インタビュー
スマホと無線接続するグラス型ARデバイス、NTTコノキューの丸山社長がアピールする特徴は
2024年2月28日 13:20
NTTドコモの100%子会社で、XRを事業化しているNTTコノキューは、MWC Barcelona 2024でグラス型のARデバイスを発表した。同モデルはコンセプトという位置づけ。後日製品化される製品とは仕様が異なる可能性があるというが、スペックの一部も公開されている。
チップセットには「Snapdragon AR2」を採用。前面にはカメラを搭載しており、コンパクトで軽量な端末に仕上げられている。また、スマホとは無線で接続する仕様だ。
製造は、コノキューとシャープが合弁で設立した、NTTコノキューデバイスが行う。では、この端末はどのような目的で投入するのか。NTTコノキューの代表取締役社長を務める、丸山誠治氏に話を聞いた。
――MWCでは、ついに自社デバイスを発表されました。まずは、その特徴を教えてください。
丸山氏
一言で言えばARグラスです。チップには、クアルコムのSnapdragon AR2というハイエンド向けのものを使っています。
軽量な端末で、基本的にはグラスとスマホが協調して処理をする仕組みです。これによって商品電力を抑えることができ、結果として端末も軽量になります。
接続は無線です。ほかにも、カメラや6DOFのセンサーなどがついていて、色々な使い方ができることを想定しています。
――コノキューとして端末を開発するのは、どのような狙いなのでしょうか。
丸山氏
端末をやりたいという意思は当初からあり、そのためにシャープとジョイントベンチャーも作りました。このジャンルの端末は、あまり世の中にないからです。
我々もほとんどの端末をリセールしています。Metaのものも、グーグルのものも、マイクロソフトのものも、Magic Leapのものも扱いました。これらをサードパーティのソフトウェアとセットにして販売するというのは、メインのビジネスの1つです。
ただ、ちょうどARのハイエンドなグラスとなると、「これ」というようなものがありませんでした。
――どういった用途を想定しているのでしょうか。
丸山氏
基本的には、着けたまま生活しても問題がない。そういうレベルのものです。いつでもどこでも気軽に使える。
アップルのApple Vision Proがパソコンなら、コノキューの端末はスマホ的な感覚の端末だと思っています。私自身、家の中でソファに座って映画を見るならアップルの端末を選ぶかもしれない。
逆に、コノキューの端末にふさわしい使い方には、ナビゲーションや文字起こし、翻訳があったり、リモートの会議が便利になったりといったことがあります。
これがあれば、パソコンやタブレットがなくても、新幹線でリモート会議ができてしまう。画角が広いので、リアルな会議でも使えます。みんなが着けていれば3D画像を出し、「新製品はこれです」といったようなプレゼンもできます。
――現状、コノキューはB2Bのビジネスが多いといいますが、このデバイスはコンシューマーにも販売していくのでしょうか。
丸山氏
コンシューマーにも売りますし、産業用としても売ります。今のXR市場は産業向けが大きいので、まずはそちらですが、この記事を熱心読まれるガジェットが好きな方も(ターゲットとして)いると思います。
クアルコムは「プロシューマ―」という言い方をしていますが、そういうところなのかもしれません。
――MWCに出したものはコンセプトでしたが、商用化は近いのでしょうか。
丸山氏
商品を発表したつもりではありません。何が目的かというと、ソフトウェアデベロッパーに認知してもらうために出しています。
例えとして出すのは僭越ですが、アップルが開発者向けに発表しているようなイメージです。基本的に展示したものは商用モデルのベースにはなっていきますが、その前に、ある程度ソフトウェアがそろっていることが重要です。展示は、そのためのステップだと思っています。
――ソフトウェアのプラットフォームは何を使っているのでしょうか。
丸山氏
クアルコムの「Snapdragon Spaces」で、基本的にはスマホのアプリケーションが動きます。
――最終的に販売するとなったときには、やはりドコモが扱うのでしょうか。
丸山氏
まだ何も決まっていません。ただ、親会社ですから売らないことはないと思いますが(笑)。ビジネス向けはNTTグループが強力な販売チャネルを持っています。今はどういう形がいいのかを検討しているところです。
――コンシューマー向けのXRデバイスというと、まだまだ誰もが使うデバイスにはなっていません。この点をどうお考えですか。
丸山氏
どこでも手軽に使えるようなものが出て、ある一線を越えればバッと広がるタイプのデバイスだと思っています。何とかその域に達することはできないかと、開発にはハッパをかけています。
――今のコンシューマー市場をどう見ていますか。
丸山氏
XRは三次元のデータを扱いますが、その状態で2000×2000ドットのデータをやっと扱えるようになったところです。奥行きが加わると、情報量が2ケタ上がってしまう。
今のスマホやパソコンはもちろん、我々の通信回線でもなかなか処理ができません。物理的なコンポーネントとしての能力が不足している中、それを何とかごまかしながら立体的にしている。
実際にそういった処理が進んでいるのがゲームの分野で、UnityやUnreal Engineはデータを圧縮しながら見せています。みんなゲームの技術を使っているので、ゲームの会社(4月に完全子会社化するジーン)も買収しました。
ただし、それは入り口の話で、将来的にはそういったデータも快適に扱えるようになるでしょう。ただ、それが実際に来てからでは遅いので、早くから仕込んでやっているというのがコノキューを設立した趣旨です。
他社がやっていなければいいのですが、巨額の投資をしている会社はアメリカにも中国にもあります。そういった意味では、いいタイミングだったのではないでしょうか。
――ちなみに、先ほど色々なデバイスを扱っているという話がありましたが、Apple Vision Proもラインアップに加わったりするのでしょうか。
丸山氏
まだ何も交渉しているわけではないのでコメントはできませんが、他社の製品も販売しているので、候補にはなると思います。