【MWC Barcelona 2025 】
ドコモ子会社のコノキューが新開発するARグラス、開発の狙いを聞く
2025年3月6日 05:30
NTTドコモ傘下のNTTコノキュー、NTTコノキューデバイスは、「MWC Barcelona 2025」で、スマートフォンと連携し、通知などの情報を表示するメガネ型デバイスを発表した。
既報のように、MWCのドコモブースでは、このデバイスのモックアップ(模型)が展示されている。
一見すると、やや大ぶりな普通のメガネといったサイズ感ながら、片眼にはディスプレイを搭載しており、スマホで受信した通知やナビゲーションの情報を表示できるという。このデバイスを開発した狙いを、NTTコノキューの代表取締役社長、丸山誠治氏がグループインタビューで語った。
――まず、これがどのようなデバイスなのかを教えてください。
丸山氏
MiRZAに続く2号機として発表しました。2号機は軽量で、今までのものよりも普段使いしていただけるような端末です。軽量という意味では、60gぐらいを目標にしています。MiRZAが120gなので、約半分ですね。
価格は500ドルぐらいを目標に開発を進めています。昨年もMWCでMiRZAをコマーシャルプロトタイプとして出したので、今回もそのぐらいの時期(の製品投入)を目指しています。
大きな違いとしてあるのが、1号機は産業用で法人向けを念頭に置いていましたが、2号機は完全にマス向けのものです。ディスプレイは片側だけですが、カラーのものが入っています。
ここに情報を表示する。スマホだと手元を見なければなりませんが、メガネの延長線に通知やナビゲーションが表示されます。ちょっと知りたいことを親切に教えてくれる、自然に情報が目に入るのが一番の特徴です。
――常時かけることを想定しているのでしょうか。
丸山氏
そのつもりでいます。スマホ以外で持ち歩いているガジェットと言えば、時計とメガネが2大商品です。時計はアップルさんが相当熱心にやられて、今では多くの人が持っています。同じように、メガネにも可能性はあると思っています。
――常時使用とするとバッテリーの持ちが気になります。
丸山氏
普段使いすれば、活動している時間ぐらいは持つようなことを想定しています。スマホが出始めのころは、すぐにバッテリーがなくなってしまった。ブレイクスルーしたのは、1日の活動を終えるぐらいまで使えるようになってからです。その一線は超えなければいけない。そういうところには、こだわりを持って作っています。
――XREALのようなディスプレイ用途は考えていないのでしょうか。
丸山氏
XREALを普段使いされるかどうかですね。こちらは、無線接続にもこだわっています。これだけの大きさで電池を1日持たせるにはどうしたらいいか。そういう中で最小限のものを盛り込んだのが今回の端末です。
今回は、無線インターフェイスにBluetoothを使っています。これが省電力化をする際のポイントで、1号機はWi-Fiが(消費電力の)結構な割合を占めていました。動画や画像を送ろうとすると、どうしても電力を食ってしまう。普段使いのメガネとしては、今回の構成が最適だと考えました。
――普段使いとなると、デザインも重要です。形状や色のバリエーションはありますか。
丸山氏
もちろん、数が出るようにしたいですし、自分たちで設計しているので、その辺のことはいくらでもできます。色を変えるようなことは手っ取り早くできます。ただ、1号機はオーソドックスなウェリントン型になります。そういうもので、まずは数を出していきたいと考えています。
――Metaの「Ray-Ban Meta」のようなカメラはないのでしょうか。
丸山氏
今回は大胆に割り切りました。先ほどから申し上げているように、普段から使えることがポイントです。カメラを入れると、どうしても上りの動画転送にWi-Fiが必須になってしまいます。そこよりは、消費電力を重視しました。
――操作はどのようにするのでしょうか。
丸山氏
基本はスマホでやります。いくつかのボタンはつくので簡単なことならメガネでもできますが、スマホに接続するデバイスというのが強みです。
