終了後の周波数について、共有バンドについてはsXGP帯域の拡張や4G周波数としての活用が期待されている。
専用バンドについては、4Gもしくは5Gバンドへの転用になるかは現時点ではわからない。
同周波数帯はエレベーターや自動車などにも使用されているため、周波数の巻取りには時間がかかりそう。
――19年度のZOZOの子会社化やLINEの経営統合などが控えているが、肝心の通信事業が骨抜きになっていることはないか。配当を下げて通信事業に投資する形にはしないのか。
宮内氏
配当方針は変更の予定はない。成長と増配は両立させていく覚悟をもっている。今後、ZホールディングスやDiDiなどのビジネスについては、今後大規模な投資はしない。
藤原氏
成長投資を積極的に行っている。ワイジェイカードの子会社化などの成果は、これから出てくると予想している。
――5Gの契約数の現状について。
宮内氏
5Gの契約数については、想定した以上のユーザーの関心があると思う。5G LABのコンテンツの拡充もあるため、想定どおりの契約数である。
榛葉氏
実際の契約数は差し控えるが、想定内のスタートである。エリアも現時点で限定されているため、21年度までに目標を達成していきたい。
5G LABについては、多くのユーザーの申し込みがあり、期待をもらっている。ただ、新型コロナウイルス感染症の影響で、新しいコンテンツの撮影ができていないため、新型コロナが収束すればコンテンツを一気に増やしていきたい。
――新型コロナのショップや5G基地局設置への影響は。
宮内氏
緊急事態宣言を受けて、ユーザーには端末の故障など緊急以外でのショップへの来訪は控えるように案内している。また、営業時間の短縮で働くスタッフを少なくしている。来店者数が減少し、新規獲得数が少ないが解約数も減少傾向になっている。
なにより、ショップスタッフの命を守ることを優先しているため、経済活動がもとに戻ったときに、どう取り返していくかを注力している。
宮川氏
5G基地局設置への影響について、建物オーナーの許諾が得られにくかったり、予定の10~20%程度は影響が出ている。しかし、届けている計画の1.5倍のスピードで進めているため、今年度末には1万局設置のペースで順調に進めていく。
――9200億円の営業利益予想について、新型コロナ関連についてどれくらいの余裕を含んだものなのか。
宮内氏
現時点で、新型コロナ終息の見通しは立っておらず、様々な要因を検討した数字である。人と人との接触を減らす期間が半年程度続く可能性もあれば、一旦終息後に第2第3の波が来る可能性もあるため、現時点ではきびしい予想の数字を出している。
――新型コロナに関連してトラフィック量の推移と料金プランへの影響は。
宮川氏
固定回線は新型コロナ前のおよそ倍、モバイル回線も数十%の割合で増えている。アップリンクが、50%以上伸びており、トラフィックのピークタイムも昼間に移動してきている。新型コロナの事象については、中国・ヨーロッパなど世界のキャリアとデータを共有し、現在多くの問題に対応ができている。
料金プランについては、大容量プランを積極的に進めていきたい。全国の大学では、ほとんどオンライン授業が行われており、月少なくとも30GB必要ではないか。また、スマートフォンやPCでオンラインで話し合う機会がこれを機にますます増えてくるだろう。料金プランについては、大容量に収束していくだろう。
――5Gの基地局について、既存の23万の基地局をどの程度活用するのか
宮川氏
既存の基地局をはるかに上回る数の基地局の設置を計画しているため、ある程度は活用する予定。
――新型コロナの影響で5G基地局の機器調達への影響は。
宮川氏
細かい部品も含め、予定通りの納入を受けている。今年は大丈夫ではないかと思うが、新型コロナの収束が見えないため、今後の影響の見通しは立っていない。
――新型コロナ終息後について、ショップの来店数は戻ってくるか、今後の見通しについて。
宮内氏
代理店は厳しい環境下にある。オンラインでの販売も増加傾向にあるが、現状スマートフォンを自身でマスターしているユーザーはまだまだ少ないと見ている。スマホアドバイザーを全国のショップに配置するなど、年配の層にも、スマートフォンの使用方法を教えるというショップの役割を大切にしていきたい。新型コロナを機に代理店との結束を強め、新型コロナ終息後には頑張っていただけるだろうと思う。
榛葉氏
新型コロナを機に、オンライン経由など、様々なサポートの方法を模索している。ショップでのサポートとのハイブリットな形でのサポートを目指している。