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IoT向け通信技術「LTE Cat-M1」の特徴は? KDDIとアルテアがテスト

 KDDIは、イスラエルに拠点を置くAltair Semiconductor(アルテア)とともに、IoT向け通信技術、Low Power Wide Area(LPWA) 技術のひとつ、「LTE Cat-M1」のテストを実施した。実際の基地局ではなく、テスト装置を使ったものだが、LTE Cat-M1の省電力性能などが確認できた。

 これまで自動販売機や車載装置などを使った機器間通信(M2M)の場合、電源を確保しやすい場所に設置して利用されることが多かった。一方、ありとあらゆるものがネットに繋がる……とされるIoT(モノのインターネット)では、電源の確保が難しい。さらに数が増えればコストも大きな課題となってくる。

 IoTでは、携帯電話のネットワークを利用する通信技術と、免許の要らない電波(アンライセンスバンド)を利用する通信技術の採用が有望視されているが、いずれも規格としては、策定中、あるいは策定されて間もないなど商用サービスとして利用するにはまだまだこれからの段階。KDDIでは、携帯電話のネットワークを利用するLTE カテゴリー1、それをベースにしたLTEカテゴリーM1(LTE Cat-M1)、NB-IoTなど、採用する技術はまだ未定ながら、2017年度には何らかの商用サービスの提供を目指しており、今回はLTE Cat-M1についてアルテアとともにテストを行ったことになる。

スリープ時間を長く

 テストで評価された技術はいずれも3GPPで標準化されたものだが、KDDIでは、他の企業よりもアルテア社の技術は消費電力の面で大きなアドバンテージがあると評価しているようだ。

通常の通信における消費電力

 技術の1つは「eDRX(Extended Discontinuous Reception)」。これは、待受時において、基地局とやり取りする端末側の通信のタイミングを従来よりも大幅に長くするもの。一般的な携帯電話では、1.28秒周期でやり取りするところ、eDRXでは最大174分に一度の周期にする。何も通信しない“スリープ”の時間が長いほど、電力を使わないことになる。

こちらはeDRX

 さらに通信頻度が少なくて済むケースに対して最大13日間、何も通信しないという「PSM(Power Saving Mode)」もある。着信を受け付けず、たとえば端末側がセンサーで何かを検知してデータを送る必要があれば、そのときようやく通信するという形。デバイスそのもの死活管理のため、少なくとも13日に一度は通信するようにしている。

PSM

 より広い通信エリアを実現する技術として期待されるのが「CE(Coverage Enhancement)」だ。これは弱電界の通信でデータが壊れていても、最大2048回まで、データの再送を試みて、元々のデータを最終的に復元するという考え方の技術。つまり、基地局が遠くて電波が弱くなり、データを完璧に受け取れなくとも、何度も同じデータの送受信をすることで補完していくことになる。数多く通信するとその分、電力を消費することになるが、それでも通信する頻度がもともと数少ないのがIoT機器。スリープ時間を長くして通信エリアの広さに繋がる技術は採用に値する、という考え方だそう。

CE

 常時接続ではなく、通信頻度を限られた形にすることで、通信に必要な部品や回路設計も簡便なものにできる。これは低コスト化に繋がる。あわせて部品の小型化や、積層技術が進むことで、通信モジュールが以前よりも83%、省スペースになった。

 こうした技術は「LTEカテゴリーM1」に採用され、いずれはさまざまな企業が実現してくる見込みだが、アルテアは低消費電力化を追求しており、他社に先駆けて実装した形。その技術は簡単に言えば、パソコンで言う「ハイバネーション」とのこと。ただ、通信関連の機能をどこまでスリープさせるのか、スリープさせればさせるほど、再び起動させるのは難しいとのことで、そのチューニングが同社のノウハウであり、その結果、スリープ時の消費電力が平均10μAになった。

 このほかKDDI独自のユニークな取り組みなのは、既存の通信モジュールに対して、今日からでも導入できるという「RTC(RealTime Clock)アラーム」というもの。通信しないときには、通信モジュールには給電を止める、というコマンドを送れば、すぐにそうしたモードに切り替わる。4年ほど前から既に実装済だったとのことで、これまでは使い道のないコマンドだと思われていたが、IoT時代と言われるようになって「使えるのでは?」と思い直し、通信モジュールを導入する企業でも利用できるようにした。