ケータイ用語の基礎知識

第743回:LTE カテゴリー0 とは

 「LTE カテゴリー0」は、通信規格のひとつで、特にM2Mと呼ばれる機器間通信や、IoT機器のための規格です。LTE-Advancedの機能拡張・高性能化といった方式も定められた3GPPの標準規格「Release 12」で定められました。正式にはLTEの端末側の規格で「LTE User Equipment(UE)Category 0」と呼ばれます。

 主な用途として、自動販売機の監視など、これまでPHSやW-CDMAなどが採用されていたものや、今後普及するであろう、電気や水道の「スマートメーター」などが想定されています。こうした機器による通信は、3GPPで「MTC」(Machine-Type Communications)と呼ばれています。

超々省電力

 機器による通信の場合、課題のひとつは電源です。たとえば自販機はきちんと電源を確保していますが、スマートメーターのような機器の場合、ボタン電池などを使いつつ、数年間は電池を交換せずに使いたいといった要望があります。携帯電話のようなモバイル機器と比べても、桁の違う低消費電力性能が求められるわけです。

 モバイル通信は、高速化・大容量化の道をたどってきましたが、IoT機器の場合、一度に通信するデータ量は携帯電話やスマートフォンのように多くなく、それほど高速な通信は必要ではないという指摘はかねてよりありました。そして、最新のLTEで用いられている技術は、たとえば複数のアンテナを用いるものなどは高コストになりがちです。

 IoTやM2Mといった機器は、高速な通信は不要で、低消費電力かつ低コストといった条件が求められます。かといって、枯れた旧世代の通信技術を利用し続けられるか、というと、そうもいきません。電波は有限で、年々、もっと有効に活用することが求められます。特にIoT/M2M機器はこれから爆発的に増える可能性があります。

 そこで、電波を有効に活用できるLTEと共通の基盤にしつつ、IoT/M2M向けの規格が必要になり、用意されたのが「LTE カテゴリー0」なのです。

最大通信速度は1Mbps

 カテゴリー0では、これまでのLTEと異なり、一本のアンテナでの電波受信が可能となりました。通信速度は、最大で上り/下りとも1Mbpsと大幅に抑えています。携帯電話と異なり、上り下りの通信を同時に行う必要がない用途も多いため、どちらか一方通行の通信しかできない「半2重通信方式」も利用できます。

 スマートメーターのように「基本的に基地局からの着信が必要ない」「端末が移動して基地局のサービスエリア(セル範囲)をまたがない」といった用途にあわせ、基地局と端末間の定期的な通信を大幅に省略するモードも追加されています。これにより電力消費も大幅に減らすことができるため、このモードのことは「パワーセービングモード」と呼ばれます。また、利用する周波数帯の幅は、1.4MHz幅~20MHz幅で調整できます。

 なお、IoT/MTC機器向けの通信規格としては、今後仕様が定められる「Release 13」で、さらに進化した“高度化MTC”も盛り込まれる予定です。遅延の許容、カバレッジの強化、さらなる通信の簡略化による低電力化・コスト削減などが規格化される予定です。また、これまでLTE規格にはなかった「200KHz」という狭い帯域での通信も考えられています。通信機器メーカーなどでは、この次世代のMTC向け通信規格をまとめて「LTE-M」「NB(Narrow Band) LTE-M」などと呼んでいる会社もあるようです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)