1号機もそうでしたし、VRのヘッドセット全般にそうですが、最初の立ち上げがすごく大変というのがあります。アカウントやクレジットカードを入れなければいけないですから。今はスマホ側で入力するのが、一番簡単です。
――AIで音声操作するということは考えていますか。
丸山氏
できれば考えていきたい。今後、AIがどう進むかにかかっています。どういうあり方がいいのかは考えていく必要があります。
――1号機は接続できるのが、一部のシャープ製スマホに偏っていました。今回はどうでしょうか。
丸山氏
Bluetoothがついている端末なら、動くようになると思います。1号機はレンダリングのような処理をスマホ側でやっていたので、チップセットとの関係で(対応端末が)決まってしまう部分がありました。特定のスマホでしか動かなかったのはある程度しょうがない部分がありましたが、2号機はそこまでの制約はありません。
――Bluetooth接続でいろいろな情報を表示することができるのでしょうか。
丸山氏
ある程度まではできます。チャレンジは必要ですが。
――アプリ側で対応が必要になるのでしょうか。
丸山氏
まずデフォルトでは当社のアプリをつけます。今あるアプリがグラス用の機能を追加したときに、そこの接続をどうするかですが、おそらく弊社がSDKを配布していくことになると思います。
――アプリ開発者側がその壁を乗り越えてまで対応するでしょうか。
丸山氏
なるべく早くSDKを配布してオープンにやっていくのがいいと思っています。2号機の場合、普通にアプリを作られているところであれば、そんなに難しいことは必要ありません。
――視力が低い人はどうすればいいのでしょうか。
丸山氏
矯正用レンズを入れられる構造を考えています。1号機だと、メガネのパリミキさんに持っていけば、どこでもレンズを作ってもらえました。普通のメガネレンズを作る感覚ではめ込み用のレンズを作っていただくことは十分可能だと思っています。
――MWCで発表したということは、海外展開も考えているのでしょうか。
丸山氏
そういう反応を見るために、あえてこの場で発表しているところがあります。実際、反響はいただけました。南米のプレスの方には、「ぜひ出してくれ」と言われましたが、お声がけがあれば考えていきます。
――ドコモのコネクションを生かして海外キャリア経由で販売するということもあるのでしょうか。
丸山氏
そういうケースもありますが、国によってはビジネスモデルが違います。日本やアメリカ、欧州は端末をキャリアがセットで売っていますが、そうではなく、キャリアはSIMだけを出し、あとは家電店で買うという国も多いですからね。そういうところでは、違うやり方を取らなければなりません。
――ナビの用途として使うのであれば、やはりグーグルマップに対応してほしいですね。
丸山氏
ハードルは高いですが、トライしていただければと思っています。グーグルに限らず、有力なアプリを作っているところとは交渉が必要です。グラスのよさをまずは信じてもらえないと、そこに至りません。MiRZAのときも、開発者パートナーを募り、SDKを配りながらやってきました。
――XR市場は今、どのような状況だとお考えですか。
丸山氏
以前とそんなに変わったわけではありませんが、少しずつ(市場規模が)上がってきている感じです。一番台数が出ているのが「Meta Quest」で、台数ベースでは圧倒的に多いですね。我々も、法人向けの取り扱いは相当やっています。ドコモは伝統的に、たくさん売るものをお客様向けにキッティングしたり、MDMを組み込んで管理するのをお手伝いしたりするのが得意です。
――とは言え、グラス型は難しそうですが、いけそうでしょうか。
丸山氏
いけると思っていますし、今は世の中的にも追い風が吹いています。
MetaのRay-Ban Metaグラスは形状が近いですが、実際、アメリカでは相当売れている。あのぐらいの数が出せるようになれば、十分採算ラインに乗ります。彼らはどちらかと言うとサングラスの世界ですが、日本人には難しいところもあるので、我々はメガネとして売り出していきたいと考えています。
――ありがとうございました。