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沖縄セルラーの野菜工場に潜入、家庭用栽培キットはまもなく出荷
2017年3月10日 18:28
通信事業者の野菜工場内部に潜入
同社の野菜工場は、沖縄県南城市にあるネットワークセンターの敷地内に2棟設置されている。最初に竣工した第1工場は25坪のプレハブで、照明に蛍光灯を使用してレタスを日産288株のペースで生産している。その隣に増設された第2工場は50坪の鉄骨建屋で、LEDを使用し、日産600株を生産している。第2工場は広さが2倍になっているが、照明を蛍光灯からLEDに切り替えることで、電気代を第1工場と同等レベルに抑えているという。
第2工場の中に入ると、12メートル×6段×3列の棚が並ぶ。それぞれの棚の上部にはLED照明が取り付けられ、野菜の発育と電力消費の両面で照射時間を最適化している。よく見ると、育苗ゾーンだけ異なる色のLEDが使用されており、こうした面の最適化も行われている。
レタスが植えられたトレイは移動させられるようになっており、工場の奥から手前に移動させていくことで、入口付近で収穫・出荷できるようにレイアウトも工夫されている。数名のパート従業員が手際よく収穫・出荷の作業を行っていた。
工場内を案内してくれたビジネス開発部 開発グループ 植物工場プロジェクトリーダー 課長の加賀武史氏によれば、水耕栽培を行う上で重要となるpH(pounds Hydrogenii)とEC(Electrical Conductivity)や室温、二酸化炭素濃度などをセンサーによってモニタリングし、最適な状態を維持。各センサーは有線で遠隔監視システムに繋がり、常にスマートフォン上で状況を把握できる。異常があればアラームで通知し、緊急時の対応を行う。
同工場では、あわせて電力監視も行っており、省エネ対策や、工場の新設に備え、規模によってどれくらいの電力が必要になるかといったノウハウの蓄積に役立てているという。
通常、こうした監視システムは、数百万円~数千万円かかるところ、市販の通信機器や同社が持つ試験設備のノウハウなどを活かすことで100万円程度で構築できるようになった(加賀氏)。
ハンバーガーショップのオペレーションコスト削減に貢献
こうして生産されたレタスは、地元のハンバーガーショップチェーン「A&W」に納品され、ハンバーガーやサラダの形で提供。A&Wによれば、沖縄セルラーのレタスの消費量は全体の1割にも満たないが、「ペッパーポークとマリネのサンド」といった期間限定メニューや、「The A&Wバーガー」といったこだわりのオリジナル商品のように高品質をウリにする商品で採用されている。
通常のレタスと比べると割高なのは確かだが、レタス独特のえぐみが少なく、台風で海が荒れると野菜が届かなくなるという沖縄ならではの事情もあり、年間を通して安定して供給されることは、飲食店側としても採用するメリットがあるのだという。品質に差が無く、長持ちするため、店頭で行っていた痛みによる変色した部分を取り除くといった作業の負担も軽減できている(A&Wマリンタウンあがり浜店 店長の崎濱秀太氏)。
なお、沖縄セルラーの野菜は、A&W以外では地元で小売事業を展開するリウボウにも納入されており、同社系列のスーパーでも購入可能となっている。
IoT水耕栽培キット「やさい物語」、まもなく出荷
こうしたBtoBtoCの取り組みで培ったノウハウを個人向けにも提供しようというのが「やさい物語」という水耕栽培キットだ。レタスやハーブなどの野菜をリビングやキッチンカウンターで育てられるというもので、種まきから1カ月程度で食べられる大きさになる。
内蔵のセンサーで温度や水量をモニタリングし、必要に応じてユーザーのスマートフォンにアラートを出してくれるため、失敗も少なく、野菜工場で生産される野菜同様にえぐみや苦みが少ない無農薬野菜を手軽に育てられる。内部にはカメラも搭載されており、発育の様子をリモートでチェックすることも可能。
当初の計画では2月下旬に発売される予定だったが、若干出荷が遅れ、現時点では「3月下旬以降のお届け」とされている。価格は3万4800円だが、初回5000台限定で2万9800円で予約を受け付けている(価格はいずれも税抜、送料無料)。