ニュース

KDDI、沖縄でLTE-Mを活用したIoTごみ箱の実証実験

那覇市内に設置された「IoTごみ箱」

 KDDIと沖縄セルラーは9月2日~8日にかけて、那覇市内にLTE-Mを活用したIoTごみ箱を設置する実証実験を行っている。

 IoTごみ箱は、観光客が多く訪れる国際通り商店街に4つ設置され、IoT向けの通信技術LPWA(Low Power Wide Area)の一種であるLTE-Mを活用。今回の実証実験では、屋内浸透性や干渉具合の確認などを目的に700MHz帯が使われている。

 ごみ箱の上部には、ごみの量を高さで計測するための音波センサーと、寒暖差による距離測定の誤差を補正するための温度センサーが設置され、それらのセンサーから得られたデータをRaspberry Piにより処理し、LTE-M対応の通信モジュールでサーバーに送信する。

 送信されたデータは、すでに商用化されているソリューション「KDDI IoTクラウド Standard」上で可視化され、PCのブラウザやタブレット上で確認できるようになっている。閾値(今回は80%)を超えると管理者にメールでアラートが届き、回収員に電話で指示を出す。

ごみ箱の上部にはRaspberry PiとLTE-M対応の通信モジュールを使った簡易的なシステムが搭載されている
さまざまなデザインのIoTごみ箱が国際通りに設置されていた
今回の実証実験では、障がい者の働きの場となっているIT作業所SunBridgeが監視センターの役割を担っている
4つのIoTごみ箱の状況をモニタリング
高さで測定しているため、傘のように長いものを投入されると空のごみ箱が突然満杯になったように見える場合があり、履歴も見ながら回収が必要かどうかを人間が判断している
回収員の位置情報もLTE-Mの通信ユニットでモニタリングしている

LPWAで地域の課題を解決

(左から)沖縄セルラー 執行役員 ビジネス開発部 部長の國吉博樹氏、KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟氏、同 技術企画本部 技術企画部 グループリーダーの松ヶ谷篤史氏

 中国や台湾といった周辺のアジア諸国からの観光客が増える中、国際通り商店街では、路上にごみが放置されるといった問題が発生している。沖縄セルラー 執行役員 ビジネス開発部 部長の國吉博樹氏によれば、今回の取り組みは、IoTをこうした地元の課題解決に役立てようという狙いがあるという。同氏は、9月1日に設立された沖縄セルラー アグリ&マルシェの社長でもあり、農業や観光とIoTを掛け合わせて、新たな事業領域に取り組んでいくとしている。

 KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟氏は、電池持ちがよく、エリアが広く、コストも抑えられるLPWAにより、こうした課題を解決できる可能性があると語る。

実際に国際通りを歩いてみたところ、植え込みにペットボトルが捨てられていた

 通常のLTEでは、音声通話の着信などに備えるため、1.28秒周期で通信しようとするが、LPWAではこの周期を最大で13日(LTE Cat-M、NB-IoTの場合)まで延長できる省電力モード(PSM:Power Save Mode)があるため、省電力化が可能。

 また、基地局のカバレッジエリアのエッジ部分においては、同じデータを複数回送信し、取りこぼしがあっても合成することで正しくデータの受け渡しが行えるカバレッジ拡張(Coverage Enhancement)により、通常のLTEよりもカバレッジエリアを広くできるという面もある。

 KDDIでは、福島市においてもLTE-Mの実証実験を行っているが、同社 技術企画本部 技術企画部 グループリーダーの松ヶ谷篤史氏によれば、屋外・屋内のそれぞれにおいてエリア拡大の効果が確認できたという。

IoTでも“えらべる自由”

 今回の実証実験に協力した店舗側の反応は概ね良好だが、実用化にあたってはコスト負担という課題も残る。設備投資や通信のコストは抑えられるが、実際にごみを回収・分別・処分するというコストもかかるため、それらを誰がどのように負担するのかといった仕掛けづくりが必要となる。自治体を巻き込んだり、広告モデルを導入したり、さまざまなアイデアが検討されている。

 また、今回構築されたシステムの応用範囲は広く、同じように屋外に設置されている郵便ポストや、オフィスビル内のごみ収集などでも、効率化やコスト削減が期待できる。KDDIでは、LTE-MとNB-IoTを使ったソリューションの商用化を2017年度中に行うとしており、クラウドソリューションと組み合わせて、選べる形でさまざまなサービスを提供したいとしている。